月村手毬は我慢ができない――Luna say maybeの話をしたいだけの約8,000字
第一印象は、「おもしれー女」だった。
歌唱力つよつよの将来有望なエリートアイドル候補生……かと思いきや、体重が増えたことで不調に(もちろん、根本的な原因は別にあるのだけれど)。
しかし本来のストイックな性格もあり、ひとたび反省すればその後は上り調子に。めきめきと成長していく……かと思いきや、誘惑に勝てずリバウンド。からの、この絶望顔である。かわいい。
クールキャラかと思ったら、キュート。
ストイックかと思ったら、怠け者。
完璧かと思ったら、ポンコツ。
ツンかと思ったら、デレ。
古事記にも書かれているように、古来より人類は「二面性」にある種の魅力を感じる生き物である。そう、古き良き「ツンデレ」がそうであるように。
厳密にはツンデレではないかもしれないが、彼女――月村手毬(つきむらてまり)もまた、複数の二面性をあわせ持つアイドルだ。
そもそも、公式プロフィールからして「二面性」と書かれているくらいだったので、「きっと関係性が深まることで見えてくるギャップがかわいいんだろうな~~~!!」などと想像していたら、出会いからしてこれである。なにこのかわいい生き物。もうすでに結構好きになっちゃってるんだが??
――『学園アイドルマスター』がリリースされて、はや4日。
興味本位で手を出し、ハマり、ハイクオリティの3Dライブにスマホが発熱し、ついでに自分も発熱するなか(38.5℃)、なんとかTrue Endに到達したのが今さっきのこと(5/19)。
熱に浮かされたように育成を重ね、ようやくたどり着いた、1つのエンディング。過去にも『アイマス』のシリーズ作品はたびたびプレイしていたのだけれど……白状します。
不覚にも、泣きました。
アイマスのゲーム本編で泣いたのは、多分初めて。
せっかくだから俺はこの蒼の子を選ぶぜ!
思えば最初から、『学園アイドルマスター』というタイトルはイレギュラーだった。少なくとも、自分にとっては。
なんたって、最初に育成することを決めたのが、「蒼」の月村手毬である。普段ならほぼノータイムで「黄」を選んでいるはずなのに。必ずそうすると決めているわけではないのだけれど、なぜだかいつも、自然と惹かれてしまうんですよね……。星井美希や本田未央、八宮めぐるといった面々に。
たとえるなら、ポケモンでいつも決まって炎タイプを相棒にしている人が、最新作ではホゲータではなくクワッスを選ぶくらいのイレギュラー。ある種のポリシーというか、お約束というか。ちなみに僕は、炎タイプ一択です。
――と話が逸れましたが、アイマスでは基本的に「元気! パッション! ムードメーカー!」なキャラクターに惹かれていた自分が、なぜ今回に限って、月村手毬を選んだのか。
理由はシンプル。
ずばり、「紹介PVでビビッときたから」です。
「あっ、見た目通りのクールじゃないな!?」
「内心に秘めているあれこれがめっちゃありそう」
「すっごく面倒くさい性格なのでは?(好き)」
といった第一印象で、深堀りすればするほど好きになりそうなタイプのキャラクター。もちろん、秘めている感情や抱えている問題はキャラクター各々にあれど、その「抱え方」が自分好みのにおいがプンプンする。
そして何より大きかったのが、「曲」の存在。
決して例がないわけではないと思うのだけれど、この手の感情をぶちまけるタイプの楽曲って、『アイマス』では意外と珍しいのかなと。アニメの劇中ではなく、リアルライブでもなく、リリースされる音源からして「感情的」に歌われている曲。そこにビビッときた。
そのような理由で「まずは月村手毬ちゃんをプロデュースしよーっと」と決めたので、その時点で諸々の情報はシャットアウト。すでにYouTubeで投稿されていた彼女のソロ曲もあえて聞かず、何やらおもしろそうな電ファミさんの記事も読まず、リリース日を迎えることに。
結論から言えば、「気になるけど、なんもわからん」状態で月村手毬コミュを読めたのは、個人的には大正解。その結果が冒頭にも書いたとおり、「不覚にも泣いた」というわけです。
月村手毬は、我慢ができない
冒頭でも軽く言及した、月村手毬のプロフィール。
「クールでストイック」の説明のあとに、「甘えん坊で怠け者でトラブルメーカー」なんてフレーズが続くキャラクターは、そうそういないんじゃなかろうか。一見すると矛盾しているようにも感じられるけれど……?
まず、彼女が「ストイック」であることは間違いない。レッスンにはいつだって全力で取り組んでいるようだし、朝4:00には起きてジョギングに励んでいるような描写もあった。
にもかかわらず、そんなストイックさを常日頃から発揮している彼女が、なぜ「体重が増えたことで不調になる」なんて事態に陥ってしまうのだろうか。
一連のコミュを読んで感じたのは、月村手毬は「我慢」ができない性分なのだと思う。良くも悪くも。
「リハーサルは7割の力で」と言われたのに、10割の全力をぶつけてしまったり、自分の初ソロ曲が嬉しくて、誰彼構わず聞かせようとしたり、ところ構わず歌の練習をして、寮内で幽霊騒ぎになったり。
そうやって我慢ができないからこそ、おやつも食べてしまう。だから、太る――と考えると、まったく何もおかしくはない。……おかしくはない……よね?
我慢ができない月村手毬は、「頑張る」ことを我慢したくない。自分に妥協はしたくないし、自分のせいで周囲に妥協させたくない。自分の存在のせいで、誰かに「我慢」されるのだって嫌だ。アイドルにも、生活にも、人間関係にも我慢ができない――とくれば、そりゃあ問題だって当然起こる。
ストイックだが、我慢が効かない。
ストイックなのに、甘えん坊で食いしん坊。
普通なら相反する概念のはずなのに、「月村手毬」という女の子のことを知れば知るほど、不思議とこの二面性がしっくりくる。そのことが、読んでいてすごくおもしろかった。
過去の後悔として語られる「ユニット解散」をはじめ、彼女が抱えている問題もそうだし、一方では、アイドルとしての魅力や強みもそう。良い面も悪い面も、どちらも「ストイック」で「我慢が効かない」という彼女の性質に起因するものであるように見える。
二面性にも一貫性があり、その両義性がまた年相応の女の子っぽくも感じられ、見ていてハラハラするけれど、その愚直なまでの一生懸命ぶりに、心惹かれずにはいられない。あまりにも不器用すぎる、一途なほどの頑張りすぎ屋さん。
……って、そんなん応援したくなるし好きになっちゃうに決まってるじゃないですかバカーーーーッ!!!
『学マス』はライブシーンもすごい
ところで、今回この『学園アイドルマスター』をプレイしていて特に印象的だったポイントとして、作中での「ライブ」の立ち位置とパフォーマンスがある。
『学マス』はいわゆるリズムゲームではないため、プレイ中に3Dライブを見る機会はそこまで多くはない。育成シナリオ中に行われる「試験」のあとにライブがあり、ライブの最中は画面を操作して写真撮影ができる。個人的にはこの撮影システムがめっちゃ好き――なのですが、話が逸れそうなので今回は置いといて。
この『学マス』のライブシーン。なんと恐ろしいことに、キャラクターの育成状況によって、歌とパフォーマンスが変化するのです。
まず、審査後に行われるライブとは別に、育成スタートのタイミングで挿入されるパフォーマンスが、どれも拙い。うまく歌えていなかったり、まったく踊れていなかったりしていて、人によっては目も当てられない状態だ。
メタい話で言えば、「(声優さんの)うまくパフォーマンスできていない演技」がマジですごい。と同時に、アイドルがそれぞれに抱えている問題も可視化されていて、その後のシナリオにも関わってくる重要な描写でもある。
その最初のパフォーマンスを踏まえて見ると、シナリオの最後に挿入されるライブシーンが、これまたすごい。というのも、作中の成績によって「ライブの出来」が違うのだ。
ギリギリ合格の場合は、すぐにバテてしまい、苦しそうな表情で体を動かす姿を、1位で突破した場合は、堂々とした佇まいで、汗を流しながらも、最後まで笑顔で歌って踊る姿を、それぞれ目にすることができる。
というかそもそも、「曲の後半になるほどにキャラクターが汗を流し、髪も乱れ、疲労感までもが感じられるライブシーン」をスマホアプリで描写していること自体にまずビビる。こだわりが……尋常じゃない……!
長編の3Dアニメ映画とかなら、その手の表現をするのもまだわかる。でもまさか、スマホアプリの3D表現で「不完全なライブシーン」を演出しようとする~~~!?
しかも成績によって複数パターンの表情&モーションが用意されていて、当然のように歌も別。さらに前述の「撮影」機能も考慮すると、ズーム表示された状態の3Dモデルを破綻なく動かす必要があって――とか考え始めると、マジで尋常ならざる工数がかかっているのでは……?(震え声)
“月村手毬の1stシングル”にこれ以上ふさわしい曲はない
――というわけで、月村手毬の話に戻ります。
その「ダメダメだった最初のパフォーマンス」を見てから育成をスタートし、自分の担当アイドルに最高のパフォーマンスをしてもらうために試行錯誤を続けた結果、どうなるか。
答えは、「True Endのステージでマジ泣きする」です。
リリース前にこんな動画が投稿されていたことを今さっき知ったのだけれど、もうこの動画だけで泣ける。手毬……! 全力で最後まで歌えてよかったね……手毬……!
月村手毬のソロ曲のタイトルは、「Luna say maybe」。
紹介PVのBGMとして初めて耳にするも、「これは劇中で聞いたほうが感動できそうな気がする……!」と判断し、YouTubeのMVも視界の外に追いやっていた自分。何の予備知識もなく作中でこの曲と再会できたからこそ、新鮮に、そしてダイレクトに感じられた“文脈”のようなものがあったように思う。
――まず、シナリオを読みながら思ったのですが。
これを初のソロ曲として持ってくるプロデューサーくん、ヤバくね!?
素人目にもわかる難しい歌であり、歌いこなすには歌唱力以外の要素も欠かせないだろう高難易度曲。昨今のトレンドから言えば前奏が長いものの、その後はほぼ間奏なし。音数に対して大量の言葉が歌詞として詰め込まれていて、そこに感情も込めなければならない。
スタミナ不足が弱点である手毬に持ってくる曲としては、あまりにも攻めすぎているのでは……! 作中ではもともと歌唱力が評価されていたらしいとはいえ、1stシングルにわざわざこんな曲を据えようとする判断がすごい(ヤバい)。
でも一方で、「月村手毬に可能性を見出したプロデューサー」の目線で考えると、これほどふさわしい曲はないんじゃなかろうか。これこそが月村手毬の魅力を最大限に伝える、その強みを発揮できる曲なのだと、そう思ってしまう。思わされてしまう。
何事にも全身全霊で取り組まずにはいられない彼女の性質を前提として、まだまだスタミナ不足で、感情だってコントロールできない現状も把握しつつ、それでも月村手毬なら受け止めてくれる、間違いなく歌いこなせる。そう信頼しきっているがゆえの選曲であり、この歌詞なんじゃないか――と。
改めてこちらの動画を見ても、その“成長”ぶりは一目瞭然。
「LV.1」の月村手毬は、「曲が難しくて歌えていない」というより、どちらかと言えば「全力で歌おうとして空回りしている」「感情の込め方がうまくいっていない(コントロールできていない)」ように見える。
それと、動画にはないけれど、その後の最終審査のライブシーンで堂々と歌う姿を見た時点で、もうちょっとした感動があった。
まだまだ荒削りではあるかもしれない。でも着実に前へと進んでいる「アイドル」の姿を、その成長を目の当たりにできる。そりゃあ(撮影機能で)シャッターを切る手も震えてブレるってもんですよ。……初めて娘の運動会を見に来て、ボーナスで買った一眼レフを構えつつ、「いつの間にか大きくなってたんだなあ……」と感慨にふけるお父さんかな??
とはいえ、審査後に見られるライブシーンは長くても1番まで。学園内の簡易ステージではなく、アリーナの大きな舞台に立って歌う姿を見るためには、True Endにたどり着く必要がある。何度も周回を繰り返さなければならないのだ。
――で、そのTrue Endで見たライブパフォーマンスがあまりにも素晴らしく、居ても立っても居られなくなったため、こうしてテキストエディタに向かっているわけでございます。なんか書いていたら熱も下がって元気になってきたので、もしかしたら体温を文字に変換して打ち込んでいるのかも。
“どうか、正⼼正銘のこの思いが”
「サイリウムの光で満たされたライブ会場」と言えば、もはやアイドルゲームにおいてはお約束の空間。どのような作品でも決まって登場する舞台であり、その手の「ステージ」におけるスタンダードと言っても良いかもしれない。
つまり、空間としては何の物珍しさもない……のだけれど。なんならVTuberの3Dライブでもよく見る光景だし、VRライブでは実際に自分がその空間に立つことだってある……のだけれど。『学マス』では、その「当たり前のライブ会場」で歌うアイドルの姿が、めちゃくちゃ輝いて見えた。
ずっとずっと「学園」という閉じられた空間で歌ってきたからこそ、「サイリウムの瞬くライブ会場」が際立って特別に感じられる。そこで堂々と歌うアイドルの姿がきらめいて見える。尊い光景に映る。てぇてぇ。
加えて、この「Luna say maybe」に関しては、通常のライブでは未知の領域だった、Cメロ以降の展開が激アツだった。
たくさんの音と言葉を詰め込むように、間奏もほとんどなしで歌われていたからこそ、「どこまでいけるのか」からの開放感がすごい。気持ち良すぎる。「練習中はきっとこのパートに行くまでスタミナがもたなくて、こんなにも伸びやかに歌えなくて悔しがってたんだろうな……」などと、存在しない記憶が一瞬で思い浮かんで涙ぐんでしまったほど。
そして、それ以上に胸を打ったのが、落ちサビ部分。
ただでさえ忙しく、しかも多種多彩な楽器が入り乱れる奥行きのある演奏が一瞬静かになるだけでもゾクッとくるのに、転調するだけでもテンションが上がるのに、そこで聞こえてくるのが、まさかのクラップ音とかね……! もうね……! その音が聞こえてきた瞬間に、問答無用で涙腺だばぁですよ。学マスくん……そういうことする人だったんですね!? ズルい!! だいすき!!
それはまるで、何事にも全身全霊すぎてずっと余裕のなかった1人の女の子に、初めて届いたファンの存在を伝える音のような。
それはまるで、己のパフォーマンスにいっぱいいっぱいで周囲を見る余裕がなかったアイドルが、初めてファンの姿を目の当たりにした瞬間のような。
あるいは逆に、言葉足らずな1人の女の子が叫ぶ思いが、どこかの誰かに届いた瞬間だったかもしれない。
愛すべきノンストップ不器用ガール
涙ぐみながら担当アイドルのステージを見て、ようやくTrue Endにたどり着けた充実感を噛み締めていたところ、ふとMVの存在を思い出す。そういえば、公式ですでに公開されていたんだっけ。
――え!? 最高では!?!?
冒頭、複数のエフェクターを繋ぐことで別の音へと変換されていく「あのね。」の一言からして「月村手毬ィ!」成分100%だし、枠からはみ出そうではみ出ないサビの歌詞表現もそうだし、例の落ちサビ周辺も、舞台袖からステージに向かって駆け出すアイドル衣装の手毬とそれを迎える観客の姿になっていて案の定泣き、ラストはすべてのエフェクターを取っ払った等身大の、あとに続く「あのね、」の一言で終わる、という……ぬぉぉ……ヌォォォォォン……(早口)(号哭)。
狂ったようにMVをリピートしまくりながら(もう20回は見た)改めて思うのは、「月村手毬」というアイドルの、その愚直なまでの真っ直ぐさ。
良い意味で「真っ直ぐ」なキャラクターはいつだって主役級にいるし、そのひたむきさを見て救われた気持ちになることも多い。
ただ、手毬に関しては「常に全身全霊でしか取り組めない(その結果は上振れも下振れも激しい)」というピーキーさも相まって、プロデューサーがシナリオ内でそうだったように、「見ていてハラハラする」という感覚のほうが強い。しかもそんな彼女が、プロフィール上では「クール」枠に収まっているというのだから驚かされる。
でも他方では、周りをまったく見ないで突っ走るタイプというわけではなく、むしろ「周囲(身近な人?)を見すぎている」ような節もある。さらに、それでいて年相応の恥じらいや可愛らしさ、友達想いの優しさも持ち合わせている――ときたら、そんなんもう大好きになっちゃうじゃないですかバカーーーッ!!!
つんけんしているように見えて、内心では人の顔色を窺っている。その不器用さと言葉足らずなところも引っくるめて愛したい、思わず応援したくなる、真っ直ぐすぎるノンストップガール。それが、「おもしれー女」から彼女のコミュを読んで変化した、「月村手毬」という女の子に感じる印象だ。
真っ直ぐだけど、ひねくれ者。
そんな二面性もまた、月村手毬という女の子の魅力であり、「応援したくなるアイドル」たる所以なのかもしれない。
そんなこんなで、「なんとなくビビッときたから」という理由で選んだ彼女――月村手毬さんから始まった、『学園アイドルマスター』での生活。
1人目からすでに超特大ぶっ刺さりキャラ&楽曲を食らって泡を吹いている今日この頃なのですが……こんな癖のあるアイドルが、あと8人もいるってマジ~~~!?!? 個別シナリオとゲームシステムがおもしろいのは言わずもがな、楽曲込みで各キャラクターの魅力が描かれているとなると、なかなかに深い沼である予感……。
とりあえずは運良くSSRを引けたキャラ(紫雲清夏・姫崎莉波・倉本千奈)から、ゆるっと育成に励んでいくつもりです。手毬シナリオではズケズケと物を言っていたPくんが、「幼馴染の年下お姉ちゃん」という属性過多なアイドルとすんごいやり取りを始めているのを見て……僕は……僕は……。
あ、招待コードもまだ余ってるので、これから始める方はよかったらどうぞ~~~!!
▼招待コード
EAL85FTZ