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Apple Watchとレスペクトされない金メダリスト

さあ、スタートだ。
手元の時計をセットする。
オッケー。
障害物があれば、さっと取り除いておく。リンクの穴でも大騒ぎだ。後々、記録の邪魔になる可能性があるものは、除外しておくに越したことはない。
無駄な動きは排除する。可能な限り最短のルートで。滞りなく、流れるように。スピードだけじゃなくて見た目のスマートさも大事だ。
「ピッ」
どうだ!
「ありがとう、ございました!」

だいたい朝の7時20分前後。
場所は、コンビニ、セブン-イレブン。クライアントの事務所に出勤する日は、昼食を調達する。この会場にて、ほんの数秒だけ私はアスリートになる。
近くには他にもLAWSON、ファミリーマートと、存在するが、ダメなんだ、ここじゃなきゃ。問題は、レジだ。

私の場合、コンビニで買物をする際には、決済方法としてApple Watchを利用してのApple Payとなる。財布は不要だし、スマホも取り出す必要はない。この時点で、相当ロスは排除しているつもりだ。
通常は、決済方法を店員の方に口頭で告げるのだが、ただでさえ滑舌が悪いのに、マスクをしているから、そして「あっぷるぺい」なんて聞き慣れないからだろうが、3回に1回くらいは「えっ?」って聞き返される。聞き返してくるなら未だマシで、ヒドイときは何にチャレンジしようとしているのか?聞いた語感から勝手に推測して設定されることがある。案の定、決済ができない。できるわけがない。

そんなある日、このセブン-イレブンに新しいレジが導入された。
これは、こちらに向けられたタッチパネルから、利用者が決済方法を選ぶのだ。滑舌云々は関係ない。店員の方との会話はせいぜい、袋が欲しい、とか、おしぼりが欲しいとか、最低限である。
今までのような、つまづきがないのはストレスフリーだ。これを経験したら、もう他のコンビニは使いたくはない。

さあ、今日もこの時間がきた。

商品(昼食)をレジに置いた時点がスタート。
店員の方が、バーコードを読み込んで、袋に詰めていく間、私はApple Watchを設定する。次にレシートの排出口を確認。ときどき、以前の利用者のレシートが残っていることがあるので、事前に除去。リンクの穴でm…(略)。
さあ、店員の方がバーコードの読み込みが終わった。後はこっちのターンだ。任せておけ!
タッチパネルから、目指す決済方法のボタンを探す。もう、ボタンの場所は体が覚えている。そのうち、目をつぶってでも、感覚でボタンに触れるはずだ。
Apple Watchを読み取り機にかざす。ちょっとApple Watchを付けた左手を前に差し出すような動作になるが、読み取り機までの最短距離を目指す。スピーディに正確に。一瞬で、一発で「ピッ」となるように。
その間、同時に右手はお尻のポケットから財布を取り出す。レシートを入れるためだ。
音が鳴り決済を終えるやいなや、取り出した財布は左手に。入れ替えでフリーになった右手をレシートの排出口に向かわせる。出てくるレシートを受け取るや否や左手に構えた財布に中に押し込む。もう足は出口に向かい始める。移動しながら、右手で商品を受け取りレジから離れていく。

毎朝、この一連の所要時間を、昨日よりも今日、今日よりも明日と短くしていくことに挑戦している。おそらく、あの店の利用者の中では、先ずは金メダルの位置にいるんじゃないかな、と思っている。もしかしたら、金沢市内でも金メダルかな。県内はどうかな。意外と、珠洲に強敵がいそうだ。

ただね。一点だけ不満があるんだけど、全然リスペクトしてくれないわけですよ。ここの店員さん。
地元からメダリストが生まれたら、もっと喜ぶやろ、普通!


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