見出し画像

かつやリセット

「今回の有効期限は12月31日か…そろそろ行かなきゃな…」

かつやを利用すると精算時に100円の期間限定の割引券がもらえる。ここで言う「行かなきゃ」というのは、有効期限が切れてしまうから「行かなきゃ」という意味とともに、『かつやリセット』のために「行かなきゃ」という意味がある。

「調子に乗っていないかい?」
「あの日の気持ちは忘れていないかい?」
入店し、注文をしようとする度に、聞こえてくる声。かつやリセット…そう、私にとってかつやはかつ丼等を食べる場所とは別に、自らを戒める場所なのだ。
そして、注文。
「カツ丼(もしくは、ソースカツ丼)の梅と、千切りキャベツで!」
この3年間、毎回これだ。


前にも述べたが、3年前、起業したはいいものの、まさしくゼロからのスタート。箱はあるけど中身のないおもちゃ箱。
不安を感じないはずがない。
自然、できるだけ質素な生活を心がけていた。
一番着手しやすいのは、食事。
外食もできるだけ控えていた。

そういう生活が数週間も続き、ある日、何故か、無性にかつ丼を食べたくなったときがあった。もう理屈じゃない。あまりにも疎遠にしていたから、それはそれで、問題なのだろう。油も生きていくには必要?
思い浮かんだのが、単身赴任中に札幌で何度か足を運んだかつや。

Google Mapで近所にないか調べると…
「あるじゃないか!」
車で10分くらいか。
一目散に向かって行った。

店に入り、席に座り、あらためてメニューを見る。
注文するのはカツ丼、そして千切りキャベツ。キャベツは油と相殺してもいい、というマイルールだから必須。100円前後だが、これは割引券でほぼ打ち消せる。あとは、ランクを決めないといけない。ボリュームによってか、質によってか、松竹梅とランク付けされている。残念ながら「梅」一択だ。
「もう年だから油ものは体が受け付けない」といった感じで注文を。いったい、誰に対してエクスキューズしているのか!?。

千切り前のキャベツ

着丼まで、周りを見ると割と定食を食べている人、注文する人が多い(定食の方が、丼よりも金額の設定が高め)。
昔は、自分もあんなだったかな…。サラリーマンだよな。しかし、彼ら、年収どれくらいなんだろう?躊躇しないんだろうか?…悔しいなぁ。
ふと気づくと、全く、お門違いな敵意を抱いていることに気づき、情けなくなる。

それでも、かつ丼は札幌の店舗と変わらぬ安定的な美味しさで、そんなつまらないことも忘れさせてくれる。
あぁ、なんかガソリンを給油した気分。ありがとう。

梅はレギュラーかもしれないけど、それでも十分

あれから3年。確かに、当時と違い、色んな仕事はいただけているし、会社の売上も増えている。自然、先々の不安も薄れてきている。私生活でも、ときには、ちょっとくらいは贅沢してもいいかな、という気持ちもなくもない。
でも、仮にこの先どれだけ仕事が順調に増えていっても、収入が増えて自由にできるお金が増えたとしても、毎回割引券をもらうごとに、有効期限に気をつけながらかつやに通い続けている限りは、勘違いをしない自信はある。

「丼の梅と、千切りキャベツで!」

これがある限りは、決してブレることはないだろう。

さてと、近々、今年最後の「かつやリセット」をしに行くか。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?