平井一夫 氏 の講演
先日オンライン上記講演を聞きました。SONYの元トップなので理系バリバリの内容だとわからないのですが、随分わかりやすい内容でした。
平井氏は1984年SONY入社。音楽からゲームへ、プレステで注目を集めていた頃のSONYで6年社長を務め、その後1年会長、現在はアドバイザーという立場です。
SONYはエンタメ(音楽、ゲーム)、金融、エレクトロニクスと柱があり、映画ではソニーピクチャーズ(代表作はスパイダーマン)、最近はソナーレというブランドで介護も手掛けており世界に11万人社員がいる。
Purpose(存在意義)もしくはミッションを大切にし、クリエイティビティとテクノロジーの力で世界を感動で満たす。そういった使命で経済活動をしている。
頻繁にどのように業績を回復したのか?という問いを受けるが、それについては各種報道の通りなので、今日は違う観点、リーダーシップという観点でお話したいと思う。
超競走の世の中にあって、改革が進めば次の改革が必要であり、常に新しい挑戦をしていかなくてはならず、向こう5年安泰というものはない。そんな中でいかに従業員に
・誇りと自信を感じて高いモチベーションを保たせるか
・同じ方向に向かって協力させるか
・恐れずにオープンな議論の機会を与えるか
が大切だ。モチベーション、リーダーシップを100%引き出すことが重要で、決裁してよしなに進めてください等の体質は許されない。
そこでモチベーショナル・リーダーがすべき6か条を皆さんに伝えたい。
そしてこの6か条は順序が大切だ。また必ずしも社長だけに当てはまることではなく、たとえ5人のチームでもリーダーであれば該当し、人の上に立つポジションの人に適用できると考えている。
正しい人間になる
そもそも人間としてリーダーになる要素があるかということだ。リーダーに期待されることとは何かを考える上で例えば、若手を見渡した時に、彼はホープだ、〇〇ができる。と期待されるのは与えられた事ができる、営業力がある、ユニークにアピールできる、アイデアが豊富、戦略的などが見られるだろう。そしてできる社員は組織の中で上がっていく流れが一般的だ。
一方、エン・ジャパンの調査によると上司に期待することとして上位に来るのは
「意見に耳を傾けてくれる」
となっている。成績、専門知識、企画力等は織り込み済み、前提条件なのかもしれないが挙がってこない。
つまりIQではなく、EQ(心の知能指数)が求められている。
このことを踏まえて正しい人間というのがリーダーになる第一歩だ。人間として尊敬できる、この人のために120%頑張る、そう思わせることができるかどうかということだ。
120%の力×11万人と80%×11万人とではどちらが新たな成長を生むだろうか。
IQよりもEQを高める。心の知能指数、ここがスタートポイントだ。
朝令暮改、手柄を奪う、ミスを押し付けるなどは論外。肩書、年功ではなく高いEQに基づくリーダーシップが次世代にも求められている。
高いIQを持ったマネジメントを組織する
EQの高いリーダーにはおのずとIQの高いメンバー、できる社員が集まる。彼らは正当に評価してもらえることを知っているからだ。良いアイデアを出せば採用してもらえるという環境を整えることが必要性だ。
会議においてマネジメントメンバーが自分の意見にただYesと答える場合、
「君たちのバリューアウト(価値の発揮どころ)は何だ?ただのYesマンでは価値がない。」
と常々伝えていた。指摘してくれ!と。こういった組織作りをしていると周りは当然見ているので組織全体のモチベーションも上がる。
Mission、Vision、Valueを定義する(もしくはPurpose)
MVV経営と言えば流行りだが、ホームページや名刺には記載されているものの、そこ以外では語られない。これだと意味がない。例えばSONYは感動、これがPurposeであり、常にそれはどこが感動ポイントなの?と繰り返し問われないといけない。それで初めて生きたPurpose(存在意義)となる。
特に海外の社員はこのPurpose(存在意義)を非常に大切し、ここがぶれていると優秀な社員はすぐに去ってしまう。グローバルな人材、新しい人材を採用する上でも重要だということだろう。
戦略立案
ここまできてようやく戦略立案となる。
過去の失敗例。2006年プレステの責任者として日本に戻ってきた時。1台売ると数万のロスが出る苦しい商品だった。しかしゲームマーケットは普及台数を増やすことが必要不可欠だ。プラットフォームの母数がないと話にならない。従って赤字でも売った。ただ当然赤字は問題なのでコストダウンを命じた。段ボールを薄くするというレベルまで着手した。そんな時ある若手社員に言われた。PS3を定義してくださいと。このままだとどこに向かっているのかわからないと言われた。
本来PS3はゲーム以外にも写真、オンラインで映画、音楽も楽しめるものだが、敢えてそこにふたをして、ゲーム機だと定義した。商品が定義化されたことで、オンライン部分のコストをさげようとか、方向性が見えてきた、そんな苦い経験がある。
いいからやれ!では成功しないわけだ。成功の組み合わせとは
正しい人間(リスペクトされるリーダー)と正しい戦略においてのみ実現する。
現場に行く
大きい組織ほどそうだが、現場に説明に行くのはNO2等に任せがちである。重要なことであれば社長自ら出向くことが必要だ。それによりプライオリティを感じてもらえる。しかも何度も行くことだ。徹底的に説明して、腹落ちしてもらう。これによってモチベーションを保つようにする。
全社プロジェクトであれば、その説明ができるのは唯一社長なのだ。
反対勢力もあるだろう。よくあるのは会社の文化を変えるくらいのことだと、インパクトが強くて不安になってしまうケースだ。このケースは意外と説明不足が原因であることが多い。
社長6年(72か月)で70回のタウンホールミーティングに出向いた。月1のペースだ。広報のまとめた予定調和なものではなく、自分の言葉で伝えるようにした。用意された原稿を読むのであればやらない方が良い。社員はパーフェクトなリーダーではなく、パッションあふれるリーダーを求めている。筋書きのないインタラクティブなリーダーシップが必要だ。
5.5(6)後進に譲る
どんな会社でも予期しないことがある。サクセッションプランを示せるかどうかでかなり違う。社長就任から最初の3年は赤字でそれどころではなかったが、4年目からは指名委員会を組織し、取締役会では誰をどんな経験をさせておくかを話し合った。もちろん自分に何かあった場合も含めて。
何か起きてしまった時、困ってます。ではなく指名委員会が可動して対処しています、と言えるかどうかで株価にも社員のモチベーションにもつながる。
・いかなる状況でもプラス思考でリーダーシップを発揮できるか
・人間と人間の関係性を優先しているか
・完璧なマシンではなく、弱みもある人間か
・正しい優先順位を意識、実行しているか
自分ではなく、顧客、社員、株主の為の行動なのかは周りが見ればすぐにわかる。社員のやる気、満足度を上げることこそ会社の成長につながる。
あたなはモチベーションリーダーですか?
「まとめ」
文面にまとめると通り一遍の内容に感じてしまうかもしれませんが、実際の講演は1時間があっという間のテンポの良い筋の通った内容でした。
Purpose(存在意義)、これまでのレポートでも度々出てきますが、何のために?といった理念の重要性も今回も言われていたように思います。
上場企業の従業員と一定のレベル差はあるとしても、言っていることは正しいのだと思います。
日頃から経営者として人を束ねる皆さんにとって、正しい人間でいること、これは苦しいことでもあると思います。しかしそれは逃げることができない皆さんの仕事なのかもしれません。
平井さんは現在プロジェクトKIBOという一般社団を立ち上げ、相対的貧困に苦しむ子ども達に、スポーツ観戦、映画鑑賞、遊園地体験等の感動体験の不足を補う活動をされているそうです。
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