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場末のディサービス(しげちゃん)

今日はしげちゃんの利用日 すぐに玄関ホールまで出てきてくれるかな
玄関にいなければ 施設内に入って、しげちゃんの部屋まで行かなければ
いけない  すっと出れるとは限らない パジャマのままだったり
めちゃくちゃ行きたくないモードだとベッドの中だったりする。
今日は電話をすると、とても機嫌が良さそう。ラッキー🥰

「ママ 早く迎えに来て 私 1時間も玄関で待っている」
時間は朝8時前 8時前でも早いお迎えなのに・・・
大体しげちゃん 施設の朝ご飯7時半からやん そんなに早くお迎えに
行ったら 施設の人に怒られるやんと胸の中で ブツブツ思う。

「ママ 私 今日は調子悪いねん」という割には機嫌がいい
「ママ ものすごく甘いものを食べたら調子が良くなると思うねん」


でた・でた

しげちゃんの甘いもんが食べたいは あんこが食べたいという時
どういうわけか 半年いや3ヶ月に一度くらいの割で「ママ 甘いもんが
食べたい」っていうてくる。

私のことを「ママ」と呼ぶのは女性ではしげちゃんくらい
男性の利用者さんはたまに酔っ払って「純子ママ」と電話をかけてくる
じぃちゃんがいる。最初の頃 スナックのママかい! と私は思ったけど
お母さんのように思って自分の弱いとこ見せてくれてると思い、
利用者さんが甘えてくれるのが嬉しかった。

たまにしげちゃんが自分のことを 話す時があった
北海道生まれのしげちゃんは 流れ流れて尼崎にたどり着いたと笑っていた
ご主人は韓国人だった 離婚した 子供は3人
地獄をなん度も味わった 旦那と妾も一緒に暮らしてた 地獄やったと
淡々と話をしてた。あまりに平然と話をするので私は しげちゃん認知症?
と思ったりもした。
涙ぐんで話した時 息子さんが嫁さんに殺されたと話をした時
TVドラマになりそうなくらいの人生を送ってきたしげちゃん

利用当初はタバコも吸われるし お酒も飲まれていた
ウィスキーを飲んで 道路で寝ていたこともあった 転んで腕を骨折して
ギブスをはめて来所したこともあった
しげちゃんの話を聞いていると お酒でも飲まなくっちゃやってられない
そんな感じがした。独居生活を長い間していたが 娘さんが
ディサービスもいける施設を探して来られ 急遽入所した。

生活保護の方も受け入れている介護付きの施設だった
食事がきちんと食べられる タバコがやめられる そういう意味で
しげちゃんには よかった 施設ではタバコが見つかったら 即退所と
言われ どこの施設も厳しい。 

そうそうしげちゃんが甘いものを食べたいと言った時 二人で
十勝産小豆が入った あんぱんを食べた
しげちゃんと食べた あんぱんはすごく美味しくて二人で内緒話を
よくした。
しげちゃんはコロナに罹り 治った感じがしたが逝ってしまった
コロナ時 お見送りもできずお別れもできなかった

しげちゃんが亡くなってから 娘さんが遊びにくるようになった
流石に「ママ」ではなく純子さんと呼んでくれる
「苦労したわ・・お父さんが韓国人やから いじめられたわ」
「お母さんに なんで結婚したん?って責めた時もあった」

娘さんはお父さんのお世話もしていた
しげちゃんが嫌がるから 黙ってお父さんの所に行ってくる
寒くなるから冬用の肌着を持っていくねんと電話がかかってきた
明日 機嫌が悪いかも知れへんけど お母さん頼むわね
厳しいけど優しい娘さん

利用者さん ご家族の方 みんな大事な私の家族でした。

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