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場末のディサービス(在宅酸素)

慢性呼吸不全、慢性心不全、慢性気管支炎、肺気腫など
常時酸素が必要な利用者さんが来所していた。
不思議に 場末のディサービスでは長くご利用になられた方は
いなかった。亡くなられるとかじゃなくて利用者さんがディサービスに
合わなかったような気がする。

「ふーさん おはようございます お迎えですよ」って
声かけすると 息も絶え絶えのふーさんが酸素を外して車椅子に
座っている。「ふーさん 酸素ははずしちゃ 駄目ですよ」と言いながら
携帯酸素の用意をすると
「それは 要りません ワシはもう治りましたから」
またそんな事を言う ほんともう クソジジィと心の中で罵って
車椅子の後ろに携帯酸素をセットして1リットルに合わせる
「酸素 出てますか?」「わからん」確かに1リットルぐらいやと
わからないかも・・水の入ったコップにつけてみる。ぶくぶく。。
「大丈夫 出てますよ 見て下さい」「ほんまやな ぶくぶくしとる」
こんなこと毎朝してる 険しい顔だったふーさんが穏やかな顔に
変わる 息苦しくて機嫌が悪かったんだよね

別の日の朝も息も絶え絶え 「今日はスーパーに行って 野菜を買って
来た 野菜は体にええからな」
いやいや 野菜より酸素やで・・・

スーパーまで歩いて行ってきたみたい 酸素もせずに よく途中で
転ばなかったなあと思いながら 車椅子 携帯酸素の用意
もちろん自宅の酸素を出す器械もつけっぱなし 電源を切って 出発
この機械 結構おしゃべりをする
「電源が入りました 1リットルにセットします」なんて言う
ついでに 外して一人で出かけたら 駄目ですとか言ってくれたら
いいのに  とお迎えの度に思う

お風呂のふーさん また酸素は要りません と言っている
首まで浸かるくせに 長湯のくせに 酸素要りません どの口が言う!!
病院の先生が 湯船に入りたかったら酸素はして下さいって言ってます
とスッタフ あ!もしかして 地雷踏んだかも・・・

大きな地雷を3個ぐらい踏んだようだ
「あの先生ですか あの先生は きかん薬ばっかり出して 飲んだら
いっつも具合が悪くなるんです この間も・・・・」
延々とドクターの愚痴を言ってた
ふーさん 薬も拒否があって 勝手にやめたりしている
食後の服薬時は 毎回看護師と薬のことで揉めている
「この黄色いのはやめます 他は飲みます」
「黄色いのは心臓のお薬です 飲んでください!」
この会話も毎回のこと
看護師から愚痴もでる ふーさん 看護師の手を握ったりベッドに
押し倒そうとする 看護師はみんな慣れたもので 適当にあしらって
いた。手のかかるふーさんだけど 場末のディサービスはみんなと話が
できるからと喜んで来所されていた。
会議でふーさん宅に集まると 世話になってるからとあれもこれもと
出してくれる 

そうそうスーパーで野菜を買って 自分で料理もしていた
茄子が好きなようで茄子を煮ていた 美味しそうですねと声かけ
すると 是非味見をしてくれと言われ、味見「美味しい!」
とってもいい笑顔を見せてくれた
本当は味見なんかしちゃいけないんだけど ふーさん 味に自信があったんだよね
誰かに食べさせたかったんだよね

自宅では大きな機械に長いチューブ スイッチ1つで電源が入り
酸素が出てくるようになっている。簡単に取り扱いができるように
なっていて人によって違うが1リットル 1.5リットル 2リットルと
合わせるとその量だけ酸素が常時出てくるようになっていた。
お迎えに行くと 移動用の酸素に切り替えて 医師の指示通りの
リットルに合わせて車に乗車する。
携帯用酸素は常時流しっぱなしの分と 吸えば出てくる 2通りが
あったと思うが、利用者さんが吸わないと アラームが鳴った。
何かに夢中になって呼吸を忘れたりすると 結構大きな音で
なっていた。

しっかり者の看護師さんは 酸素がなくなる前に取り替えていた

酸素は薄い薬のようなもので 呼吸苦の方は随分楽になる
圧倒的に男性が多かった。10人ぐらいの方が ご利用になられたが
女性は1人だけだった。
喫煙との関係が深いと思われる。

酸素は爆発はしないが 勢いよく物を燃やす助けになる

酸素を吸いながら喫煙される方もいて 危ないから吸わないでと
言っても 言う事を聞かない人ばかりだった。
言う事を聞かない人だから 酸素が必要な状態になったのだろう

本当に頑固ジジィが多くて でもどこか可愛い方ばかり
単純な私はカラオケで「純子に惚れた」なんて言われると
嬉しくなって 介護の仕事しててよかった
この方らしい 寂しくない独居生活を終えることができたらと
心から思っていた。

コロナの時は 大変だった 元々肺の状態が悪いのに コロナに
罹って悪化した人もいた
パルスオキシメーターで経皮的動脈血酸素飽和度を測っていた。
普通は98ぐらい 手が冷たかったり 爪の状態が悪いと
うまく測れないことが多かった。酸素濃度を早く測りたいのに
なかなか測れない まず手を温めてから・・と時間がかかる

人間の体って 無茶をすると やっぱりどこかに負担がかかって
悪いところができるみたい
上手にメンテナンスしながら 生活をしなければ・・・


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