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土地の力。

どうも。アリス食堂店主です。

今回は、私がご縁あって生を受けた土地、実家についてのお話です。どうぞ、宜しくお願いします。

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9月最後の日、父が唐突に「我が家の氏神様を大切にしないと」と、言い出した。我が家の氏神様??一体何の事?これまで聞いた事もなかった話しに私は全くピンときませんでした。

父が言うには、家の敷地の奥にある石のこと。

えっーー!あの石が氏神様!!しかも、父が大切にしないと、と言っている事に驚きでした。

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その石は長い間、放置されていました。花立てもボロボロ、草も茂ったままのあれた状態でした。それはなぜか。

父が毛嫌いしていたからです。その場所を触ろうものなら怒鳴られ、手を合わすことなど、もってのほか。母が花を挿していようものなら、いつの間にか捨てられていたという事もありました。

父は神様という言葉は夢物語という人でした。家の仏様にもめったに手を合わすことはありませんでした。そんな父が草をとり、ボロボロの花立てを新しく買い替え、榊を挿して、お線香を立てました。そして、この土地の始まりを話ししてくれました。

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この場所は山だった場所でした。父の祖父母が実家から出て、夫婦でこの土地をならし耕し、畑と家を立てたところから始まりました。父の祖父母、つまり私の曾祖父ちゃんと曾祖母ちゃんが実家から別に家を構えようとした際に、その実家から持ってきた石が、氏神様でした。

曾祖父ちゃんはその後、病気で倒れ、10年寝たきりの末に亡くなってしまいます。「爺ちゃんは苦労したんだ」父親が寝たきりだった自分の父親、つまり私の爺ちゃんは大変だったと言います。

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父も苦労の人でした。昔の苦労話は次から次へと出てきます。そして、沢山の人の死を看取ってきた人です。爺ちゃんが夜中、布団の中で冷たくなっていた時に「爺ちゃん、大変だったね」と声を震わせ、硬直する前の爺ちゃんの体を慣れた手つきで触っていた父を今でも覚えています。

あれは、何のためだったのか。これまでも、これからも聞く事はできません。それは、悲しみの中でも父が役割として心得てきたこと。父が一人、抱えていた事。

その荷物を父がやっと下ろせた。そんな気がしてなりません。

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この土地に今、新しい風が吹いています。空いている畑を貸してほしいという若者が出てきました。加工品用のサツマイモを作るのだそうです。苦労していた草刈りもしてくれるのだそうです。

草刈りに苦労し、一時はソーラーパネルを考えていた父でしたが、今は快くその若者を歓迎しています。それは、この土地の力なのかもしれません。

この場所が繋がり、共に何かを作るための土地本来の姿を取り戻す風が吹き始めている、と感じます。

氏神様もきっと、喜んでいらっしゃる。写真撮影も許してくださる。そんな気がする9月最後の日でした。


今回は土曜の夜の更新となりましたが、ここまでお読みいただき、ありがとうございました。来週、金曜の夜の更新を目指します。次回もきっと、土地の話しになると思います。宜しければ、どうぞ、宜しくお願いします。


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