月
丸い月が、空に昇った。
欠陥のない、美しい月。
輝きは、真っ黒な夜空を、さらに黒くした。
私は星だった。
宇宙の端に佇む、小さな小さな星だった。
輝きを届けようと、果てしない時間をかけて、私の光は駆けていた。
夜空に描かれるために、走っていた。
走り続けていた。
私はとても小さく、とても遠いところにいた。
私の光は、弱かった。
夜空に描かれるには、弱すぎた。
私が終わりを迎える日、
光は走っていた。
叶うことのない夜空への到達を目指す、私の光。
私にしか見えなかった、やさしく、あたたかく、美しい光。
私には感じることのできた、その眩いばかりの輝きと共に、
私は静かに、ひろいひろい宇宙に溶けた。
私たちはやっと、月が今夜も照らす、夜空に混ざった。
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