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丸い月が、空に昇った。

欠陥のない、美しい月。

輝きは、真っ黒な夜空を、さらに黒くした。

私は星だった。

宇宙の端に佇む、小さな小さな星だった。

輝きを届けようと、果てしない時間をかけて、私の光は駆けていた。

夜空に描かれるために、走っていた。

走り続けていた。

私はとても小さく、とても遠いところにいた。

私の光は、弱かった。

夜空に描かれるには、弱すぎた。

私が終わりを迎える日、

光は走っていた。

叶うことのない夜空への到達を目指す、私の光。

私にしか見えなかった、やさしく、あたたかく、美しい光。

私には感じることのできた、その眩いばかりの輝きと共に、

私は静かに、ひろいひろい宇宙に溶けた。

私たちはやっと、月が今夜も照らす、夜空に混ざった。


#10秒で読み終わる物語 #小説 #なのか

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