コント『普通の日本人』

「この前言ってた面接どうなった?」
「あーあそこ?これ見てよ。」
「この度は、弊社の中途採用試験にご応募いただきましてありがとうございました。どういたしまして。」
「返事いらねぇよ。」
「慎重に選考を致した結果、今回はお見送りさせて頂きました。やったな見送られだぞ。」
「ダメじゃん。」
「今後のご活躍をお祈りします。やったなお前期待されてんぞ。」
「落ちたんだよ。」
「え?」
「知らねぇのかお祈りメールって」
「ご利益ある?」
「ねぇよ。ストレートに落ちたって言うと角が立つから、こうやってお祈りしますとか、今後の活躍に期待してますって言うんだよ。」
「そっか。でもさ、そこまで焦らなくて良いんじゃない?」
「分るけどさもう今年30だよ。普通ならさ会社に勤めてて後輩できて、結婚して子供いてもおかしくない年だろ。」
「分かるけどさ、普通ってことにこだわり過ぎてないか?」
「そりゃ普通が良いよ。でもその普通にもなり切れてないんだから。」
「でもよく考えてみなよ、普通に就職できて、普通に働けて、後輩できてそれなりに評価されて、それなりに彼女できて結婚して、普通に子供できて。普通預金で貯めた金で普通車を買う。それってすげぇ幸せもんじゃない?」
「最後は普通の意味違うけど。」
「日本人が思う普通をコンプリートしてる日本人って意外といないよ。」
「確かにほんの一握りしかいないな。じゃあそのほんの一握り以外の人は何?」
「ギリ日本の人」
「何だよギリって。日本人にもなれてねぇよ。」
「日本人が望む普通の日本人って、そもそもほんの一握りしかいないのに、こうあるべきだ、こうしなければならないって、日本人の在り方に縛られすぎてんだよ。お前もな。日本人でありながら日本人になり切れてないからギリ日本の人。ただ日本に住んでるってだけの人。」
「そんな言い方ねぇだろ。」
「でもそんな奴でも大丈夫だよ。紙にギリ日本の人ってひらがなで書いて並び替えてみろよ」
「ぎりにほんのひと ほんのひとにぎり。あっすげー」
「日本人はみんな何らかの素質あんのに、それに気づけてないんだよ。お前も、お前を落とした会社も。固定概念に囚われず見方変えてみろよ。ただでさえ大変な時代なんだからさ。」
「そうだな、ありがとう。」
「そういえばお前が落ちた会社、俺内定もらったよ。」
「えっ?敵だったのかよ。味方変えよ。」

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