保存食の用意
子供ふたりは6歳の年の差があり、二人とも私立校で、下の子は中高一貫校だから、弁当作りの経験は長かった。まさか、この弁当作りが今になって役に立つとは思わなかった。
豚肉の味噌漬けとケチャップ漬けを作り、冷凍にした。鮭も一切れずつラップして冷凍へ。鮭のハラスはサッと焼いてタッパーに、白身魚は幽庵焼き用のタレにチョットだけ漬けて小分けにして冷凍に。
肉と魚に下味を付けて冷凍すると、直ぐに調理が出来て、いつも便利に利用していた。あとは味噌汁と煮物を数種類を作れば、いつでも弁当は出来る。
職人を使っての自営には限界を感じ、一度工場を閉鎖して、技術を活かして一人だけで賃仕事を始めた。二人の子どもの弁当作りと朝晩の食事作り、掃除に洗濯、結構キツかった。
二人は食べ盛りで、普通に4人分を作っても一日で無くなることも多かった。仕方なく考えたのが、肉と魚の味付け冷凍だった。煮物用の調味液を作り、野菜や煮魚はそれを薄めて夜のうちに煮ておき、朝はレンジで温めるだけで良いようにした。
掃除洗濯に買い物と料理、仕事に追われ、日曜日も仕事をしていた。土日だけが仕事に打ち込めたのかな。バブルの時に事業拡大にと、銀行が借り入れを薦めてきたが、あの頃は二人とも小さくてそれどころでは無かった。その後、今以上の不況になって自死を選んだのもいたが、高校や大学に進学していて、如何に学費を工面するかで頭が一杯だった。
わずかな年金だけで、今こうして好き勝手に生きていられるのも、長期間の不況に対して、様々な工夫をしてきた経験が役に立ってる。子供からは同居や近所に越してくるように言われているが、彼らが思うほど困窮はしていない。好きな物を作って食べ、月に1回程度は安い温泉宿に行き、興味の有ることを学び、図書館通いなども楽しんでいる。これは一人になったから出来ることで、誰の制約も受けたくない。
朝晩の食事と掃除は、またふたりの子が来たことで忙しくなったが、まだイタズラ盛りの子供だから仕方ない。今は叱るよりも、人の年齢に換算しては、我慢している。
周りから見ると高齢者の一人暮らしは、よほど大変なことに思えるようだ。自分の方がチョット年上のくせに、とやかく言うのもいてありがた迷惑なのだが、時には女性相手のおしゃべりは気晴らしになる。
空腹時以外はニャンとも鳴かない、色気も無い猫達との暮らし、慣れてしまうと良いモノなのだが、分からないだろうな。
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