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年取ると寝付かれない

老人の一番嫌われる事は、時間の観念が無くなることだろう。
これには本人も困ってるのだが。

高齢者になると眠りが浅くなる。7~8時間の睡眠、などと言われてもそんなに眠れない。ノンレム睡眠が脳の疲れを取るとか、睡眠が成長ホルモンが、などと言われるが、老人は脳を使うことが少ないし、成長も止まってるので時間通りには行かない。

夜布団に入っても、1時間もすると目が覚めることもしばしばある。無理に寝ようとすると、逆に頭がさえてしまう。猫ではないが、家の中をウロウロし出すこともある。同居家族がいると、これが最も嫌われる原因になるそうだ。夜にゴソゴソしてる割に、昼間はテレビの前でウトウトしてる。それで帳尻を合わせてるのかもしれない。


10時に布団に入り、この時には眠かったのだが、1時には目が覚めてしまった。寝るに眠れず『方丈記』を読んでみた。

行く川のながれは絶えずして、しかも本の水にあらず。よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとゞまることなし。
(中略)
もしこれ貧賤の報のみづからなやますか、はた亦妄心のいたりてくるはせるか、その時こゝろ更に答ふることなし。たゝかたはらに舌根をやとひて不請の念佛、兩三返を申してやみぬ。

方丈記

最終章の部分で人生の生き方を自問自答し、結局結論は出ない。そして泡のように消え、また川の流れに生じる泡となるのだろうか。多くの災害に遭い世の苦悩を見詰めて、本来得るべき神官の職も得られず、方丈の庵にひっそりと暮らし、長い思索にも拘わらず不明の「明」を以て擱筆し、また放浪に出たのだろうか。

何ともありがたい結末ではある。長く生きて何が得られたのか、何を悟ることが出来たのかと思い巡らしたところで、昨日と変わらぬ繰り返しを送るだけ。鴨長明ほど深い思索では無いにしろ、同じ様な思いをしてるのかと思えると、何となくありがたく思う。

こんなバカなことを考えて時間を過ごしても、いつまでも生きながらえてしまって、毎日同じ様に無為に過ごしてる。しかたない、する事も無くただの消化時間なのだから。これでは誰とも同居は難しい。旅館ならば、今頃は一人風呂に浸かっているのに。


せめて家族の眠りを妨げないようにしなければ・・・。

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