美魔女?
電気器具の量販店に行った。小学生の低学年と思われる男の子二人を連れた女性と会った。
身長は160cmは超えていただろうが、ピッタリとしたジーンズの後ろ姿はモデルのようで、高身長に見えた。幾分肩から背にかけてふっくらとして丸みがあったが、全体として締まった体躯をしていた。髪は長めのポニテで、黒髪の中に明るい茶髪が混じってる。半袖の、白地に薄い黒のチェック模様が爽やかで涼しさを感じる。シャツを中に入れたジーンズのベルトが幅広で、細い腰を強調して丸い締まったヒップを目立させていた。
最近の親は子供が騒ぐのを放任してるが、この人はシッカリと子供達の騒ぐのを抑え、周囲に迷惑の掛からないようにしていた。振り向いた顔は目鼻立ちがシッカリして、美しい顔立ちと思った。
しばらく目線が合ってしまったが、横を通る時に名前を呼ばれた。どこで会ったのか全く思い出せずにいると、中高の時の同級生だという。
同い年・・・。後期高齢初心者の自分と同い年・・・。
朝の散歩で、一学年後輩のオバアサンと会う。1歳だが、年下とは見えないくらいの白髪で、幾らか腰を曲げて、トレッキングポールを両手に持ってユックリと歩いてる。かく言う自分も杖を片手にのんびりと歩き、頭は白く頭頂部は随分と薄くなってる。それに比べ・・・。
「同級生、って、同じ歳・・・」
「そうよ、私のこと忘れたの。わたし、見てすぐに判ったわ」
こんなに小さな子が居るのかと聞くと、次男の子供で、今は次男の家族と一緒に暮らしているという。名前を聞いても全く思い出せないのだから、ましてや家族構成など聞いても判らない。
年齢に不相応の若さで、美魔女と言うよりも詐欺では無いか。そう言うと大きな声で、嬉しいと笑っていた。顔は化粧で誤魔化せる。子供の頃は体型はチビで痩せでブスといじめられて、25歳で結婚してから近くに出来たスポーツジムに通っているという。ヨガと水泳はもう50年間続いているという。
結婚生活は10年にも満たずにご主人を亡くし、子供三人を連れて実家に戻り、両親と弟の家族と一緒に暮らした。その間も隣の市にあるジムに通い、一時期はインストラクターもしていたらしい。水泳とヨガで、あれだけ若々しい体型が保てるものだろうか。肌や頭髪に老化が見ないのは、単に化粧だけなのか。何よりも背筋が綺麗に伸びている。
実家と言っても弟家族と同居で、随分苦労をしたらしい。
「ほら、小学校の横に駄菓子屋があったでしょう。あのすぐ近所に親戚の叔母が居て、その家が空いたので買い取ったの。長男と三男は大学を出てそのまま東京で就職をし、次男が中学の教師になり、お嫁さんも先生なので、私も元気なうちは便利に使われて、家事や子守りにも便利よね」
親戚の叔母も、現在は90歳くらいなのに歳に見えない。10歳以上は若く見える。古くからの機織り業の家に嫁ぎ、三人の女の子をもうけてすぐに夫が亡くなった。業界は不況になり、随分と苦労をしてきた。父も応援は惜しまなかったが、弱音を吐くこともなく三人の子供を嫁に出した。叔母の家も、二女が看護師になり、仕事が忙しいと子育てのために同居をした。
娘の高校の同級生も、娘の友人仲間の中では若く見られる。事情があり、一人で子供を産み育ててきて、その子は県下でもトップクラスの高校で、成績はトップだという。親の苦労を見ていて、塾にも行かず独力で頑張ってるそうだ。その姿を見てるので、自分も頑張れると言っていた。
身近な人達の中でも、年齢に不相応な若さと、頭の回転の良さ、話題の豊富さを思う時、なぜか若くして一人で子育てをしてる人が多い。優柔不断な女の子も、自分一人で子供を育てなければともうと、男以上に気丈になるのだろう。ただ、男は高齢期になると、聞きづらいうるさい苦労話や自慢話をして、如何にも偉そうなジジイ面になり、会いたくもない。また、そうしたジジイに仕えている奥さん達は、同じ苦労でも嫌々の苦労なのだろう、年齢以上に老けて見える。
美魔女、美熟女になる要件は、どうやら女性が一人で家庭を持ち守り、シッカリと子育てをした褒美なのだろうか。男は充分に気を付けないと、自分の連れ合いを醜くしてしまう。労り大事にしなければ。
フッと思った。もしも彼女と結婚をして、ともに後期高齢者になったとしたら、あの若くて綺麗な姿に成れただろうか。一緒に杖を突いて、ノロノロと歩くジイさんバアさんに成ったかもしれない。ともに同じ様に杖を突いて老いることも、そう悪くは無いとも思えるが。