確率思考の戦略論で紹介された負の二項分布を使って「これからの新しいZOZOを創る」ような企画の #アイデア量産 してみました
今回のnoteでは「確率思考の戦略論」(特にポアソン分布と負の二項分布)を引用しながら、 #アイデア量産 していきます。
Scienceな思考とArtな思考、これらを交互に組み重ねながら仕事を進めて行く能力が、これからのマーケターには求められると思っています。
それを証明するため、何度も試行錯誤を重ねた今回のnoteは「いったん、もう出そう」と腹括って公開するものであり、まだまだではありますが、どうか生暖かい目でご覧いただければ幸いです。
ZOZOで面白そうな仕事に携われそう!
皆さん、ZOZOTOWNで服、買ってますか?
我が家では、嫁がヘビーユーザーでして、月に1回は黒いダンボールを目にしています。さすがは元アパレル店員。
一方で、私はもっぱらユニクロU。ルメール最高。もっとも今年の秋冬は微妙でしたね。ちなみに、ZOZOTOWNについてはトップページが「人が行き交う感じ」だった頃から定期的に買っているので、古くからの友人のような感情をZOZOさんには持っています。
加えて、定期的に取材・寄稿させて頂いているITメディアさんで、立て続いてZOZOさんに取材をさせて頂いたので「なんか急に距離感が近くなった」ような感情もあります。
さて、そんなZOZOさんでは「ZOZOグループの社運を賭けた「最重要案件リスト」大公開!」と題して「これできる人いませんか?」という採用ページが現在公開されています。
パーソナライズ画面や、検索性能、ZOZOMAT、リプレイスPJなど「あ、これガチで最重要案件だ」と思わせる内容ばかりです。
PHPは6年程度しか触れていないし、今ではPythonやRを使う機会が多く、加えて言えば「集団での開発」は久しくやっていないので、もはやエンジニアでもない私には用が無いかな…と思っていたら、面白そうな募集要項がありました。
・数百万人のユーザーに驚きと楽しさを届ける企画・機能を作る
・ZOZOTOWNの改善推進担当。グロースハックアナリスト!
要は、ZOZOTOWNが量も質もより拡大するために貢献する仕事ですよね。めちゃくちゃ面白そうだと思います。
そこで、私なりに企画を考えてみました!
【前提】ファッションを取り巻く環境について
皆さんは普段、ファッションにどれくらいのお金を使っていますか?
ファッションに興味が無くても「全裸」が許されるのは村西とおる監督ぐらいで、衣食住という言葉の通り、誰もが絶対にお金を使います。あとは程度の問題と言えるでしょう。
総務省「家計調査」によると、1983年から2018年までの36年間で被服及び履物に対する2人以上世帯の支出金額は以下の通りです。
1991年の30万2328円をピークに、2018年は13万6613円と半分以下になってしまいました。これらは平均に過ぎないにしろ、月約1.1万はちょっと少ないですよね。
家計調査は対象とする世帯の平均年齢が上がっている点が問題視されていますが(平均世帯年齢が2018年で50代)、それだけで「半分以下」になった説明は出来ないような気がします。
次に、ZOZOさんのIRを読んでみます。2020年3月期1Qの資料によれば、アクティブ会員1人あたりの年間購入金額は46,934円でした。
そして、既存アクティブ会員(会員登録から1年以上経過しているアクティブ会員)1人あたりの年間購入金額は55,048円でした。
■IR資料(2020年3月期1Q)
https://d31ex0fa3i203z.cloudfront.net/wp/ja/wp-content/uploads/2019/07/J_2020_1Q_2.pdf
どちらの数字を主に見るにしろ、家計調査でわかったファッションの総支出額に対して約34%ですから、ZOZOさんで買っている人は「ファッションの買い物の全てをZOZOで済ませている」とは言えない状況だと思います。
ただしIR資料によれば、会員の平均年齢は33.6歳と比較的若い。世帯年齢が平均的に見て高い家計調査の数字をそのまま受け入れるのは、若干ながら抵抗があります。
そこで、「家計調査」の中でも"世帯主の年齢階級別"の被服及び履物に対する全世帯で見た支出金額を調べてみました。残念ながら、データは2005年以降のみ確認できました。
20代は2007年の16.2万円をピークに、この10年で2018年現在は12万円前後まで減少。一方で、30代は長らく16万円代を前後しているようです。(そんなに大きく変化無かったですね)
すなわち「ZOZOさんで買っている人はファッションの総支出に対して、平均すると30%〜40%はZOZOで買う」と言っても良いでしょう。この割合を高いと見るか、低いと見るか…。
ただ、この数字で考慮していない点が1つあります。それは「ZOZOで買う人の嗜好」を無視している点です。
ファッションなんてどれも一緒、という人は「ユニクロ」「しまむら」で済ませている分、支出金額も低いでしょう。一方、服大好き!原宿・表参道よく行きます!キャットストリートの笑たこ良いよね!って人は、支出金額も高いはず。
そう考えると、ファッションの総支出にZOZOさんが占める比率は、実際はもう少し低く見ないといけないんだろうな…とは思います。
どうやって売上は作られるか?
ちなみに、総支出に対する比率を気にするのは、「確率思考の戦略論」で紹介されていた売上を作る方程式を学んだからです。
ピーター・ドラッカーは「ビジネスの目的とは顧客の創造だ」と言っています。確かにその通りです。しかし、創造された顧客が購入する商品やサービスのカテゴリが一旦成立した時点で、市場シェアの争奪戦が始まります。市場の大きさは下の式で計算できます。
市場の売上=延べ購入回数×1購入当たりの平均購入個数×平均単価
ここで競合と奪い合っているのは、延べ購入回数におけるシェアです。1購入当たりの購入個数や平均単価において、直接的な奪い合いが起こっている訳ではありません。すなわち、我々は購入意思決定の争奪戦を行っているのです。購入意思決定は、そのカテゴリーにおける消費者が持つ相対的なプレファランスによって決まっています。我々が奪い合っているのは消費者のプレファランスそのものなのです。
ちなみにプレファランスとは、森岡さん曰く「消費者のブランドに対する相対的な好意度(簡単に言えば「好み」)」と表現しています。
つまりZOZOさんは楽天やYahooショッピング、或いはブランドのECサイトやリアル店舗と「ファッションにおける延べ購入回数の奪い合い」をしていて、「どこで買うか」はプレファランスが決める、というのが森岡さんの弁です。
(余談)「欲しいサイズ・色が店舗に無いからZOZOTOWNで買う」なんてパターンも実際にはあるんでしょう。ただ、嫁からは「店舗に無いからZOZOTOWNで買う」という言葉は聞いても「店舗に無いから楽天で買う」なんて聞いた機会がありません。そこは確かにプレファランスが関係してきそうです。
「延べ購入回数」が高まれば高まるほど、家計調査で言うところの被服及び履物に対する支出総額に対して、アクティブ会員1人あたり年間購入金額が占める比率は高まります。だから総支出に対する比率を気にしていました。(本来は"回数"の方が大事ですが分かんない以上仕方がない)
消費者をコントロールできるのか?(ポアソン分布)
とにかく買って貰う機会を増やすために、「CRM」的な要素を盛り込む施策が効果は良いのでしょうか?
そうかもしれませんが、あまりに企業目線な発言ではないかとも思います。何を買うかは消費者にのみ決める権利があり、どんだけ接触しようと、腐った鯛では絶対に売れません。
したがって、消費者が何を買うかをどうやって決めるかを知った上で、戦略を練るべきでしょう。
消費者が「意思決定」を下す背景の説明について、確率思考の戦略論では、以下のような説明がされています。
ポアソン分布は、世の中に発生する多くの事象に当てはまる重要な確率分布です。ポアソン分布は、平均発生率が長期的に見た場合一定であるある事象の「ある一定期間(単位期間)の分布」を表します。
(略)
我々は、日々いろいろな選択・決断をしています。そのうち自分たちの決めたことがどのような結果になるかわからないで選び、かつその選択が次の選択に影響しない選択について考えてみましょう(独立にランダムに起こる事象のことです)。これはちょうど、袋から1秒ごとに玉を取り出すのとそっくりです。袋には、取り出すと何かが起こる非常に少ない赤玉と、選んでも何も起こらない大変多くの白玉が入っています。事故に遭う確率は、袋の中から赤玉を取り出すようなものです。何も起こらないのは、白玉を選んでいるのと同じです。
(略)
洗剤やシャンプーの購入を個人レベルで診てみると、消費者個人の購買活動は同じようにポアソン分布しています。それぞれ個人がある一定の確率を持ち、ランダムに赤玉と白玉の抽出のごとく確率試行をし、そしてそれぞれは独立して起こるのです。
「プロイセン陸軍で馬に蹴られて死亡した兵士数」の分布は母数 0.61 のポアソン分布に従う事例として知られています。稀に独立してランダムに起こるイベントの分布を理解するのにピッタリです。詳しい計算式等は、以下のwikipediaで確認してください。
私の身近でポアソン分布に近しいデータを探してみました。その結果「1ヶ月で"いきなりステーキ"に行く回数」が、かなり近いとわかりました。
ステーキは低糖質・高たんぱく質食品で、ライザップをやっていた私にピッタリの食品です。ライザップを退会した今でも、「今日のお昼は何を食べよう?」と考えたら真っ先に浮かぶのが"いきなりステーキ"です。
ちなみに、これまで2016年6月から約3年かけて58.4kg食べてきました。それでも全国ランキングは4273位で壁が分厚いよ、ほんと。
「いきなりステーキ」アプリでは、肉マイレージを貯めていると、これまでの利用履歴を確認できます。2016年6月から2019年5月までの36ヶ月分のデータを元に「月に何回通っているか?」を計算してみました。
4回/月がもっとも多く36回中6回、10回/月も行っていた月が36回中1回あったようです。行き過ぎかも…。よくも飽きずに通い続けたもんです。
平均すると月5.13回通っていたと分かります。この結果から、以下のようなポアソン分布になると分かります。
実際と理論値を比較すると、けっこう近似していると分かります。大きく外しているのは、5回/月の回数でしょうか。
私は、私の意志で「いきなりステーキ」に行っているのに、長期的に見てみれば一定の確率試行に基づいて行動していたと分かります。
ある月で、週1回(月4回)行く確率は17.04%だし、月5回以上行く確率は58.34%だと分かります。半分以上の確率です。
つまり、消費者の行動を変えたければ、袋の中の赤玉をできるだけ増やす、赤玉が当たる確率があがるようにするだけです。
ちなみに、今回のデータがなぜ2019年5月というキリが悪い時点だったのかと言えば、6月以降に諸般の事情で行く回数がめっきり減ったからです。
私の中で明確に優先順位が下がりました。0回/月という機会もありました。その結果、ポアソン分布でいうλが下がってしまったのです。
6月以降、平均して2.75回だったのですが、そうなるとポアソン分布は以下のように変化します(赤が2.75、青が5.13)。
月5回以上行く確率は58.34%から5.2%と大きく減りました。これが飲食店で言うところの「顧客が飽きた」問題です。
消費者全体はどう動くのか?(負の二項分布)
消費者の行動がポアソン分布で説明できるなら、消費者全体もポアソン分布で説明できるでしょうか。「確率思考の戦略論」では次のように説明されています。
個人個人の購買行動はポアソン分布していますが、消費者全体を見ると「負の二項分布」しています。
(略)
二項分布と同じように袋の中に赤玉と白玉の2種類入っており、全部でn個あります。その内訳は赤玉θ個と白玉n-θ個です。袋の中をかき混ぜて、中を見ないで玉を1個取り出します(ランダム)。もし赤玉が出たらこれにd個の赤玉を加えて袋にもどします。もし白玉が出れば同様にd個の白玉を加えて袋にもどします。これは、その選択自身が次の選択に正の影響を与えることを意味します。成功は成功を呼ぶということです(数学的には、ガンマ分布することです)。
ちょっと詳しく説明します。
仮にN回、袋に手を入れて、うちr回赤玉が出る確率はPrとなります。数式が難し過ぎるかもしれませんがMとKに注目してください。(Γはガンマ関数を意味しています)
Mは「N回中赤玉が出る平均回数」=N×θ/nを意味しています。平均的な発生回数だと思ってください。森岡さんは「自社ブランドを全ての消費者が選択した延べ回数を、消費者の頭数で割ったもの」と表現しています。
仮に玉が10個(n個)あって赤玉が4個(θ個)あり、5回(N回)取り出したなら、Mは5×4/10=2になります。
仮に玉が1000個(n個)あって赤玉が40個(θ個)あり、20回(N回)取り出したなら、Mは20×40/1000=0.8になります。
Kは「購入確率の分布のパラメータ」=θ/dを意味しています。
直感的に分かりづらいと思うので、仮にM=1だったとして、K=0.5の場合、K=2の場合の分布を見てみましょう。以下の通りです。100人いたとして購入回数は延べ何回になるでしょうか?
K=0.5も、K=2も、100人いたとして購入回数自体はどちらも100回になります(右端2列)。しかし分布の形は異なります。Kが低くなるほど、分布の形は0が高まります。
逆にK=0.5で、100人いたとしてM=1とM=2だった場合は、購入回数は100回と200回で倍増します。
Kについては、森岡さんは「消費者のプレファレンスによって結果的に決まってしまうので、実際のところは我々が直接的にコントロールすべき対象ではない」と語っているように、あまり追うのもどうかと思います。
実際、Mに左右されるし、dがどれくらいなのかは、なかなか見えません。ただ上の計算式で「r=0」とすると、Mがわかっている場合はKも求められるので、結果的にdも求まります。
Mとは「自社ブランドへの1人当たりの投票数」のこと。つまり、戦略の本質とは、市場全体の中で自社ブランドへの1人当たりの投票数をどう増やすかを考えることに他なりません。
ZOZOTOWNにおける購入回数の分布は?
では売上を伸ばすためには、ファンを増やすプレファレンスの水平戦略と、投票数を増やすプレファレンスの垂直拡大、どちらを選ぶと良いでしょう。
言うならばファッションの総支出に対してZOZOさんが占めている比率を高めるか、ZOZOさんで買ったことが無い人に買って貰う機会を
増やすか。
森岡さんは「プレファレンスの垂直拡大よりも、水平拡大の方が成功する場合が多い気がします」と述べます。次のように述べられています。
どちらがもっとMが増えるのかを計算すると、水平方向が簡単である場合が多いのです。主な理由の1つは、既存のユーザーを深堀りするよりも、その外を耕す方がマーケットがずっと大きい場合が多いからです。
考えてみるとそりゃそうで、ZOZOさんで買ったことがある人の数よりも、買ったことのない人の数が圧倒的に多いからです。ファッションのために服を買うという機会を投じているのに、赤玉に出会わなかった(ZOZOさんで買わなかった)人たちです。
あまり感覚的に話してもダメなので、数字のお遊びになりますが、ZOZOさんのMとKを求めて、購入確率の分布を求めてみましょう。
消費者がZOZOTOWNで服を買う頻度が3ヶ月に1回だと仮定します。つまり年4回です。その時のMとKはいくらになるでしょうか?
少し前のデータですが、この辺りを参考にしました。まぁ、だいたい3か月に1回なのではなかろうか。
https://www.myvoice.co.jp/biz/surveys/20311/index.html
Mは「N回中赤玉が出る平均回数」=N×θ/nですから、全体に対する購入した割合×平均購入回数だと考えれば良いでしょう。
19年4月時点で日本における15歳~64歳人口は7545万人です。インターネットにアクセスできる割合が仮に95%だとすると「全体」は約7168万人です。
年平均購入回数が4回だと仮定すると、IR資料でFY2018を参照にすると消費者は1回あたり約11,579円購入していると推察できますから、計算すると年間約698万人がZOZOTOWNで購買行動をしている計算になります。
その数字は「全体」の約9.73%ですから、×4すればMは0.39だと計算できます。買っていない層が約90.27%ですから、詳しい説明は省きますがKは0.05だと計算できます。
その結果、求まる購入回数の分布は次の通りです。
購入確率が1回は3.66%(約248.6万人)、2〜4回は3.48%(約249.1万人)、5回以上は2.60%(約186.1万人)と推察されます。
さて、ここで考えるに、売上を伸ばすのに最も手軽なのは、以下のどれでしょうか?
①ZOZOTOWNで買っていない6470万人へリーチして、1回買って頂く
②ZOZOTOWNで買っている698万人へリーチして、さらに1回買って頂く
③ZOZOTOWNで買っている698万人へリーチして、1回あたり買う量を増やして頂く
6470万人の年齢分布と698万人の年齢分布は異なるので、仮に20代〜30代だけを対象にするとすれば、実際には約2000万人にリーチすることになるでしょう。
「1回買って貰う」という施策に対して①と②のCVRが仮に同じだった場合は、①の方が約3倍件数は多いと考えられます。(言い換えれば、②の方がCVRが3倍高い施策があるのであれば、そちらを優先した方が良いのでしょう)
実は、①が実は最も手軽な施策なのではないでしょうか?
もっとも、この、数字が正しいかどうかはZOZOさんのみぞ知る…。
バイロン・シャープの「ブランディングの科学」では、以下のように述べられています。
ブランドは成長しながら、まず、多くのライトユーザーを取り込む。ライトユーザーは成長すると分析期間中に少なくとも1回以上の購入を行うようになる。そしてこれらのライトユーザーが市場浸透率指数に影響を与える。ヘビーユーザーもその多くがさらに頻繁な購買行動を起こすようになるが、平均購買率は全体的にはあまり変わらない。
(略)
通常、マーケティングが成功して売り上げやマーケットシェアが伸びているとき、そのブランドは、今まで以上に多くのヘビーユーザーとメディアムユーザーを獲得し、それ以上に多くのライトユーザーを獲得する。これは、ブランドの成長を継続的に維持していくためには、マーケティング戦略全体が最終的にはそのカテゴリー全体の消費者に到達しなければならないことを意味している。
すなわち、同じKのときMを高めれば自然と購入回数が高まると同義と考えれば良いでしょう。つまり、Mを高められるか、プレファレンスを高められるかが重要な鍵を握っているのでしょう。
その意味で、この前のZOZO歌謡祭はめっちゃ良かったですよね。話題になったし、普段リーチできていない人にリーチできたのでは。
歌い手の皆さんも、ZOZOのメインユーザーよりも少しだけ年齢層高め(おそらく40代を狙っていたのでは?)の方が「えっ、あの人が!?」とリアクションする方々ばかりでしたね。個人的には、あと、さだまさしさんとか出て欲しかったかな。
ちなみに、「負の二項分布」の計算式は、以下の授業で学ばさせていただきました。めちゃくちゃ参考になります。皆さんも1度、講座に参加されてみてはいかがでしょうか。
アイデア例1:考え方
前置きが長くなりましたが、ZOZOさんで1度も買った経験が無い人に買って貰うために、Mを高めるためのアイデアを考えてみました。
TrendbanKに掲載されている2件の消費者行動を紹介しました。2つの事象は、「アイデア量産の思考法」という書籍に載っている事象だったので、そちらを使ってみました。
今回紹介しているようなユニークな消費者行動が100件掲載されているので是非手にとってみてください。
さて、このnoteを読まれている皆さんも色んな気付きがあったと思います。私からは2つの気付きを紹介したいと思います。
■服装でテンションを変えられる
「性格に反して大人っぽく見える」「攻撃力の高さを追求した服装」という発言から、服装は人格を変えて見せ、心持ちや振る舞いを変えてくれると分かる。選ぶ服の色や種類によって気分がに変化をもたらす効能は、心理学では「気分一致効果」と表現されている。
https://successbeginstoday.org/topics/46
■服装は「集団への帰属意識」を表している
社会人として見せたい・見られたいという気持ちから、自分が本来は着ないであろう(あるいは着たくない)服装で、社会人として振る舞う意識が垣間見れる。服装は「集団」を代表する表現方法だと言える。
相手に与える印象をコントロールする服装の心理効果を研究する「服装心理学」の研究が進んでおり、2013年には(財)日本服装心理学協会が設立され、服装に関する特に心理面についての学術的研究が行われてる。
https://www.forstyle.biz/fashion-psychology/
制服なんかは、集団の帰属意識の代表例ですよね。ギルド集団は、似たような服装を着ることで、どの集団に属しているかを見極められる。RPGで勇者をなぜ勇者と見分けられるのか? それは勇者の格好をしているからです。
この2つの事象から「個性を発揮する」という今までのファッションの充してきた普遍的な欲求に対して、「服装に逆に縛られて役割を楽しむ」という欲求が実は一定のニーズがあるのにアパレルメーカーは充せていないのではないかという仮説を立てました。
制服といえば、ニューヨークを拠点とするエンジニアドガーメンツが2014年にNY一風堂の制服を製造したのは、あまりにも有名です。
2019年秋冬のユニクロフリースは、エンジニアドガーメンツとのコラボなんですよ。これマジかっこいい。以下URL参照ください。
https://www.uniqlo.com/jp/ja/contents/engineered-garments/19fw/pc/
企業・工場の制服=機能性重視でダサいというのは思い込みである、と思います。制服を作るメーカーにファッション性が欠けていたことが原因で制服が忌み嫌われていただけで、本来は「仕事をするONモードになる」という役割を担う制服の可能性はもっと拡張できるのではないでしょうか。
ちなみに、ユニフォームの市場規模は約5000億円、うち仕事関係は90%強。そんなあるんだ?って感じですよね。
ZOZOさんにはPBがありますし、ZOZOSUITを使ってそれこそスーツ=制服を製作することだって本来はできるはずです。
アイデア例1:「ZOZO PRO UNIFORM」
「楽しく働くためのプロフェッショナルウェア」がもう少し増えても良いのではないでしょうか。
ワークマンなんか、職場での機能性を求めた服に対してファッション性を追求したことで大きく可能性を伸ばしました。プロフェッショナルウェアの可能性は、本来はもっとあるのではないでしょうか?
オシャレのために服を買って、個性を発揮する。決して間違っていないと思うのですが、そこにギルド特有の「機能性」と、ユニークな「ファッション性」を求めても良いような気もします。
チョークを使う学校の先生用に粉が付いても直ぐに取れる服。PC画面を覗いてばかりで姿勢が悪くなるエンジニアに合った服。重い荷物を持ち運ぶホワイトカラーに合った服…。
実はみんな、役割に合致する服を求めているのに、仕方なくスーツ着ているのではないでしょうか? それがもしZOZOTOWNで売られていたら、買う理由になるのではないでしょうか。
アイデア例2:考え方
TrendbanKに掲載されている2件の消費者行動を紹介しました。
このnoteを読まれている皆さんも色んな気付きがあったと思います。私からは2つの気付きを紹介したいと思います。
■地元への愛着と誇りと安心感
「お祭りのために一丸となって取り組む」という発言から、地域とのつながりへの深い愛着と誇りを感じ取れる。2013年に出版された「地方にこもる若者たち」(朝日新書/阿部真大著)で、若年層の地域・地元愛は近年顕著な傾向にあるとわかった。
地元愛は「地元」のものとは限らない。近年、地域の祭りを活性化させるために、域外の若者を受け入れる自治体が増え、参加者も「地元の人と一体感を味わえて楽しい」と感じている。
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO90754950Q5A820C1TZD000/
■自分の公共スペースを広げて得られる心のゆとり
「知らない人も一緒に散歩」という発言から、地元だからこそ警戒せずに安心できる可能性を読み取れる。地方出身の20-29歳の8割以上が「地元が好き」な理由として、「懐かしくて、ホッとする」「帰省するたびに気遣いなしで友人と話せることがうれしい」といった理由がある。
https://irorio.jp/eika_k/20130626/65992/
2017年に出版された「マイパブリックとグランドレベル」では、公共に参加するのではなく、自分の周りに「マイパブリック」を作り、そのスペースに来てもらうという生き方を提言している。
知らない人と一緒に散歩するなんて身の危険しか感じないのですが、きっと友人の友人という意味なんでしょう。じゃないと本格的に怖い。
この2つの事象から「洗練された都会の情景」という今までのファッションECサイトが充してきた普遍的な欲求に対して、「気取らない地元ならではの安心感」という欲求が実は一定のニーズがあるのに、ファッションECサイトは充せていないのではないかという仮説を立てました。
最新のファッションを全国で一律に流通可能、いつでも、どこでも、だれでも、ダサくない服を手に入れることができるのがファッションECサイトの特徴です。だから都道府県単位で見比べると20代〜30代の人口比に合致するはずなのですが、私の分析での経験上、なかなか一致しない。なぜか、都会の比率が高まってしまう。(デジタル全般そうなっている…?)
2018年10月時点での各都道府県における15歳〜39歳の人口計を円グラフで表現する(右)と、ZOZOのIRに掲載された会員地域分布(左)と見比べてみると、やはり都会の方が多く出てしまいました。
地方にECサイトが浸透していないというより「忌避感」みたいなのがあるのではないか…という仮説を持っています。「私のサイト」というより「都会の人のためのサイト」と思われているようです。
アイデア例2:「ZOZO LOVEs JIMOTO」
ZOZOといえば千葉愛で有名ですが、「地元を愛する心」自体をもっと応援する取り組みができるのではないでしょうか。
例えば、都会にもハイブランドにも興味が無く、地元愛・郷土愛が根強い消費者層をターゲットにした品揃えって本当はできるはず。
大量生産されていないけど地方では有名な小物…私の地元・大阪だったら牛乳石鹸やウタマロ石鹸なんか、もっともっと売れても良いのに!と思っています。
ZOZOというプラットフォームを通じて地元産品が買える座組みが整えば、それは野球場やサッカー練習場のネーミングライツ取得などの地域活性化施策とほぼ同義なのではないでしょうか。
アイデア例3:考え方
TrendbanKに掲載されている2件の消費者行動を紹介しました。
このnoteを読まれている皆さんも色んな気付きがあったと思います。私からは2つの気付きを紹介したいと思います。
■「年相応に魅力的に老いていきたい」という欲求
若かった頃のピークの自分を意識して、そこからぶれないことで、老いても魅力を失わない自分でいたい、と考えているのではないか。
「何歳に見られたいか?」というアンケートで、60代以上のシニアになっても一番多いのは、「年相応」。老いることを受け入れ、それでも魅力的でいたいという欲求がうかがえる。
https://womanslabo.com/20160901-4
■最新の情報を得るために、緊張感をもつ
シニアの情報への感度は上がっており、スマホ、SNSなど様々なツールを駆使し、買い物やその他の生活情報を得ている。
https://dentsu-ho.com/articles/6153
母親からの贈り物を「趣味に合わない」「流行遅れ」と感じている娘世代は少数で、母世代のファッションセンスが、娘世代とも大きくは違わなくなっている。
https://www.kurashihow.co.jp/markets/10753/
この2つの事象から「ある特定の年代にフォーカスする」という今までのファッションECサイトが充してきた普遍的な欲求に対して、「全ての年代に馴染んでいく」という欲求が実は一定のニーズがあるのに、ファッションECサイトは充せていないのではないかという仮説を立てました。
「全ての年代に馴染んでいく」という欲求を一番満たしているのは、実は楽天なのではないでしょうか。
ダサくて、とりあえずごった煮で色んなものが売っていて、でも買われてしまうのは、ZOZOさんのように20代〜30代前半に特化していないからではないかと考えています。
そういえば、この前に渋谷〜表参道に行ったら、楽天の冠をつけてファッションウィークの宣伝がここかしこで行われていました。楽天=ダサい、眼中に無いという状態を覆そうと必死だな、と思いました。嫁は「楽天、うわダッサい」と酷評しておりました。
とりあえず面を取って、そこから深めていくか。或いは深溝を極めてから面を広げていくか。どちらが良いんでしょうかね?
アイデア例3:「ZOZO MATURED」
40代〜50代向けという表現では無く「MATURED(成熟した)」と表現し、サブドメインに誘導すれば棲み分けができるのではないか…と思うのです。
あるいは、現在は20代のモデルがメインですが、それぞれ40代、60代とモデルを変化できたら面白いと思っています。
表参道を歩いていて、たまに「この人、明らかに60代に見えるのに、めっちゃオシャレやん!」という人がたまに居てますよね。そういう人は高齢層向けの服を着ているかと言えば決してそうではない。MARNIとか、Y-3とか着こなしている。
私たちは自然と服を20代向け、40代向けとセグメンテーションしてしまっていますが、着こなしさえ分かれば、年齢って本当は関係ないのではないでしょうか?
MATURED世代だってZOZOを使う。
そういうプロモーションだってあるのではないでしょうか。ぜひ明石家さんまさんにアイコンになっていただき、服を着こなすTVCMと、前澤さん剛力さんさんまさんのコラボTVCMを見てみたいと思う次第です。
#アイデア量産 は、あなたの脳を柔らかくする
「ファッションECサイトの売上を伸ばすために何か良いアイデアない?」と言われたら、今回紹介した3つのアイデアが「正解」では無いにしろ、こんな内容が10個ぐらいポポンと出るのが理想ではないか、と思うのです。
「誰向けに?」と考える前に、事前にデータを読み込んで「買った経験が無い人に買って貰う」という切り口が発見できればなお良しではないでしょうか。
最初は苦戦するかもしれませんが、常日頃から消費者行動をストックしていれば、だいたい10分~15分ぐらいで最後までストーリーを描けるでしょう。
(実現性の可否はおいておいて)アイデア量産できるヤワラカ脳に変わるためには、訓練や場数も必要だと思っています。
今回紹介した消費者行動以外に、「アイデア量産の思考法」には様々なユニークな行動が掲載されています。
本の帯には「話題の有名企業が続々採用」ということで、キユーピー様、ポッカサッポロ様、モランボン様、WUNDERMAN THOMPSON TOKYO様の社名を掲載させていただいております。
すでに、これらの企業様は「アイデア量産の思考法」を取り入れ、実践し、ポンポコポコスカとアイデアを出されているんですよね。
まさにこのnoteで書いたような、消費者の行動から欲求や充たされた(充たされない)心を読み解き、自社商品で埋める方法を考えられているんです。
ちなみに、この本に掲載された消費者行動は、全てパクっていただいてもかまいません。Twitterに本のキャプチャを撮って頂いてもかまいません。
「何か良いアイデアないか?」と言われても浮かばないこの時代、消費者行動を観察してアイデア量産していきませんか?
1本書くのに、だいたい3〜5営業日くらいかかっています。良かったら缶コーヒー1本のサポートをお願いします。