元宗教二世の駄文-一年経って思うこと

安倍元首相銃撃事件から約一年。事件直後に考えていたことが徐々に整理されたり変化したりしている。

この漫画を描き始めた理由は、「宗教二世のことを知ってもらいたい」「今悩んでいる宗教二世がいたら、少しでも客観的に現状を捉えられるよう助けになりたい」。この二点だった。重要なのは攻撃や暴力ではなく、軽いテイストの四コマ漫画で伝えること。そうすることで読んでくれる人の抵抗が少しでも軽減されればいいなと思った。同じような願いを込めた宗教二世の体験談、創作物は過去にも沢山あっただろう。非力ではあるが自分もそこに加勢したいと思った。

しかしこの漫画を書き始めて約一年後、山上容疑者によって日本中が宗教二世の問題を知ることになった。連日、宗教問題や宗教二世問題が報道され、現政権の腐敗した部分が表に出始めた。この文を書いている間にも、元統一教会だけでなくエホバの証人の元信者を支援する弁護団が動き始めたり、当たり前のようにテレビで活躍していた人が元統一教会を擁護していたと凶弾されたりしている。
この約一年間、ニュースを見ていてとても気持ち良かった。自分が願っていたことの第一歩目が始まった気がした。山上容疑者に対して当時の私は「よくやってくれた!!」だったし、今でもそう思っている。

でも一つだけ腑に落ちない点がある。
みんなの意識の変化のきっかけが「暴力」だったことだ。
「人に話を聞いてもらう時は肩を叩いても無駄だ。頭をぶん殴らないと」
大好きな映画に登場する台詞だが、まさにその通りになった。
次から次へと進展するニュースに、こんなに簡単に人の意識は変わるものかと驚いた。
暴力はいけない。みんなわかっていることだ。でも暴力がないと変われない。もし今回の事件がなくても、いつか自民党から元統一教会は排除されていたかもしれないし、カルト宗教の規制が強くなっていたかもしれない。でも早急に問題を解決したいなら、最善の方法は暴力だ。
これまで自分が悩んでいたことが、こんな簡単に変わっていくなんて。こんな簡単に大多数の人の意識を変えてしまうなんて。
それってもう、暴力でいいんじゃない?

「ペンは剣よりも強し」という言葉を、表現者のはしくれとして努力しているつもりだった。
でも現実は暴力で簡単に変わってしまう。
そんな世界に嫌気がさしております。
人間に期待するな。明日も頑張ります。

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