ディアボロの力学的理解-0. 導入

ディアボロの動きは初めて見ると意外なものばかりで、正直何が起こっているのか分からない人がほとんどです。これは中上級者になっても同様で、難しい技を見て真似しようとしても、大抵なぜか上手くいきません。色々な動きを試して、上手くいく瞬間を探していって、動きの精度を上げていって、長い練習の末に習得するのが普通です。なぜ出来るようになったかは、思い返してみると「色々やってみてたまたま上手くいった」、という場合がほとんどです。ディアボロは見ただけで理解できるほどシンプルではなく、「こうするとこうなる」という経験の積み重ねによって技の体系が形作られてきました。

しかし、こういった経験的・感覚的な理解に頼っていると、新技の考案や理解が難しくなりがちです。例えばマジックノット系の技は紐の絡まりを理解しないと、単なるコピー以上のことはできないでしょう。

そこで、右巻き左巻き、外巻き内巻き、などの考え方が発達していて、今ではたくさんの技が生まれ、アレンジを加えて自分のシークエンス中に技を組み込んだりも容易になりました。これらの考え方は2ディアや3ディアにおけるラップ状態のコントロール技術、例えばリキャプチャー解除やアームストール解除にも通じています。

PYGMIXさんの動画

また他には、ディアボロの回転維持についても、初心者はなぜか回転がすぐ止まり上級者はなぜか延々と技が続く、という経験をした人は多いでしょう。これも今では、加速方向・減速方向、ラップの巻き数などの理論に基づいて、技術の向上が可能になっています。例えば「加速方向の瞬間にはディアボロを強く押す」などの技術です。シークエンスの習得をめざす中級者にとって、この理論の有無は大きいでしょう。また、加速技の習得をめざす初心者にとっても、この理論を最初から知っていればより効率的なフォームが身につくと思います。

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自分はこういった理論をときには外部から取り入れ、ときには自ら感覚的に理解し、自分の技術に活かしてきました。しかし広大なディアボロの体系に対して、こういった技術理論は未だごくわずかです。たとえばハイトスやスティックリリース系といったメジャーな技についてさえ、感覚に頼らず解説するのは困難です。「右手で押す」「腕を広げる」といったあいまいな言葉では、その技はコピーできても、別の技に応用はききません。もっと適用範囲の広い方法でディアボロを理解したいところです。

このノートで自分がやりたいことは、ディアボロを力学に基づいて理解し、実際の技術に当てはめてみることです。じつは考えてみると、スティックの存在と摩擦を無視すれば、ディアボロに働く力は紐の張力に対する垂直抗力と、重力の二つだけです。シンプルなサンやハイトスは高校物理の範囲で十分考えることができるはずです。これだけでも、どのように軌道をコントロールしたらいいのか、回転維持に有利なフォームはなにか、など検討できそうです。またスティックは紐と同方向を向いている限り、質点近似してしまえば、重力と張力しか働かないので、運動方程式自体は高校レベルです。スティックリリース系についても、うまく近似すればスティックの回転速度のコントロールなど考えられそうです。

もっとレベルを上げると、ディアボロの回転は軸対称なので比較的シンプルな剛体の力学で記述可能ですし、傾きなんかもいけそうです。ラップ巻き数と摩擦力の関係についても、ある程度の近似の上でディアボロに対する圧力を考えればよさそうです。

色々書いてきましたが、結局は自分の趣味です。ディアボロの技に構造美を求めるなら、動作原理の理解は必須の要素としてついてきます。したがって、こういう事を考えるのが好きなんです。次回以降は本題について、気が向いたときに更新します。

それでは


記事は先行文献など特に気にせず適当に書いています。あくまで趣味の範囲です。力学も専門知識はないですし、当然厳密性は無です。あしからず

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