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【世界の野生生物保全】アジア・日本の野生生物違法取引の現状

野生生物の保全を考える上で重要な情報がインターネット上で公開されていますが、その多くは英語です。そこで今回は野生生物の違法輸送に関する興味深い資料を取り上げ日本語で要約しました。正確に知りたい方は、元の資料をご覧ください。

Runway to Extinction
このレポートは野生生物や野生生物製品を、生息地・生産地から消費地に空路で違法に輸送する密売人の運営について洞察を加えることを目的としている。輸送活動の最近の動向、そしてこれらの違法取引を可能にしている経路や輸送方法に重きを置いて報告する。

本記事ではアジア・日本、前回記事では世界全体の報告を翻訳し記載

[アジアの総括]
・アジアは飛びぬけて、野生生物やその製品の違法取引に対する需要が世界で最も大きい地域
・アジアの違法取引経路はすべての地域に拡大しており、世界中から生きた野生生物や製品を輸入している
・解析では中国が、差し押さえや違法取引そのもののすべての件数のうち大多数を占めていた。これは野生生物が多いことや効果的な関税審査、そして優れた報告体制があったためだと考えられる。
・アジアの野生生物の個体数が減少していることや、密輸ネットワークが需要を満たすためにアフリカ由来の種に頼っていることから、密輸されるアジア由来の種は減少傾向にある。
・アジアの種の個体数は減少しているものの、爬虫類や鳥類、センザンコウ、海洋生物のアジア内での取引はいまだに多いままである。象牙やサイの角、哺乳類の製品もまた地域間で違法取引がされている。これは他の地域から輸入し、輸入した地域内だけで取引をおこなう東・南アジア地域での野生生物マーケットでの割合が占めているのだろう。
・しかし、中央・東南アジアにおける爬虫類の密輸はいまだ多く普及している。

[日本]
 アジアの違法な野生生物輸送の差し押さえ件数は、中国、ベトナム、インドネシア、タイ、インド、マレーシア、フィリピン、パキスタン、台湾、シンガポール、日本の順に多い。日本は、その中でも鳥類と哺乳類の輸送で差し押さえが多い(資料内図2参照)。資料内データでは、日本は比較的密輸の差し押さえが少ないが、動物や野生生物製品のより大きいマーケットがあると考えられている(例えば象牙やスローロリス、ウナギ)。多くのNGO団体や報道機関はこれまで、日本の野生生物規制(特に象牙に関する規制)において容易に利用できる抜け道があることや、日本が野生生物取引についての関心がないことを訴えている。野生生物取引規制の実施を行うための法施行や野生生物の違法取引を妨害する意思の欠如が、日本における少ない差し押さえ件数につながっている可能性がある。また、野生生物やその製品の密輸を取り締まる際の違法・合法の混乱が差し押さえを妨げている可能性もある。

 違法な野生生物取引が行われた国別データでは、アジアの国を目的地として輸送された事例が全体の輸送数の66%、376件であった。日本でも、輸送される野生生物の原産地や経由地となっている輸送は少なく、目的地となっている野生生物取引が大部分を占める(資料内図4参照)。

 2016年1月にフィリピンのニノイ・アキノ国際空港の職員が、47もの希少種の輸送を差し押さえた。この希少種には、メガネザル、ヘビ、オオトカゲ、ホカケトカゲ、ワシミミズク、コノハズクが含まれていた。これらの生物は水生植物として申請され、発砲スチロールの箱に入れられた状態で日本に密輸されるところであった。差し押さえ後、犯人がフィリピンの同様の空港で2015年1月に野生生物輸送でお金を受け取っていたことがわかった。その後の調査で、ある男性空港警察官が空港内を行ったり来たりしており、また輸送のために貨物を運んでいるのを見つけた。つまり、空港警察官という立場を使って、複数のフィリピン由来の野生生物を日本へ密輸するのに加担していたことが判明した。

 また差し押さえのデータから、アジアの野生生物マーケットではアジア原産の動物やその加工製品を売るだけでなく、アジア以外の原産の野生生物の製品も取引され、アジアに輸送されていることがわかった。最近のいくつかの差し押さえ事例により、日本とタイ間での生きた動物の取引にバンコクの野生生物マーケットが重要であることが分かった。

事例 
例えば2017年9月に、お金を受け取ったタイの関税職員が、タイ国際航空でバンコクから日本に野生生物を密輸させた。タイの職員がのちにその犯人を特定し、フェネックとトビネズミがスワンプール国際空港で荷物の中のスーツケースに隠されていたことがわかった。この2種はどちらもアジア原産ではなく、アフリカ北部の砂漠地帯に生息する種である。

 加えて、2017年の2月から10月にかけてバンコクの関税職員が日本に向かう少なくとも4件の密輸を防いだ。ほとんどがスーツケース内に隠されたケージに入れられていた。

事例 
2月の最初の差し押さえでは、57歳の日本人男性であるKazushi Yamamoto容疑者が荷物内のケージと箱の中にカワウソ12頭、フクロウ5羽、タカ3羽を密輸しようとして、バンコクのドンムアン空港で逮捕された。この容疑者は日本でペットとして育てるためにチャトゥチャック・ウィークケンド・マーケットで購入したと答えていた。

事例 
6月に、42歳の日本人男性がスワンナプール国際空港で止められ、11頭のカワウソの幼獣がスーツケースに隠されていたことが見つかった。この男性も同様に、日本でペットとして飼うためにチャトゥチャック・ウィークケンド・マーケットで購入したと答えていた。

事例 
10月にドンムアン空港で、22歳の日本人女性Kaede Yamaguchi容疑者が成田行きの飛行機でスーツケースを預けていた時に職員に止められた。職員は、10頭のカワウソの幼獣がスーツケース内のバスケットに入っていることを見つけた。この容疑者は、チャトゥチャック・ウィークケンド・マーケットで売られているカワウソを可哀そうに思い、日本に連れて帰りペットとして育てようとしたと職員に話した。

 これらの差し押さえから、日本でのペット取引におけるエキゾチックアニマル、特にカワウソの需要があることがわかる。そして、チャトゥチャック・ウィークケンド・マーケットがバンコクでの野生生物違法取引の中心となっていることも明らかとなった。

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