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胃袋

君が今までで1番辛かったことは何か。

まぁ正直なところ、何であろうと知ったこっちゃない。
私は脳がないため想像力は皆無、心がないため自分と主人以外に興味を持つこともできない。
こういった文章は最初に問いかけることで読み手を引き付ける、と習った記憶がある。
だから問いかけたにすぎない。

以上、5行に及ぶ文量を使ってでも伝えたかったのは
私の話を蔑ろにしないで欲しい!と心の底から思っていることだ。
私に心はないが。
そして、長々と自分の話をすることが好き、ということも。


どの主人の元に配属されるかで、私の人生は大きく変わる。


私は、仲間に迷惑をかけることを何より嫌う。
以前私に遺伝子の変異が見つかり、主人の元を去らなくてはならなくなった時は本当に辛かった。(断腸の思いと言いたいが、それはややこしい!)
私が抜けることの損害の大きさは、脳がなくても分かる。

抵抗の甲斐も無く医療廃棄物として処理され、今の主人の元に生を受けた。


今の主人はまだ幼く、私の業務は主に2点。母乳の処理と私自身の拡大。
各部署に迷惑のかからぬよう、最大限のパフォーマンスを尽くす日々だ。

各部署にはまだ伝えられていないが、私には野望がある。


今の主人を大食いに育てたいのだ。



恥ずかしいことに、私は俗に言う’’大食い童貞’’である。
数多の輪廻を繰り返してきた私だが、未だに先天性大食いのご主人には配属されたことがない。
経験の豊富さが自慢の私にとって唯一の、大きくて小さくて中くらいのコンプレックスだ。もう一度言うが、唯一だ。馬鹿にしないで欲しい。

研究によれば大食いには二種類ある。(ソース不明)
「先天性大食い」と「後天性大食い」である。

淡い期待を抱いてはいたものの、残念ながら今回の主人は先天性大食いではなかった。

だから、後天性大食いに育てたいのだ。努力するほかないのだ。

大食いの主人に育ったら今の主人は月齢の割に送られてくる母乳の量が多いような気がする。頼むから、思い込んでいるだけだろうなんて言わないで欲しい。
このまま私が怠けずに処理と拡大を続ければ、大食いに育つかもしれない。と思うと心がときめく。

私に心はないが。



あとがき
あくまでも心はないと言い張る、頑固な胃袋ですね。どう考えても心ありますね。
私の胃袋は以前冷たいものの処理がド下手でしたが、かなり成長してくれました。幼い頃食べられなかったアイスもかき氷も食べちゃいます!
今は食物繊維の処理が特に上手で、各臓器との連携も文句なし、優秀です。
小言を言うならば、気まぐれにキャパシティが変化するところを直して欲しい。
聞こえるか〜私の胃袋〜


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書いた人:てぃん
ひとこと:最近しょうもないなぞかけを思いつくことが増えました。

WACODES

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