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【韓国ドラマのすごさ】「ムーブ・トゥ・ヘブン」「ただ愛する仲」~<エンタメ>と<社会性>のコラボ(その2)

ソウル高級デパート崩落事故が重要なファクターに

韓国ドラマ「ムーブ・トゥ・ヘブン:私は遺品整理士です」(2021年、全10話)の第8話で、(ミステリーの謎解きのような)ハッとする出来事が起きる。
 
今から28年前、1995年6月29日に起きたソウルの高級百貨店「三豊(サムプン)デパート」の崩落事故だ。
 
☛詳しくは<「避難より営業」、そして韓国・三豊百貨店は崩れ落ち、大惨事に>(2023/07/05 KOREA WAVE発信)https://search.app/fqqxwzfKDZo933mL9

この502人の犠牲者(重軽傷者937人)を出したデパートの崩落事故の直前、「ムーブ・トゥ・ヘブン」の代表者(演ずるはチ・ジニ)は少年の頃、幼い弟の誕生日プレゼントを買うためデパートに行き、その最中に事故に遭遇してしまう。
 
父親の虐待から幼い弟(成人後の演者はイ・ジェフン)を救い出そうとプレゼントを持って約束の場に迎えに行くはずだったのに、コンクリートのがれきの下敷きになって重傷を負ってしまい、弟との約束を果たせなかった。
 
そのことが兄弟の人生に暗い影を落とし、「約束を破った」と兄に憎しみを抱きつつ、弟は悪の世界で孤独に生きてきて――。

ドラマ「ただ愛する仲」も「三豊デパート崩落事故」を

韓国ドラマ「ただ愛する仲」(2017年、全24話=ネットフリックスほか配信中)も、「三豊デパート崩落事故」でコンクリートのがれきに埋まった少年と少女がともに救出され、二人とも事故のトラウマを抱えたまま社会人となり、ソウル再開発の建設現場で運命的に出会う、というラブロマンス劇だ。
 
若い二人は、新しい高層建築物の構造上欠陥のある箇所を協力して指摘しあい、「三豊デパート」の大惨事を繰り返すまいと必死に努力する。
 
この男女を演じるイ・ジュノ「赤い袖先」ほか話題作に次々出演)と、ウォン・ジナ「僕を溶かしてくれ」ほか出演)のデビュー間もない初々しい姿がいい。

https://www.netflix.com/jp/title/81500002

――韓国ドラマ(映画)のすごさは、当時のニュースフィルムや事故の再現シーンを挿入しながら、いまだに大惨事を忘れまいとする執念と、事故原因の追究という社会問題の核心をエンタメの衣に包みながら描きつづけていく、その姿勢にあると思う。
 
ヒトラーの蛮行と残党狩りを執拗に描きつづける<ナチス映画>のように――。

(つづく)


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