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【Jドラマ】「ブラッシュアップライフ」を観て「やっぱり猫が好き」を思いだした。

【↑トップ画像】YouTube配信中の傑作<「やっぱり猫が好き」お金のない週末>(1989/09/19放送)より

コメディードラマ「やっぱり猫が好き」と「ブラッシュアップライフ」はどこか似ている

「やっぱり猫が好き」というドラマは、深夜放送にもかかわらず人気があった。(1988年10月~1991年9月・フジテレビ系放送、三谷幸喜が途中から単独脚本)
 
ドラマといっても、毎回お題が決まっているだけで、起承転結のストーリーがあるわけではない。
それでも、おもしろかった。
 
――「やっぱり猫が好き」は、長女:恩田かや乃(もたいまさこ)、次女:レイ子(室井滋)、三女:きみえ(小林聡美)の三姉妹が、ポンポンと歯切れよく、自由気ままに、とめどないおしゃべりをするという、マンションのリビングルームを舞台にした“ほんわか系” “ゆる系”“脱力系”のドラマだ。

「台本はあるもののアドリブもかなり多く、その過程で急遽生まれた新しい設定なども存在する。また失敗やハプニングが起こってもそのまま放送されることも多く、男性スタッフの笑い声が時々入る」

WEBサイト<weblio辞書>「やっぱり猫が好きの概要」より。
サイトには三姉妹それぞれの人物設定が詳しく掲載され、これも副読本として楽しめる。

「やっぱり猫が好き」は三姉妹の織りなすトークだから<女子会>とは呼べないにしても、「ブラッシュアップライフ」のドラマ評を読み返してみると、ふたつの作品がよく似ていることがわかる。

(安藤サクラほか)夏帆、木南晴夏、黒木華ら豪華俳優が、たわいの無い、でもファミレスの隣の席から聞こえたら耳をそばだててしまうような会話を繰り広げるのがたまらない。

(2023/02/01朝日新聞「記者レビュー」より)

そう、「やっぱり猫が好き」「たわいの無い、でも……耳をそばだててしまうような会話」が繰り広げられるドラマだった。

バブル時代に制作されたドラマの社会性

ところで、最近、「やっぱり猫が好き」が、若い人たちに支持されているという噂を聞いた。
あれっ!? 35年前のドラマが? と不思議に思ったら、YouTubeで10本くらい見ることができ、なかには10万回ちかく視聴されている作品があることに驚いた。
 
「やっぱり猫が好き」の放送が開始されたのは1988年、ニッポンがバブル景気に浮かれているころだ。
 
TVドラマにしても観終わったとたん泡のごとく消え去り、ただただ“バブル消費”するだけだったように思うが、今ならもう少し味わうことができるのでは……そう思って、YouTubeで配信されている作品を観てみた。
 
そうしたら、面白くて二度楽しめたというだけでなく、「見つかったぞ/何が? 永遠が」(アルチュール・ランボー『永遠』)なんてたいそうなものじゃないけれど、「時代」がきちんと描かれていることの発見はあった。
(以下、書き起こし)

「やっぱり猫が好き」の「かや乃の悪いクセ」(放送日不明)より

――長女のかや乃は、妹たちと住むマンションに帰宅するなり、あたりの家財を蹴とばし、むしゃくしゃして、荒れている様子――
長女かや乃(もたいまさこ):(会社の)部長にガツンと言ってやったのよ。満座の前で恥をかかしてやった。
次女レイ子(室井滋):大丈夫なの? 明日から会社、行きづらくなるんじゃないの?
長女:私が悪いんじゃないもの。向こうが(会社に)行きづらいかもしれないけど。
次女:(お姉ちゃんが)行きづらくなっちゃうよ。会社は男社会よ
三女きみえ(小林聡美):(ブドウを買ってお詫びしようと買い物に出かけようとする次女に)ブドウで済むの、男社会って!?
――このあと、ブドウでなければ、メロンでは? キウイでは?…… と漫才のボケとツッコミまがいのやり取りが延々と続く――
      (「やっぱり猫が好き」から「かや乃の悪いクセ」の巻より)

次女役の室井滋の「会社は男社会よ」というセリフが利いている。
 
それを受ける三女役の小林聡美の「ブドウで済むの、男社会って!?」というのも鋭いツッコミだった。

それにしても、世間がバブル景気に浮かれているころ、「会社は男社会よ」というセリフがコメディードラマに登場していたとは、当時、男社会にどっぷりはまっていた身には、ちょっと衝撃だった。
 
(つづく)


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