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武道の呼吸法5

(承前)呼吸鍛錬法には、陽の鍛錬と陰の鍛錬がある。柔術とこれを簡易化した合気柔術(小野派系)は陽の呼吸法、江戸柳生系合気柔術(合気道の原典)は陰の呼吸法であるが、江戸柳生系の躰之術では最初に陽の呼吸法を習う。柔術を破る技としての位置づけがある江戸柳生系合気柔術を習うクラスの者は、小野派系の気合鍛錬法を早く飲み込んでおくためである。

座法の植芝合気道でいうところの呼吸法は左右別個に行う場合もある。両手取りに対して、左腕は伸し右手は手首を返して外から巻き(引っかけ)倒し、左の腕を伸して相手を押さえる。これは既述のとおり座法の天地投げであって、このレベルの技法ならば呼吸は関係ない。これを呼吸法や呼吸投げというなら、入身投・四方投・小手返も全部呼吸投げになってしまう。呼吸と結びつけるというなら、動作との関連性を示す必要がある。
さて、この呼吸法だが植芝合気道でやっているのは、陰の捌きの一部である。本来の姿は…
  両手持ち座法
陽の捌き
 ①正面に突き飛ばす(「合気術-早島正雄の場合7」で照会した写真
           「合気術 裏技・金的突」参照)
 ②左右に崩しを入れ倒す
 ③真後ろに柔術第1か条居反のように捌く
陰の捌き
 ①正面に両手捌きで投げ
 ②ひじに手刀を当て左右に投げ
 ③両手を上げ綾として後方に投げ

呼吸投げには、表・裏、左・右の区別があり表裏一体の人間界と自然の呼吸の理合を覚えるものである。天と地の間に人間がある、という天人地の技なのである。(続)

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