「兵法百首」から読み解く「新陰流兵法」28
兵法は 敵にこそあれ 手前には 無しと思えば 自ずから勝つ
補足説明:兵法、普遍すれば人間世界の勝ち負けは、敵の有無とそれに対する自らの心得である、との箴言(しんげん)です。大東流では、敵の有無とは関係の無く自らの体の使い方を学ぶ柔術、敵との関係性の中で対応する合気柔術、これらを駆使して勝つ、ということでしょう。
なお、私見ですが、キリスト教文化圏では自己決定権はないと考えるのが基本ですから、日本の武術のようなアプローチには至らない、のだと思っています。
この歌を 詠みは書けても 易々と 我が兵法は 至らざりけり
補足説明:スポーツ武道はいわば若者のものですが、古武道(古武術)は一生のものです。現代であれば生涯楽しめる趣味です。比喩的に「死ぬ前が一番強い」と言われますが、そのような境地に達したいものです。
最後の補足説明:今回紹介した百首は、口伝(書伝)を覚えやすく和歌化したものです。一方、石舟斎の百首(今回は紹介していません)は、武士としての日常生活の中における兵法のあり方などを詠っており、竹田七郎(金春流家元)に送ったものの奥書には、「自分の子どもや極意をお目にかけた弟子たちは、この狂歌を忘れてはならない、分別・工夫することが第一である」と記しています。(完)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?