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無刀の位3

「無刀の極意」こそは、日本武術の真髄であるが、その基礎概念となる目的意識は「ただ強ければよい」「勝者こそ真の英雄」とする競技スポーツの思想とは関係のないものであり、かつ、競技スポーツこそが射幸心を強める危険思想を媒介補助するものと考えられる。

格闘技の発達過程を欧米の例に求めれば、遊び・娯楽から進化した競技スポーツといえる。一方「生きしからずんば死」を選ばねばの悟りの境地から仏法思想を導入したのが日本武術。これらは目的意識に大きな差があり互いに相容れないもので、そこに大きな格差があることは明確である。ただ、昭和初期に競技スポーツの闘争本能を巧みに利用した日本軍閥が育てた武道思想は、武術の本質を乱世武法に逆戻りさせてしまった。

明治維新以降、大衆的スポーツ武道として柔道・剣道が登場した。疑似武道の実存のまま、闘争本能をかき立てる競技スポーツは欧米の体育理論をそのまま受け入れたスタイルで学校教育にも取り入れられているのが実情である。精神と肉体の一致を目的としない競技スポーツで育てられた若い人たちの行動理念はどうだろうか?

競技スポーツの最も盛んな米国の青少年問題は、戦後米国式の競技スポーツをそのまま無批判に受け入れた日本の若者たちの存在・行動理念に大きな影響を与えた。「根性・鍛錬・スピリットファイト」これだけで育てられる競技スポーツの実情はどんなものであろうか。未来を担う若者のために深く反省と研究をしなくてはならない問題である。

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