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「合気道の極意でビクともしない一本足」(下)

(承前)荒川コーチや巨人軍の野球選手を指導された合気道総本部師範部長藤平光一九段は言う。
「研究心の強い人ですなア、荒川さんは道場に来ては『今のは、気が入っていない。』とか『ここにいらない力が入っていた』とか言って、熱心な方です。一時は大毎(毎日大映オリオンズ)の人たちがよく来ましたが。最近は巨人の人を連れてきます。広岡さん、王さん、国松さん、坂崎さん、安原さんなんか来てやっています。広岡さんは天才派ですね、3日ぐらい通ってだまって見ているだけでした。やるのか、やらんのか見ていたら、ふとやりだしたのですが、覚えるのが早かったですね。」
そして合気道と野球の交流関係を「道は誰でも行けるものです。ゴルフでも、踊りでも、お百姓でも『気の流れ』に関係があります。お百姓がクワを振るのを見ていると、実に自然で力を入れていない。野球でもそうです、フォームはそれぞれの人の特徴がありますが、それにあった一番自然な姿をとればいいのです。」

解説 後に心身統一合気道の創始者となる藤平光一氏の教えが、よく現れた記事です。「気を静める」「力を入れていない」「気が入っていない→気を入れる(出す)」とあり心身統一の四大原則とされるものがすでに示されています。藤平氏が監修した「氣をだす合氣道(丸山維敏著)」によれば、「氣が出ている」と信ずれば、氣は出ているのであり「信は力なり」といわれるゆえんである、とあり、姿勢・技の解説には、術理ではなく氣を具体的なイメージとして活用・説明しています。例えば、「折れない腕」を作るには、自分の腕を消防車のホースと考え、火事の時にそのホースから水がほとばしり出るように、自分の体内より腕を通じて心の力が遙か彼方へほとばしり出ると考えると、よい。心がほとばしり出ると考えることを「氣をだす」という。また、四方投ではキャッチボールをするように手を掴むとよい、などです。
また、「天地の理を学び実行するので、逆手を用いてよいはずがない。小手返、二教、三教等必ず曲がる方へ曲げる順に気をつけていただきたい、そうあってこそ健康法になる。」とあります。ここに武道ではない合気道の姿があります。

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