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極意秘伝のはなし11

この道場で門弟一同に対してあいさつを行った際、私の締めている赤い帯を見て不審に思った門人から「柔道はブラックベルトが最高であるのに、赤い帯は何を意味するのか、その位は?」と尋ねられた。私もこの質問が出ることを期待していたもので、早速次のように答えた。
「黒い帯は武道を本格的に修行する資格のあることを象徴するもので、赤い帯は多年にわたり修得した上で、危険を他人に及ぼさず、自分も危険を自覚して修行するための危険信号の象徴である。したがって、不時の損傷の場合に、応急の処置ができる技術を持つことを意味している。なお、帯地の赤色は赤十字マークに通じ、博愛をも意味するものである。そしてこの赤帯は、武道の奥義は活殺自在、手随心転、法従手出にあり。」
この説明によって、彼らのスポーツ柔道の観念に新たな見方を加えるよう啓発してきたつもりである。

また、日本館における演技を連日参観に来ていた米人のオステオパシー関係者は、柔術の演技中に行われた脱臼の整復法や鍼灸の術技を見てすっかり感心して、私を自宅に招いたりして、整復術の修得に懸命となり、世界博覧会期間終了後に当分滞在して、日本整復法の講習を行うように計画されたほどである。このように海外における反響の事実をみても、日本の伝統ある遺産を見直し、ますます発展させなければならない時機が来ているのではなかろうか。
補足説明:オステオパシーとは、1874年にアメリカ人医学博士アンドリュー・テーラー・スティルによって創始された医療体系です。
オステオ「骨」、パシー「病理、治療」を組み合わせた名称です。オステオパシーは、骨格等の構造的な調整を重視し、それに生理的なマニピュレーション(徒手整復術)を行うことによって、自然治癒力を高めることを目的とする、とされています。
1965年中山先生の技術に驚嘆したのは、アッカーマン博士で、同博士の要求で数ヶ月にわたって日本武道医学(整骨・整体・活法)とアメリカのオステオパシーの学術交流(資料交換等)が行われました。
中山先生は次のように語ったそうです。
「Dr.アッカーマンは、『我が米国医学は400年の歴史の中で成長発達したものであるが、あなた方の国には数千年の歴史を持った医学がある。我々はその長い歴史の中で育った医学を習いたいのです。』と私を感動させてくれた。日本古医学の今後の方向をもっと深く考えさせられたのである・・・」

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