忍者ラブレター【#毎週ショートショートnote】
「ミヤモトトモコ様
はじめまして。私は葉隠カムイと申します。突然のお手紙に驚かれたことと思います。
井の頭線でお見かけした時から、あなたのお顔が眼に焼きついて、一時も忘れることができませんでした。
まずはお友達からお願いします。次お会いする時には、良い答えを期待しております。
心の下に刃あり、葉隠カムイより」
という奇妙な手紙が、智子の学生鞄から出てきた。何も知らない友人達が、キャアキャアと封書を開いて恋話に花を咲かせた。
文面からして、通学に使う電車で乗り合わせていた誰かだったのだろう。落ち度は自分にある。智子は下唇を噛んだ。
差出人「葉隠カムイ」からのお友達レターは、社団法人忍協会からの暗号通知で、忍資格認定試験の落第を意味する。最終試験で、智子は尾行忍から逃れることができず、鞄に文を直接差し込まれてしまった。
高校に通うという日常ルーチンを作ることは、忍にとってハンデである。協会発足以来、現役学生の合格者はまだいない。
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