白頭狸先生の舌鋒、倶利伽羅剣の如し(白頭狸先生著『京都皇統と東京皇室の極秘関係』を読む6)
引き続き白頭狸先生著『ドキュメント真贋』のお話となります。
大阪府岸和田市市制70周年記念「東洋の官窯陶磁器展」は平成4(1992年)10月24日から11月15日にかけて開催されました。
今回の開催にあたり、白頭狸先生はじめ「紀州文化振興会」では、誠意を尽くして最大限の準備をしており、顧問を務めておられた新屋隆夫先生に至っては、独自に窯業化学分野の老大家の先生方に懇願して、内密に研究会を開いて検討してもらうなど、慎重に慎重を重ねて展覧会に臨んでいました。
また開催前の10月には、北京大学の考古学系の教授をされている楊根先生が『紀州文化振興会所蔵陶磁図鑑』を見て「こんなものが日本にあったとは!ぜひ一度拝見したい」と直接和歌山市を訪ねて下さり、数々の名品を目にして絶賛され、口頭ではありますが鑑定書を出す約束も取り交わしました。
また展示会開催にあたり、白頭狸先生、楊根教授、新屋隆夫先生がそれぞれ講演会をおこない、長年の研究の成果や、陶磁器の歴史、新たな知見などを披露され、これからの陶磁研究の発展に大いに資することになる講演内容でした。
と、ここまでは順調な滑り出しで、読んでいるこちらも前途洋々たる明るい気分になりますが、ところが、ここから事態が暗転することになります。
異変の兆候があったのは10月29日夜、岸和田市郷土資料館館長の自宅宛てに、読売新聞堺支局の記者と名乗る者から電話があり、「展示品はすべて贋作であるとの専門家の意見があるので、市は再検討の上、展示会を中止せよ」とのことでした。
ですが、このような否定的な反応が出てくることは、すでに白頭狸先生が当初から予見していたことで、岸和田市から展示会の話があった段階で、開催の運びとなれば、必ずクレームや中傷が起きるであろうから、市側はひるまず毅然と対応してもらいたい旨は伝えてありました。
それほど今回公開することになる紀州文化振興所蔵の中国朝鮮陶磁は、これまで世に出回っていなかった逸品名品が多く揃っており、賛否を問わず大きな反響をもたらすことが予測できたためです。
しかし、予測外であったのは、その反響が「紀州家古陶磁」の真贋論争に発展し得るような学究的な否定や批判ではなく、議論の余地がまったくない、というより議論するつもりもない、露骨な中傷と妨害キャンペーンであったことです。
その第一報は11月9日、読売新聞夕刊の社会面トップに大幅な紙面を割いて報じられました。紙面には、
「秀作古陶磁展 看板に偽りあり」
明・李朝作品 模作の疑い
学者クレーム 市は鑑定拒否
の文字が踊り、これを読んだ一般読者は「紀州家古陶磁」は「贋作」であり、そのことを指摘された岸和田市は再鑑定を拒否して、不誠実な対応をしている、との印象を持つ文面となっていました。これは明らかな印象操作であり、”虚報”です。
ここからは”贋作キャンペーン”のオンパレードで、読売新聞、朝日放送を筆頭に、学者、学芸員、陶磁業者がスクラムを組んで連日の如く、あの手この手を使って一方的な「贋作」のレッテル貼り、「展示会中止」を強要します。
公正中立を大義名分に掲げ、世間に向かってもそのように公言している報道機関が、なぜこのような暴挙に出るのか、読めば読むほど腹立たしいことこの上ありませんが、一体何が腹立たしいのでしょうか。
まず、上からの命令であるとは言え、自分では何の咀嚼もせずに、そのまま伝達する新聞記者に腹が立ちますし、陶磁の実物を一切見ることも、主催側に問い合わせをすることもなく、単に写真を一瞥しただけ(人によっては見てもいない)で「贋作」と断定する自称”専門家”にも腹が立ちます。
何より腹が立つのが「贋作」を主張している側に、なんら明確な理由や根拠がないことです。つまり中味はまるでカラッポなのに、外面は自信満々に「贋作」を強弁する、その見えすいた虚勢の態度が腹立たしいのです。
これならば突然肩をぶつけて、因縁をふっかけてくるチンピラのほうが数段上質で、「顔が気にいらねエ」とか「なんかムシャクシャする」とか、それなりに理由があるわけですが、「とにかく贋作だから中止しろ」の一点張りで、何ゆえに贋作であると思うのか、また何ゆえに中止しなければならないのかの理由が一切ありません。
こちらが話を聞こうと踏み込んでも逃げるばかりで、だったらハナから喧嘩を売ってくるなと、これを怒るなと言うほうが無理な筋合いです。
こちらは真剣に相手と向き合っているのに、向こうは真剣に立ち合おうとしない、そればかりか、先に”剣”を抜いたのは向こうであるにも関わらず、そのあとは真剣な議論を交わすこともなく背中を見せて逃げようとしているわけで、これを卑怯と言わずして何を卑怯と言えば良いのでしょうか。その腰砕けの態度にも腹が立つわけでございます。
と本を読んでいる私でさえ、このような心情に駆られるわけですから、当事者として経験した白頭狸先生をはじめ関係者の皆様が憤慨するのは当然と言えます。ましてや四柱推命の命式に正義の地支「辰土」を二つも持つ白頭狸先生ですので、黙って見過ごすはずがございません。
ここからが本書『ドキュメント真贋』の読みどころ、白頭狸先生の本領の発揮となるわけですが、彼らの主張がいかに根拠のない虚言であるか、彼らの態度がいかに不誠実きわまりないものであるかを、彼らの新聞記事、ニュース番組、彼らとやりとりした電話および会話の内容、彼らの仕掛けて来たクレームや中傷、妨害行動を時系列に沿って取り上げた上で、論旨明快にその理非曲直を正します。
その舌鋒の鋭きこと、まさしく不動明王尊の倶利伽羅剣の如しで、相手の虚言と不誠実なる態度をことごとく粉微塵に破砕しております。なお倶利伽羅剣とは、不動明王尊の立像が右手に持っている剣のことで、三毒(貪瞋痴)を破る智慧の利剣とされております。
もう少し続きます。
頓首謹言
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