大人であることについて
大人であることはどういうことなのか。それは子供であるということである。
子供でない大人は存在しない。というか、「まだ自分は子供だ」と言い得る人間のことを、「大人」というのである。
大人にとって、最もほっとする瞬間が、「まだ自分は子供なのだ」と思わせてくれる瞬間であるのは言うまでもない。
本当に重要な瞬間というのはそういうものだ。大人の余裕はそうやって作られる。
子供であるという極めて危険な時期を通り抜け、本当の大人になったものだけが、この「まだまだ自分も子供だなあ」という不思議な感慨に至りつくのである。
子供にとって、自分が子供であるということは、実は最大のフラストレーションである。常に「いつかこの状態を抜け出さなくてはならない」という圧迫感と戦い続けなくてはならない子供時代は極めて過酷なものと言えよう。
その点、大人と呼ばれ、なんとか社会生活を営む術を得た人間には独特の余裕のようなものが生まれる。良くも悪くも全てを知ってしまっているわけである。いったん大人になると、ある程度自分が生きていくということに見通しが生まれる。そして、その場所でなんとか踏ん張るしかないということもよくわかってくる。そうした大人にとって、「まだ自分は子供なのだ」と思わせてくれる瞬間をいかに多く作れるかということが非常に重要だ。
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