復旦大学(Fudan University)について
中国の大学は、欧米に比べ、まだ日本人の留学先としては比較的マイナーなため、ご存じない方も多いかと思います。円安が進む背景や、中国の国際的な影響力の高まりから、今後留学を検討されている方のために、私の所属する大学について簡単に紹介したいと思います。
復旦大学とは
復旦大学は、1905年に設立された総合大学で、校名は中国の重要な古典文学の一つである『尚書』虞夏伝の「日月光華、旦復旦兮」の名句に由来しています。「日月光華」は、太陽と月の光り輝く様子や栄光を意味し、美しい景色や希望に満ちた未来を表現しています。「旦復旦兮」の「旦」は「太陽の昇る朝」という意味で、「復旦」は「再び明るくなる」という意味です。太陽が東方に昇り、新たな日が始まる様子を表現しています。この句は、古代中国の文学や思想において、新しい始まりや希望の象徴としてしばしば引用されるそうです。
復旦大学は、文理学部をはじめとする多数の学部・学科を有しています。2000年に、復旦大学は上海医科大学と合併して現在の医学部となりました。文学、歴史、法学、経済学、経営学、理学、工学、医学、公共衛生、情報科学など、さまざまな学問分野で質の高い教育と研究を行っています。現在、約3万人以上の学生が在籍しており、そのうち約15%は留学生です。また、復旦大学は世界約200の大学と協定を結び、交換留学プログラムなどを通じて活発な国際交流が行われています。World University Rankings 2024によれば、復旦大学は世界でトップ44位にランクインしています。
復旦大学MBBSプログラムについて
復旦大学では、国際的な教育を促進し、留学生を受け入れるために2008年秋から英語で行われる医学プログラムを開始しました。このプログラムは、高度な医学知識と適切な臨床技術を身につけ、臨床での専門性を向上させることを目的としています。卒業後は、MBBS(医学・外科医学士)の学位を取得し、USMLEやUKMLEなど様々な国の医師免許試験にも挑戦することができます。国際的な視野で活躍したい医学の科学と実践に興味を持つ学生にとって、このプログラムは魅力的な選択肢です。
MBBSプログラムの特徴
中国語と英語を習得できる学習環境:6年間を通して、すべての講義や課題は通して英語で行われます。また、日常生活、クラブ活動や友人との会話で中国語も向上することができます。最終学年には、一年間のクリニカルインターンシップがあり、学生の語学レベルによりますが、英語か中国語で医療従事者や患者さんとコミュニケーションを取ります。私は大学入学前にHSK6級(中国語の語学試験では最上級)を取得していたので、診療科にもよりますが、実習では7~8割は中国語を使い、医療者との会話では医学用語は英語を使っていました。
様々な国からの留学生と学べる国際的な環境:MBBSプログラムは、留学生のみで構成され、1学年が約40名の少人数制(女性7割、男性3割)です。1~6学年を合わせても日本人は数名程度しかいません。アメリカ・カナダ・ニュージーランド、オーストラリア、韓国、インド、マレーシア、インドネシア、アフガニスタン、ジンバブエなど、多様な国籍のクラスメートと一緒に学ぶことができました。2020年から2023年は新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、一緒に過ごせた時間は本来の予定よりもずっと短かったですが、異なる医療制度や医療の現状や課題などをディスカッションできたことは刺激的で楽しく、とても貴重な経験でした。
切磋琢磨する環境:復旦大学では、A(GPA=4.0)またはA-(GPA=3.7)の成績を取るためには、科目の総合点がそれぞれA(90点以上)、A-(85点以上)、かつ、専攻のトップ30%以上のみという規定があります。中国の大学では、大学院受験・診療科の選択・交換留学など様々な機会を得るために、GPAが重要な指標であるため、多くの学生が図書館や24時間の自習室で懸命に勉学に励んでいます。
充実した研究環境:学部生であっても、やる気と中国語の日常会話力があれば、関わることができる研究のプロジェクトは山ほどあります。授業後に教授にアプローチしたり、実習の指導をしてくれた医師の論文を手伝うこともあります。中国の大学病院の医師は、論文執筆のノルマがあり、臨床と並行して様々な研究を行っています。しかし、臨床業務が多忙なため、英語ができる学生に手伝ってもらいたいといったケースは多くあります。
多様な卒業後の選択肢:卒業生は選択肢は様々です。出身国・中国・欧米など行先は様々ですが、9割は自身が働きたい国の医師の試験をそれぞれで受験します。残りの1割は欧米か中国の大学院に進学します。MBBSプログラムの卒業生は、ほとんどが臨床に進みます。私たちの実習が行われる病院が外科に強いこともあり、実習後は外科に進みたいと考える人が多い傾向です。
学費がリーズナブル:年間75000元が学費です。1元を20円とすると、年間150万円です。決して安いわけではないですが、イギリス、アメリカ、オーストラリアなど英語で医学が学べる環境と比較すると、リーズナブルと言えると思います。
中国の文化や医療制度、公衆衛生上の課題や伝統医療も学べる:生活や実習を通して、中国の文化や医療を学ぶことができます。公衆衛生の授業では、中国の大気汚染や環境医学、日本ではあまり深く触れることの少ない寄生虫などの熱帯病、HIV/結核に関する授業があります。私たちはタイムリーに新型コロナウイルス感染症の第一人者の教授から最新の研究について学ぶことができ、貴重な経験でした。中国伝統医療も必修科目で、西洋医学とどのように統合していくかに関する研究は、非常に興味深く、マラリアの治療薬を成功例として、今後の発展が楽しみな分野です。
どんな人におすすめできるか
国際的に活躍したい
中国の文化/言語や社会に関心がある
留学はしたいが、学費を抑えたい
日本人が少ない環境で頑張りたい
変化に柔軟に対応できる
他の人と違う経験がしてみたい
自分で調べて、長期的に計画し、行動できる
自分の言動と行動に責任を持てる
あまりおすすめできないところ
中国で学ぶ目的がない場合は、授業や課題についていけなかったり、文化に適応できずに、1~2年目でドロップアウトしてしまう人が多い
卒業後、日本で働きたい場合は、日本人の先輩が多く、働き先の紹介や試験対策の情報が充実している中国語の医学部コースの方がおすすめ(中国の医学部は5年制がデフォルトなので、日本の厚労省の規定を満たさないこともあるので注意が必要)
多くは中国人の教授が英語で授業をするので、大学の授業で足りない部分を自習できる力が大事
利用できる奨学金が少ない、留学生寮が足りていない
中国語がゼロの状態で入学すると、授業・研究・実習・生活など様々な点で不利になることが多い
まとめ
中国の名門大学である復旦大学の英語の医学プログラム(MBBS)は、世界トップクラスの研究者や教育者、そしてグローバルで優秀なクラスメートと肩を並べて学ぶことができます。自分で積極的に道を切り開き、国際的な医師として活躍したい人には、うってつけの留学先です。
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