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ジュウ・ショのサブカルマンガマガジン

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マンガについてサブカルチャー的な視点から紹介・解説。 学術書とか解説本みたいに小難しくなく、 極めてやさしく、おもしろく、深ーく書きまーす。
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「うる星やつらが萌えの元祖」といわれる理由を語らせてくれ

「高橋留美子の『うる星やつら』が、萌えの元祖らしい」と聞いたとき、正直ピンとこなかった。「うる星やつら」の発表は1978〜1987年。しかしそれ以前にもいわゆる「萌えキャラ」は生まれている。 例えば日本初の少女マンガ・リボンの騎士は1953年に出ている。主人公のサファイアは両性具有であるがゆえに、かなりツンデレ。しかも女性兵士というコスプレ感も、今の萌えに近い。 セクシー系ドタバタコメディでは、1968年の永井豪「ハレンチ学園」がすでに存在し、PTAのおばさま方をめちゃめ

サブカルとアングラの違いとは|ヤバい世界について本気で考えてみる

「アングラとサブカルの違い」は一般のメインカルチャーで生きている人には理解し難いものがある。「いやいや、どっちも絡みにくいでしょ」とまとめてしまいがちだ。 しかし気をつけてほしい。アングラ畑で"毒"を撒布している人と、サブカル畑で"無駄"を耕している人は違う生き物だ。当人からすると「一緒にしないでくれ」と思っているパターンは結構ある。 アングラの人に「お前、ほんっとにサブカルだな」と安易に声をかけるのはマズい。「ちげぇよ。俺はアングラだよ」と血走った眼で返されるだろう。な

カリカチュアとは|日本漫画の原点となった「いじり」の芸術

旅行先で似顔絵を描いてもらったことがある方は多いだろう。そして「できました〜♪」と化け物のような絵を手渡された人もいるでしょう。「おいできたじゃねえよ」と怒っちゃった方もいるかもしれない。 似顔絵屋は基本的に写実では描かない。デッサンではなくエンタメである。なので忠実に似せる気なんてさらさらなく、超笑わせる気でふざけて描くのが彼らの仕事だ。 こうした表現を「カリカチュア」という。つまり対象の容姿の特徴や性格などを、これでもかと誇張して描いた表現のことだ。 カリカチュアは

ファム・ファタールとは|起源や言葉の意味、キャラクター紹介など

ファム・ファタール……それは美術、マンガ、アニメなどの世界で「男を惑わせる魅惑の女性」を指す言葉だ。本来の意味は「赤い糸で結ばれた運命の女性」となる。 「赤い糸」と書くとロマンチックに聞こえるが、いやいや、そんなに良いものでもない。もっと妖しくてキケンな存在であり、男はいつだってファム・ファタールの虜になって破滅してしまうものだ。 ではファム・ファタールとは具体的にどんな女性を指すのか。そしてなぜ長い間、クリエイターから愛され続けているテーマとなったのだろうか。 今回は

つげ義春をまとめ|ねじ式などの作品紹介・波乱に満ちた人生など

以前、好きな漫画ベスト5を書いた。 このときにパッと出てきたのが、つげ義春の「ねじ式」。パッと出てくる理由は「ねじ式」を読んだときの衝撃を今でも覚えているからだ。「メメクラゲ」に腕を噛まれて治療したいけど目医者しかなく、最終的に産婦人科医に嘘みたいな治療をされる、みたいな話だった。おもろすぎる。 完全にツボなのである。珍しいかもしれないが、個人的にこの話は涙出るくらい笑える。どんな思考をしてたら、このわっけわかんない話を描けるのだろうと、あれこれ想像した。つげ義春ってどん

アニメ・美少女戦士セーラームーンはここがすごい! 幻の原作や変身シーンなどを解説

「月に代わってお仕置きよ!」 1990年代当時を生きた方はもちろん、現代に至るまであらゆる女の子を魅了してきた決め台詞だ。 「月に代わって」ってヤバいですよね。月の仕事を代行してるわけだ。とんでもないスケール感のお仕置きである。私が敵だったら「まず死は免れない」と悟る。スライディング土下座決めて詫びる。 このセリフで有名な作品はもちろん「美少女戦士セーラームーン」だ。日本国民なら誰もが知っている超名作だろう。 「セーラームーン」は、まさにアニメの歴史を塗り替えた作品と

漫画雑誌・ガロを徹底解説!おすすめマンガ、代表的な作者一覧など

いわゆる「サブカルマンガ好き」のペルソナとは誰なのか。例えば諸星大二郎、伊藤潤二、大橋裕之、などなどのマンガを好む層は、どこが厚いのだろう。 さすがに中学生はまだ早い。高校生もまだ沼に浸かる人は少ないだろう。とはいえ就職すると、クリエイターなどの特殊な仕事じゃない限りは、みんな丸くなって、自分から情報を探らなくなる。 そう。サブカルマンガの濃いターゲットは大学生(青年層)だ。そして「青年がサブカルマンガを好むこと」を発見したのが雑誌・月刊漫画ガロである。前後の文脈は以下の

諸星大二郎について|経歴・暗黒神話・妖怪ハンターなどおすすめ作品・2021年新作レビュー

「諸星大二郎が好き」 もう、この言葉は私の周りでは100%言われるものだ。「100%」ってなかなか書けないよ? 超ハイリスクな言葉だが、いやでも本当に100%なのだから、胸を張って書ける。 「いくえみ綾のデリケートな人間関係が好き」という友人や「コナンの巧妙すぎるトリックが好き」という、まったく趣味の違う友人におすすめしても「すげえ面白かった」と興奮気味に感想を教えてくれて自発的に2冊目を買っていたりする。 もしかしたら「ワンピースの仲間観ってはんぱねぇよな!」とZIM

【相関図あり】カードキャプターさくらの恋愛観はもうほぼヒッピーです

元日からネカフェでカードキャプターさくら(クロウカード編)を全巻読んでぼろぼろ号泣した私です。いやホント名作過ぎるやろ。CLAMPやっぱすごい。アシ無しで描いてるのマジか。ちょっとペンが速すぎるよね。 しかしひとしきり感動した後、トイレに行く途中に「……いやちょっと待てよ」と気づいた。いや恋愛模様が自由過ぎるやろ、と。LGBTとかもうそんなスケールじゃないぞこれ。倫理観が爆死してるぞ。思考が完全にヒッピーだぞ、と。なんだ?友枝町は1960年代のカリフォルニアなのか?「あれ?

「100日後に死ぬワニ」のきくちさんにインタビューして気づいたこと

いや〜、100日後に死ぬワニ。大盛り上がりでしたな。作者のきくちゆうきさんもテレビ番組に引っ張りだこで、友人たちも「全然死ぬ気配ないね!これ!」と注目しているようで。ビッグウェーブがバーン!ときた感じでございました。 たぶんnote民の方々にもファンの方がいるのでは。クリエイターがアングラから地上に出ていく姿に、「すげぇ……かっこいい……」と感動を覚えた方や「けっ!くそつまらねえ!」とジェラシーが湧いた方がいるはず。何にせよ100日間毎日漫画を投稿したのは素晴らしいし、今後

「ボボボーボ・ボーボボの澤井啓夫の父は国文学者(名誉教授)である」というB級ホラー

「その人がどんなニンゲンかを知るためには、周りの友人を見るといい」とはシュルレアリスムの創始者・アンドレ・ブルトンの言葉だ。 わたし個人的にはその両親がどんな人かを知るといい、という説もまた信じている。人の脳みそは3歳までに形成されるらしい。また10歳までに感覚や価値観なんかが決まってしまうともいわれる。 今回は親が育てる環境と子どもの育ち方について「ボボボーボ・ボーボボ」の作者・澤井啓夫を例に考えてみよう。 ボボボーボ・ボーボボというこれ以上ないくらいのアホマンガ

江口寿史のイラストまとめ! 現代の美人画の歴史だろ

小学生のころは野球をしていて、ドカベンやアブサンなどの野球マンガを読んでいたんですけど、そのなかで偶然「すすめ!!パイレーツ」を買ってもらったのを強烈に覚えている。 いやもう何考えてたんおとん?ってくらい野球しないマンガ。ドカベン、あぶさん、すすめパイレーツで並べたら水島新司から殺されるぞ俺。 いやもちろん野球にはまったくいかせなかったのだけれど、登場人物の梶野望都に完全に一目惚れしたのは覚えてます。それから私は江口寿史が描く女の子に夢中なので、今回は自己満足的に江口寿史