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小さなドア【ちょっとこころが温まる話】


ある日、ねずみくんはうさぎくんと喧嘩をしました。

うさぎくんがねずみくんの手作り『マイ(米)の樹液漬け』を勝手に食べてしまったからでした。

ねずみくんはその夜、家のドアをどんどんと叩かれて目を覚ましました。

「こんな時間に誰ですか?」

ドアの前にいたのは配達屋のカラスでした。

カラスは言いました。

「うさぎくんが、熱を出したんだって!風邪を引いたんだって!
マイを食べすぎたんだって!うわー!ねずみのせいだ!ねずみのせいだ!」

騒ぎながら、カラスはどこかに行ってしまいました。

ねずみくんは不快な気持ちになりました。

「風邪?知るもんか。あんなやつのところ、見舞いになんて行かないからな。マイの樹液漬けを勝手に食べたのはうさぎだもの」

ねずみくんは家に入りました。

すると、机の上にある漬けたばかりのマイが目に入りました。

胸が痛くなってきて、ねずみくんは慌てて布団に入りました。


その頃、うさぎくんもねずみくんのことを考えていました。

「確かに、マイの樹液漬けを勝手に食べたのは悪かったよ。でも、あんなに怒らなくてもいいじゃないか。だけど、見舞いに来てくれないのは寂しいな。いや、いいさ。あんなやつ、来たって家にはいれてやらないさ」

うさぎくんはひとりぼっちでぶつぶつ呟くと、やがて寝入ってしまいました。


夢の中で、ねずみくんは真っ白なところにいました。

わたあめみたいにふわふわなものでした。

遠くには、うさぎくんが見えました。

いつもは大きなうさぎくんが、すごく小さく見えました。

「あれ、うさぎくん、何をしているのだろう。風邪寝込んでいるはずなのに」

ねずみくんは喧嘩をしていることも忘れて、うさぎくんに近づきました。

うさぎくんはなにやら、小さなドアを開けようとしているようでした。

ははん。
うさぎくんは体が大きいから、開けられないんだな。

ねずみくんはそう思ってドアの前に立ってみると、ドアはねずみくんより、一回り小さいです。

なら、しゃがんで通るだけさ。

ねずみくんは少し得意になって、後ろを振り向いて_びっくりしました。

うさぎくんがねずみくんと同じぐらいの大きさなのでした。

「うさぎくん!一体全体どうしたらこんなに縮んでしまうんだい?」

「さあ。ここは夢だからなんでもありなのかもしれない。僕にはさっぱりわからないよ。ねぇ、ねずみくん。このドアを開けるのを手伝ってくれないか」

「もちろん」

ねずみくんはうさぎくんの前に回ると、ドアの引き手を思いっきり引っ張りました。

「あれれ、おかしいな」

もう一度力一杯引っ張りますが、びくともしません。

「よっこらしょ、どっこいしょ」
「よーし、よっこらしょ、どっこいしょ」

二人は掛け声をしながらドアを引っ張りました。

でも、やっぱり開きません。

その時、急に強い風がビュゥーと吹いてきました。

ねずみくんとうさぎくんはドアに思いっきりぶつかりました。

すると、ドアがギギギィーと音を立てて開きました。

二人は眩しすぎて、目を開けられなくなりました。

そして、鶏が鳴きました。


次の日の朝、ねずみくんはすっきりした気分で目を覚ましました。

そして、作ったばかりのマイの樹液漬けを葉を織ったカゴに入れると、鼻歌を歌いながらうさぎくんの家に向かいました。

「やあ、うさぎくん!風邪は治ったかい?」

「ああ、絶好調さ!それより、君は昨日不思議な夢を見なかったかい?」

「見たけど、どうしてさ」

「いや、それがね、僕の夢に君が出てきたのさ」

「なんだって!僕の夢にも君が出てきたぞ」

二人は昨日見た夢についてしばらく話ました。

その後、二人は大声で笑いました。

「僕たち、喧嘩をしていたというのに、ずいぶん呑気なものだな」

「ドアひとつを開けるのにそんなに苦労していたとは」

「だが、これは何の意味があるのだろう?ねずみくん、ひとつ、フクロウさんのとこに行って聞いてきてくれないかい?」

「もちろんさ。マイの樹液漬けを持ってきたから、食べておくといいよ」

「ねずみくんの分は残しておくよ」

「いいや、全部食べてくれ」

ねずみくんが言うと、うさぎくんは嬉しそうな顔をしました。

それを見て、ねずみくんはウキウキした顔でフクロウさんのところへ走り出しました。

親友と仲直りできて嬉しいのです。


フクロウさんはねずみくんの話を聞いて、柔らかな顔でうんうん、と言いました。

フクロウさんは夢占いができるのです。

「ねずみくん、それはとっても素敵な夢だよ。不思議だがね、それは本当の親友同士しか見れないのさ。ドアっていうのはね、前に進むためにあるんだよ。時には、戻る時もある。君たちは未来へのドアを開けたんだよ」

「なぜ、押さないと開かなかったんでしょう?引きドアでもよかったのに」

ねずみくんは、ふと不思議に思って尋ねました。

「前に進むのに、引いていては戻ってしまう。押さないと前には進めないのさ。それにね、引き手は引き手というけど、なにも引くだけじゃないんだよ。私たちだってみんないろんなたくさんの役割を持っているだろう?それと同じことなのさ。未来っていうのはそういうもんだよ。たくさんの未来がある。それを選べるのは君たちだけってことさ」

フクロウさんの話を聞いて、ねずみくんはなんだか嬉しくなりました。

(うさぎくんと、仲直りできてよかったや)

その時、カラスの配達屋がフクロウさんの家の窓に止まりました。

「やーい、ねずみ、やーい!うさぎが待ってるぞー!やーい!」

カラスはそれだけ言うと、慌ただしく行ってしまいました。

「全く、騒がしいやつだ。あとでしばいておこう」

「はは!自業自得ですね。じゃ、僕はうさぎくんのとこに戻りますね。
ありがとうございました。今度マイの樹液漬けを持ってきますよ」

ねずみくんは、不思議なことに、それほどカラスに腹が立ちませんでした。

うさぎくんの一番の親友は自分だと分かったからです。

ねずみくんは、急いでうさぎくんの待っている家へと駆け出しました。


あとがき


どうですか?
見出しに書いているのですが、『ちょっと心が温まる話』です。
なんだか、書いているうちにホワ〜っていう気分になりました。
ねずみくんやうさぎくんの喋り方は、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』をイメージしました。
二人のモデルはジョバンニとカムパネルラですね。
ジョバンニはどっちでしょう?
みたさんはねずみくんだと思っています。
友達思いで、喧嘩をしていても思わず声をかけてしまう誠実さ。
人間のようで、人間は持っていないものを持っています。
動物って面白いですよね。
『〜です』や『〜ました』の本は最近あまり読んでいません。
すっかり小説に浸透してしまいました。
今読んでいるのは、阿部智里さんの『黄金の烏』です。
『八咫烏シリーズ』に今どハマり中なんですよね。
あと、上橋菜穂子さんの『守り人シリーズ』も面白い!
ママに借りた冲方丁の『天地明察』や東野圭吾の『流星の絆』も今読んでいるところです。
紅玉いづきさんの『ようこそ、古城ホテルへ』もいいですよ!
同じ作家さんですが、『大正箱娘』という本もおもしろいです。
あとは『恋する新撰組』ですね。
私は歴史というか、戦国時代や平安時代が大好きです。
小前亮さんの『新撰組戦記』や『服部半蔵』も面白かったです!
ぜひ、読んでみてください。
なんか、後書きなのに最近読んだ本をめちゃくちゃ紹介しちゃいました。
読んだら感想教えてくださいね!
友達はデスマス調は嫌いなのですが、私は好きです。
たまに読むとこころが温かくなります。
みなさんはどうですか?
あとがきの方が本編より長くなりそうで怖いのでこれで終わります。

おつがさ!

#眠れない夜に

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