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斜行

演出家の横に座って同じ机に台本とペンとノートストップウォッチや舞台の縮図なんかを広げて同じ角度から同じ稽古をみている。舞台監督なので一丁前にあーしてくださいこーしてくださいと口は出している。でも全くわからん。そりゃあ芝居のどこがもの足りないとか間合いの悪さとかこの芝居はプランが緻密とか逆に中身無いなとかそんなんはわかるけど。それ以外なにもわからん。役者のことはわかるけど舞台のことはなにもわからない。白緑、パネル、引き枠の種類、キャスターの数、尺とか寸法とか
スクリーンの種類とか舞台装置のバトンの番号とか
ずっと憧れていた舞台監督。なれたけど名前だけで頭がついていかない。
頭が悪いから演劇に逃げていたのに!!!もっと平面図や数学をやっておけばよかった!!!
わたしにはボワボワとふわふわとモヤがかって見えているこの台本の舞台の完成像が、演出にははっきり見えている。どの方向に進めば、何を選べばこのモヤが消えてその先が見えてくるのか全くわからん。
でもわからないことを認識できているという事で正解らしい。 でたよ、これ。「なんかわからんけど言われたこと取り敢えず、これどう?って大雑把でもなんかやってみせる」
大得意なやつ!!わたしがいっつも稽古でやるやつ!!!
演出や座長やまわりの大人たちにはすっかり私を見透かされていたみたいで「芝居や代役のことはやっておくから、あなたは舞台づくりの勉強に専念していいよ。楽しんで頑張っていこうね」と言われた。
専念します。
絶対成り上がる。

頭も悪いし不器用だしどうしょーもないしやっべえミスしてもどうにかやって、やって!やって!!!その先で私がどんなに美しいものを見ることができてもそれは絶対に君が得るべきだったはずの成功ではない。私だけのもの。
"成り上がり"という言葉は悪口で使われる事も多いけど私はまじで大好き
言われたいもんね。成り上がり!
デフォの私のステータスが最低でよかった!!!!!
二重になっただけですごいと言われる
人並みに容姿を好いたり好かれたりができるようになっただけで幸せ
元から二重だったらこんな幸福味わえてないもん

なんでこんな風に産んだんだ!!なんて世界で1番残酷な言葉を発している女の子を見た
産まれたときにオプションで躁鬱病やADHDがついていても一重でも内向的でも不器用でもなにがどーでも、自分が自分に色々やらなきゃやり続けなきゃ一生幸せになんてなれないよ
全て自分ありき
たとえ誰かが敷いてくれたレールの上でも、操作するのは結局自分
病気は個性なんかじゃないけれど
どうもがいても個性的になれない現代病だってあるし
どう足掻いても悪者になってしまうホンモノのはみ出し個性人間だっている
私が必死に隠したいズレている部分をはみ出している部分を
オモロ個性として上手に外側に出してオモローとして好かれているのをみるとやるせなくなる
そんなの嫌になるほどもっているのに

そこは一旦諦めて、違う方向で自分の居場所を、技術を、どんどんつくっていかないとな

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