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どくはく6「夜、母の足音」

高校3年のとき、ひどい不眠に悩まされていた。
睡眠薬を飲み、毎日毎日、夜がしんどく、朝が来ることが怖くて仕方がなかった。

なんで不眠になったかというと、もちろん精神的に体調を崩したことも大きかったが、一番は「母の足音」だった。

私が寝付くのは大体11時ぐらい。
私の寝室も両親の寝室も同じ二階にある。
不眠を極めているのもあり、簡単には寝付けない。
その時に決まって聞こえる「音」が一つあった。
毎日変わらない、母の足音。
11時半から12時にかけて聞こえる、ドタドタドタっという慌ただしく階段を駆け上がる音。
それが聞こえたとき、私の中でスイッチが入る。

あぁ、部屋に入ってきませんように、入ってきませんように、母がそのまま寝ていきますように、こっちにきませんように、こわいこわいこわいこわいこわいこわいいやだいやだいやだいやだいやだいやだ

頭の中で同じ言葉がぐるぐるする。
結局部屋に入ってこなくても、私の頭の中は常にパニック状態で、混乱していて、もうどう落ち着いていいかわからなかった。

あの時はかなりつらかった。
一人になりたかった。
一人になって、孤独になりたかった。

眠れなくてつらかったね。
今眠れるようになって本当によかった。
今、安心してベットで横になれるようになって本当によかった。

毎日のコーヒー代に。