どくはく3「初、過呼吸よ」


初めて過呼吸を起こした日のことを、覚えている。

高校2年の終わりごろから、精神状態がおかしかった。
正直いつ倒れてもおかしくないぐらいで、自分でもぎりぎりだったと今でも思う。
だんだん学校にも遅刻気味になっていた時期だった。

どうにか学校にいかなきゃ。
なんとかしなきゃ、みんなから遅れちゃう。
急がなきゃ、急がなきゃ、と思っているのに、体はついていかない。
こころもからだもばらばらで、どこを歩いているのかわからない。

その日も、学校には遅刻していった。
やばい、行かなきゃ、行かなきゃ急がなきゃ。
走りたいのに走れない、走っているつもりなのに走っていない。

おそらく外から見れば、とろとろ歩いている生徒に見えていたのだろう。
校門に見張りで立っていた体育教師が、怒鳴った。

「なんしよんか走れ!!」

あっ、と息が止まった。
たぶん走ったのだと思う。
意識が飛んだ。

目を開けたら下駄箱に居て、やばいやばいと手が震えた。
教室に行かなきゃ急がなきゃ上靴に履き替えなきゃ歩かなきゃいかなきゃいかなきゃあっ息が息が息が息が、
胸が苦しくなって、のどが詰まって、どうしようもなくなってその場に座り込んだ。
苦しい、助けてたすけてたすけて、
あたまとこころとからだがバラバラだった。

たぶん、その時同じく遅刻した男子から名前を呼ばれたのを覚えている、でも私は何も言えなくて。
その子が先生を呼んでくれて、保健室に運ばれた。
落ち着いたころには、ただ漠然と、「しにたい」と思った。

それから高校にいたときは何度か過呼吸を起こして倒れていたが、実家を出て進学先に来てからは、一回も起きていない。
あの時の感覚は、今でも忘れられない。

毎日のコーヒー代に。