ひかり(ウィンターズ・テイル)

さよなら光
りんごは赤
夜がわたしを迎えにくる
絵本を持つ手がぽとりと落ちる
おやすみを言いそびれて
夢の中でまた眠る
昼間思い出せなかった画家の名前が
りんごの皮をむくみたいにするりと口から出る

夜が伸びていく
どちらかの足はまだ冷たくて

冷めたコーヒーを飲み干す人
お茶を淹れなおす人
蛍光灯の下、作業を続ける人の上にも
昇る月
欠けてゆく月

さよなら光
夜はりんご
下弦の月
かじりかけのパイ

秋の果実は光をあつめた色をして
みのり、みのり、と存在しない妹の名を呼ぶ
みのりは眠っているだけ

秋の果実を煮詰めたにおいを連れて夜は
夜は

ふゆの、ものがたり
さよなら光
うしなわれてゆく光をあつめて
読みかけの本にはさんだ
夜が連れてくる友だちは
いいにおいがするからわかる

あたりはすっかり
(ウィンターズ・テイル)
闇に沈んだ
(りんごは赤)
(夜はりんご)
(りんごはパイに)

楽しいことをしていきます。ご一緒できたら、ほんとにうれしいです!