鍋を磨く
彼女からの連絡が途絶えて久しい
月は欠けきったのち、また肥えはじめた
わたしの髪は伸び
きっと彼女も美容院にはまだ行っていない
鍋を磨く
味噌を溶いたり
玉子を茹でたり
キャベツを蒸したり
そうして生活に寄り添った結果
不本意ながら真っ黒なコゲを身にまとった
我が家の鍋
鍋を磨く
たぶん明日も生きているだろう
生きているからには米を炊き
汁を用意することが必要になる
鍋を磨く
彼女の米を炊き
汁を用意する人の鍋が
我が家の真っ黒な鍋と同じに尊いのは
救いであり
とりたてて誰かに伝えるほどのことでもない
鍋はやっと半分くらい輝きを取り戻す
今夜は大根とわかめとあぶらげの味噌汁にする
太陽は水瓶座に入り
春先めいた声を出していた猫はどこかへ行った
今夜、雪は積もるだろうか
楽しいことをしていきます。ご一緒できたら、ほんとにうれしいです!