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地球星人、天王星人、ナメック星人…

こんにちは(*‘ω‘ *)

むかし、キアヌ・リーブス主演映画「マトリックス」を観たときは大きな衝撃を受けました。この社会の暮らしが実はテクノロジーによって形成された大きな幻想(いまでいうとVRでしょうか?)でしかなく、バイオエネルギーのようなエネルギー源として人間が栽培されているという世界が本当のところなんだよという、ディストピア。当時、頭をガンと殴られたような気がしました…!


私は、人間を作る工場の中で暮らしている。

私が住む街には、ぎっしりと人間の巣が並んでいる。

それは、もしかしたらてるよしおじさんが話してくれた、蚕の部屋に似ているのかもしれない。

ずらりと整列した四角い巣の中に、つがいになった人間のオスとメスと、その子供がいる。つがいは巣の中で子供を育てている。私はその巣の中の一つに住んでいる。

ここは、肉体で繋がった人間工場だ。私たち子供はいつかこの工場をでて、出荷されていく。

出荷された人間は、オスもメスも、まずはエサを自分の巣に持って帰れるように訓練される。世界の道具になって、他の人間から貨幣をもらい、エサを買う。

やがて、その若い人間たちもつがいになり、巣に籠って子作りをする。

五年生になったばかりのころ、性教育を受けて、私はやっぱりそうだったのかあ、と思った。

私の子宮はこの工場の部品で、やはり同じように部品である誰かの精巣と連結して、子供を製造するのだ。オスもメスも、この工場の部品を身体の中にかくして、巣の中を蠢(うごめ)いている。

私は由宇と結婚したけれど、由宇は宇宙人だからたぶん子供はつくれない。宇宙船が見つからなければ、私はきっと他の誰かとつがいになって、世界のために人間を産まなくてはいけなくなるだろう。

そうなるまえに、どうか宇宙船が見つかりますように。

笹本奈月(小学5年生)

*

子供のころ、漠然と想像していたように自然に「工場」の一部になることはなく、私たちはまさに親戚や友人、近所に住む人間の目をすり抜けていた。

皆、「工場」を信じ、「工場」に洗脳され、従っている。身体の中の臓器を工場のために使い、工場のために労働している。

私と夫は、「ちゃんと洗脳してもらえなかった人」たちだった。洗脳されそびれた人は、「工場」から排除されないように演じ続けるしかない。(略)

夫の両親、兄夫婦、友人などがたまに、「工場」の様子を偵察しに来た。私と夫の子宮と精巣は「工場」に静かに見張られていて、新しい生命を製造しない人間は、しているという努力をしてみせないとやんわりと圧力をかけられる。新しい人物を「製造」していない夫婦は、働くことで「工場」に貢献していることをアピールしなくてはいけない。

私と夫は、「工場」の隅で息を潜めて暮らしていた。

笹本奈月(34歳)

『地球星人』(村田沙耶香、新潮社、2018年)より


自分が地球星人のふりをしている宇宙人(ポハピピンポボピア星人)なのではないかいうと確信を強めながら、自分の星に帰ることはできなくても地球でなんとか生き延びようとする姿は、冨樫義博さんの『レベルE』に登場する宇宙人や、鳥山明さんの『ドラゴンボール』に登場するナメック星人を彷彿とさせます。

以前、発達障害(発達凸凹・はったつでこぼこ)を調べていたとき、ある家族の成員それぞれが持つ特徴や行動パターンを「火星人の長男は○○傾向あり」「天王星人のパパと次女はは△△になりやすい」「金星人のママは××が苦手」というような言語化/視覚化(情報開示)をして、むやみやたらな衝突を避け、共存と棲み分けを試行錯誤しているようすをTV番組で見かけました。すごくいいな!と思ったのを覚えています。発達障害があろうがなかろうが、いろんな場面で使える知恵なのではないかと思いました。

『地球星人』のなかで、実際に「宇宙人の目」で暮らしを見つめ直して再構築していこうという場面があります。この星に不時着してしまった宇宙人のように、世界ともう一度出会い直す…地球星人の知識に頼りつつも、知識や文化ではなく「合理性」で判断する。おもしろそうです。

ちなみに、わたしは六星占術では「天王星人」です。

What planet do you come from ??☆

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