『HOKUSAI』(2020)

こんにちは(^^)

葛飾北斎の生き様をえがいた映画「HOKUSAI」(延期を経て、先月公開)、ただの伝記物ではありませんでした! いまに通ずるメッセージを孕み、現代日本に生きるわたしに爆発的な活力を与えてくれるような、スペシャルな映画でした。老年期の北斎役・田中泯さんが、雨の中でベロ藍(海外から渡ってきた化学染料)の青で身体を染めるシーンが印象強いです。早い段階で藍一色に染まるのは不可能とわかっていたけれど、ダンサーとしての計算があった、と田中さんのコメント。絵を描くことに人生捧げた自称「画狂人」の猛り狂う歓びを、藍に染まりながら解き放つ姿を素晴らしい表現にされていました。


夢中で仲間と踊っている時間。からだは教養を身につけている。

――からだで学ぶって、どういうことですか? 大橋先生、教えてください。

教養科目の授業で舞台作品をつくる。

プロを養成するためでも、教員養成のためでもありません。

この授業でめざしているのは、学生たちにからだを通して得る感覚を知ってもらうことです。夢中になってからだを動かしているうちに、眠っていた身体意識は目を覚まします。

私はこの感覚を “からだがひらく” と呼んでいます。

知らないうちにまとっていた見えない鎧を脱ぎ捨てると、からだだけでなく、こころも変わります。

本来の自分を知ると、他者の存在も見えてきて、互いを感じながら自然なかかわりが増えていきます。

ケンカをしたり凹んだりすることもあるでしょう。

しかし、その先にあるのは、共にあるもの同士にだけ見えてくる世界。

踊りは今を生きるものです。

上演が終われば、すぐに消えてなくなってしまう。

しかし、はかなくも愛しいその経験はからだの中に残り、これからの日々を支えてくれるはず。

それはからだで身につけた教養なのです。

大橋さつき (人間科学科 教授)

* * *

いつでもどこでも わたしたちは 異変をまっている―。

――文学や芸術の意義って、なんだろう? 田村先生、教えてください。

あまりにも見慣れて感じられなくなってしまった日常を、新鮮な姿で出現させる。

文学をはじめとする芸術の意義は、ここにあります。

語るはずのない猫がしゃべりだす『吾輩は猫である』、

お笑い芸人たちがはじける又吉直樹の『火花』などの文学作品でも、

華麗な変身シーンで魅せる「魔法少女モノ」、

僕と君のかかわりが世界の終焉へと波及する「セカイ系」、

人類が影の人類と闘う『進撃の巨人』などの漫画やアニメ作品でも。

みんなみんな、固定された日常をゆさぶり、わたしたちを次の一歩へといざないます。

そんな出会いを、文学・芸術論では、異変=異化体験と呼ぶのです。

政治や社会で不安な出来事が続き、怪しげなニュースが注目を集める、ポスト・トゥルースの時代。

わたしたちは、文学や芸術の鮮やかな異変で描き出される真実を求めているのかもしれません。

異変の入り口は、和光大学にあります。小田急線鶴川駅にはじまる和光ワンダーランドを、のぞいてみませんか?

田村景子 (総合文化学科 講師)

* * *

アートって、後から効いてくる。

――私たちにとって、アートってなんなのか? 大坪先生、教えてください。

「光と影の写真家」と呼ばれるヨゼフ・スデック。

彼の祖国チェコ共和国(※)は長く共産主義体制で、芸術家は目立った活動をすれば秘密警察に捕まる世の中でした。

スデックはこの状況を逆手にとった。

彼はアパートメントの中庭にあるアトリエに14年間こもり、窓から差し込む光で静物を撮り続けました。

彼が中庭にこもった時間は、その時代のチェコを象徴しているといってもいいでしょう。

スデックは21世紀の今でもチェコ人の心を表す作家と評価されています。

写真をはじめ、アートは必ずしも社会にとって即効性のあるものではありません。むしろ長い時間をかけて意味をもち、人の心の支えのようなものになっていくのです。

人はアート作品を通じ、いったん現在から離れて、遠い過去や見えない未来を想像する。

そうして自分の考え方や生き方を見つめ直しているのかもしれません。

だから私たち人類はアートをつくり続けるのでしょう。

(※ 当時は、チェコスロバキア共和国 1948~1989)

大坪晶 (芸術学科 准教授)

『和光3分大学』(数年前、小田急線車内広告)より


青年期の北斎が「化ける」ことを期待し見届けた版元の蔦屋重三郎や、北斎の後半生に深い親交のあった戯作者・柳亭種彦。かれらは幕府の「浮世絵や読み物が民衆を堕落させ風紀を乱す」という理屈の弾圧にも屈しない魂の持ち主でした。こんなにゴウゴウ燃焼している人たち、すごいなぁ…! 周りでそれを支えたり、刺激しあったり、彼らの危機にハラハラしている人たちも、すごいんです。わたしの中で、2021年公開映画で3本の指に入る作品となりそうです!( *´艸`)

Burn, burn, burn with passion ☆

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