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「ロックだ!」と思う本、と言われて

こんにちは(^^)

読書会の課題本、なにかな~? と思っていたら、今回は自分が「これがロック(ミュージック)だ!」と思う/感じる本を持ち寄る紹介型読書会のよう。
ほかの方々はどんな本を選んでくるのでしょう?


 物質の世界では、与えるということはその人が裕福だということである。たくさんもっている・・・・・人が豊かなのではなく、たくさん与える・・・人が豊かなのだ。ひたすら貯めこみ、何かひとつでも失うことを恐れている人は、どんなにたくさんの物を所有していようと、心理学的にいえば、貧しい人である。気前よく与えることのできる人が、豊かな人なのだ。豊かな人は、自分は自分の物を他人に与えられる人間なのだと実感する。生きていくのに最低限必要な物しかもっていない人は、物を与えるという行為に喜びを感じることができない。だが日常の経験からわかるように、人がどの程度を最低限の必需品とみなすかは、実際にどれくらいもっているかだけでなく、その人の性格に左右される。誰もが知っているように、貧しい人のほうが裕福な人よりも気前よく与える。とはいえ、貧困もある限度を超えると、与えることができない。貧困は人を卑屈にするが、それは貧困生活がつらいからだけでなく、与える喜びが奪われるからでもある。
 しかし、与えるという行為のもっとも重要な部分は、物質の世界にではなく、ひときわ人間的な領域にある。では、ここでは人は他人に、物質ではなく何を与えるのか。それは自分自身、自分のいちばん大切なもの、自分の生命だ。これは別に、他人のために自分の生命を犠牲にするという意味ではない。そうではなく、自分のなかに息づいているものを与えるということである。自分の喜び、興味、理解、知識、ユーモア、悲しみなど、自分のなかに息づいているものすべてを与えるのだ。
 このように人は自分の生命を与えることで他人を豊かにし、自身を活気づけることで他人を活気づける。もらうために与えるのではない。与えること自体がこのうえない喜びなのだ。だが、与えることによって、かならず他人のなかに何かが生まれ、その生まれたものは自分に跳ね返ってくる。ほんとうの意味で与えれば、かならず何かを受けとることになる。与えることは、他人をも与える者にする。たがいに相手のなかに芽生えさせたものから得る喜びを分かちあうのだ。与える行為のなかで何かが生まれ、与えた者も与えられた者も、たがいのために生まれた生命に感謝する。とくに愛に限っていえば、こういうことになるーー愛とは愛を生む力であり、愛せなければ愛を生むことはできない。
 マルクスはこのことを次のようにみごとに表現している。「人間・・人間・・とみなし、世界にたいする人間の関係を人間的な関係とみなせば、愛は愛としか、信頼は信頼としか交換できない。その他も同様だ。芸術を楽しみたければ、芸術について学んだ人間でなければならない。人びとに影響をおよぼしたいと思うなら、実際に他の人びとをほんとうに刺激し、影響を与えられるような人間でなければならない。人間や自然にたいする君のかかわり方はすべて、自分の意志の対象にとってふさわしい、君の現実の・・・個人としての・・・・・・生の明確な表出でなければならない。もし人を愛しても、その人の心に愛が生まれなかったとしたら、つまり自分の愛が愛を生まないようなものだったら、また、愛する者としての生の表出・・・・によっても、愛される人間・・・・・・になれなかったとしたら、その愛は無力であり不幸である」
 しかし、与えることがすなわち与えられることだというのは、別に愛に限った話ではない。教師は生徒に教えられ、俳優は観客から刺激され、精神分析医は患者によって癒される。ただしそれは、たがいに相手をたんなる対象として扱うのではなく、純粋かつ生産的にかかわりあったときにしか起きない。
 あらためて強調するまでもないが、与えるという意味で人を愛せるかどうかは、その人の人格がどれくらい発達しているかによる。愛するためには、人格が生産的な段階に達していなければならない。この段階に達した人は、依存心、ナルシシズム的な全能感、他人を利用しようとか、なんでも貯めこもうという欲求をすでに克服し、自分のなかにある人間的な力を信じ、目標達成のために自分の力に頼ろうという勇気を獲得している。これらの性質が欠けていると、自分を与えるのが怖く、したがって愛する勇気もない。
 愛の能動的な性質を示しているのは、与えるという要素だけではない。どんな形の愛にも、かならず共通する基本的要素がいくつか見られるが、ここにも、愛の能動的な性質があらわれている。その要素とは、配慮・・責任・・尊重・・である。(つづく)

エーリッヒ・フロム (Erich Fromm)

『愛するということ』(原題:THE ART OF LOVING、鈴木晶訳、紀伊國屋書店、2020年)より


ロック・ミュージックで「愛」を歌われてるものが数多く、那由多にあります。
ただ、わたし個人は気分障害?、感情障害の一種を抱えていることもあって、自分の感情がまったくあてにならないと感じるときもあり、「愛=なにかしらの甘美な感情」と思い込んでいた頃はもて余していたテーマでした…(^^;
けれどこの本は、「愛=ひとの生命や成長を積極的に助けるような、技術」と説いていて、こっちの方がわたしはとっつきやすかった、ということがあります。
技術なので、たとえば音楽、絵画、大工仕事、医学、工学などの技術と同じように、理論的知識を身につける&実践の体験・習練を積むことが必要なのだそうです。

著者は、「現代人は心の奥底から愛を求めているくせに、愛よりも重要なことは他にたくさんあると考えているのだ。成功、名誉、富、権力、これらの目標を達成するすべを学ぶためにほとんどすべてのエネルギーが費やされてしまうために、愛の技術を学ぶエネルギーが残っていないのだ」と書いていて、理論学習&習練のほかに、「この世にその技術よりも大切なものはない、と確信」していなきゃならん! と言ってます。
…これは、ロックではなかろうか…(*^^*)

I think the art of loving is rock ☆

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