〈2〉走り出す瞬間
毎日の生活において〈あしたを頑張るための楽しみ〉は重要である。週末に好きな人とのデートの予定があれば平日すこしぐらい仕事が辛くたって頑張れるし、半年後の海外旅行のためにランチのもう一品をがまんすることだってできる。僕たちは日々そうやって関節に油を注しながら疲れで錆びついた身体を動かしているのだ。残念ながらいまはそういう〈あした〉を描きづらい状況にあるけど、最近の僕はもっぱら日向坂46のメンバーに助けられている。彼女たちを見ていると元気が出るのだ。日曜の深夜に「日向坂で会いましょう」を見ると月曜からまた頑張ろうというスイッチが入るし、仕事の間にトークを覗くとすごく癒やされる。多少上司や先輩のプレッシャーが辛くても自分には逃げ場があると思える。ヒーリングを通り越してもはやドラッグの域に達しつつあると言えよう。
そんな中毒患者の僕は前回の記事で「一期生」の観点から日向坂46の魅力について考えた。苦境の時代を乗り越えて〈ハッピーオーラ〉のカラーを手に入れた彼女たちの絶対的支柱としての佐々木久美、彼女を支える〈最強のシンメトリー〉の加藤史帆と齊藤京子。欅坂46のイズムを受け継ぐ〈表現者〉佐々木美玲に、徐々に自らの立ち位置を確立しつつある潮紗理菜、高本彩花、高瀬愛奈。圧倒的身体能力で異彩を放つ〈奈良のチーター〉東村芽依に、グループの源流となった井口眞緒と柿崎芽実。そして〈最後のピース〉影山優佳。泥臭くひたむきで、そこぬけにハッピーな坂道シリーズの〈末っ子〉は彼女たち一期生が作り上げたのである。
今回は「二期生」の切り口から日向坂46を考えてみたい。長濱ねるの兼任解除と前後してグループに加入した9人のメンバーは、一期生とはまた別の表情を持っている。徐々に洗練されながらも依然としてフレッシュさを放つ彼女たちにこそ、日向坂46のもっているパワーの秘密があるのではないか。そんな思いつきを足がかりに、まずは外番組やモデル仕事での活躍が目立つ〈埼玉3人組〉から話を始めよう。
埼玉3人組
メンバー間に優劣はないけれど、メディア露出で言ったら彼女たちは間違いなく二期生のエリート集団だろう。丹生明里と渡邉美穂はそれぞれ得意のゲームとバスケットボールでテレビ出演の実績を積み上げているし、金村美玖も「BUBKA」や「B.L.T.」といったアイドル系の雑誌だけでなく、「anan」や「bis」などファッション系の雑誌でのモデル仕事が増えてきている。3人+松田好花で「ネプリーグ」の出演も果たした。最近は毎週のように3人の出演告知を見る。埼玉勢恐るべしである。
3人の中でもいちばん好きなのが金村美玖だ。僕は彼女のひたすら健気なところに惹かれている。まだ高校生とは思えない大人っぽさだけど、頑張りすぎて空回りしたり、テンパることも多かったりするのは年相応かもしれない。トークを振られて一生懸命喋っているときに手が震えているのを見ると、かなりの緊張しいのようだ。緊急事態宣言下のトークではうたやダンスのレッスン動画にはじまり、ドラムの演奏、おうちファッションショー、はたまた「利きお茶クイズ大会」と、かなりのボリュームで情報発信していた。すこしは休んでもいいのに…と思うほど。まじめで努力家なところが魅力の彼女だけど、だからこそ無理だけはしないでほしいというのがいちファンとしての正直な気持ちである。
B.L.T. 9月号のアンケートを読む限り、彼女は自分のキャラがないことに悩んでいるらしい。僕は「第2回学力テスト」で彼女が前回から大幅に成績を落として悔しさのあまり涙を流していたことを思い出した。「初代かしこ女王」で初めて一位の称号を獲得したのがうれしくて、今回の企画も「懸けていた」というのだ。学力テストなら存在感を示せるかもと張り切る彼女の気持ちを想うと、胸の奥がきゅっとする。せっかく「若林の二代目贔屓」に選ばれたのにすっかりその設定が忘れられているのも可哀想だ。二期生の中でも間違いなくトップランナーの一人であるのに、なぜか時々不遇に感じてしまうのは、彼女のまとう儚げな空気のせいかもしれない。映画の回想シーンに出てくる「大好きだったのに結局気持ちを伝えられないままどこかへ行ってしまったあの子」的な情緒がある。モデルとしての表情を見ていてもそう感じるし、彼女自身がどう思っているかはともかく、その壊れてしまいそうな美しさこそ金村美玖の唯一無二の魅力なのだと思う。
キャラ立ちと言えば、丹生明里だろう。カメラの前やステージの上に立つときはいつも弾けるような笑顔で、本当にこんなに良い子存在する?と疑いたくなるほどの〈ハッピーオーラ〉にあふれている。齊藤京子が「外仕事要員」と評するように、いまの日向坂46を代表するメンバーのひとりと言えるだろう。丹生明里の魅力はいい意味での男の子っぽさにあると思う。趣味はドラゴンボールとフォートナイトだし、表情豊かでピュアな可愛さはとても〈末っ子的〉だ。じっさいに兄と仲がいいと聞いていろいろ合点がいった。こんな妹がいたら楽しくてたまらないだろう。「丹生ちゃん」というキャッチーな愛称も持つ彼女は、柿崎芽実や齊藤京子と並ぶ天性のアイドル肌だと思う。このまま王の道を突き進んでほしい。個人的にはもっとフォーメーションは前の方で踊ってくれた方が映えるタイプの人だと思う。
最近僕の中でぐいぐい来ているのが渡邉美穂だ。くしゃっと目を細める笑顔が素敵で、抜群に可愛いのは言わずもがなだけど、どちらかというと僕は「友だちにいたら楽しそう」と思いながら彼女を応援している。オードリーや他のメンバーとの接し方が個人的にツボなのである。特に好きなのは「日向坂で会いましょう」の大喜利企画での一幕。お題で出された中学時代の若林の写真に「ハイパーかませ犬」と名付けるセンスに僕は惚れた。春日と共にさんざんいじられた末に背中の皮が薄い若林は「俺ら共学だったら終わってた」と笑っていたけど、こういう同級生と仲良くなれたら最高だろうなと思う。「学生時代は誕生日の友だちにパイ投げをしていた」と語るメンバーが複数いる、圧倒的に〈陽〉な女の子の集いである日向坂46の中でも、渡邉美穂はトップクラスの人気者タイプだと思う。それでいて映画や音楽など文化系の趣味も幅が広い。メッセージで「今朝の一曲」にYogee New Wavesを挙げていたのには思わずガッツポーズしてしまった。
ちなみに渡邉美穂は女優としても活躍できるのではないかと思っている。「Re: Mind」では二期生オーディションを勝ち抜いてメインキャストの座を射止めているし、断片的にしか見ていないが「DASADA」での演技も評判がいいらしい。「日向坂で会いましょう」の寸劇や歌番組でのパフォーマンス(表情の輝きはチーム随一だ)を見ていると、感情のスイッチの切替がうまいことがわかる。たぶん「自分をどう見せるか?」を計算しながら動く能力が高いのだろう。「日向坂46ストーリー」によると彼女はもともと女優志望らしい。いずれ川栄李奈や深川麻衣、今泉佑唯のようにアイドルの枠を超えた女優として羽ばたいてくれたら…ファンとしても幸せである。
深緑と茶色のタータンチェック
埼玉3人組と並んで頭角を現しつつあるのが「はなちゃんず」のふたりだ。3rdシングル収録曲「まさか、偶然…」でユニットデビューを果たした富田鈴花と松田好花は、少人数曲を任される歌唱力やギターの腕前だけでなく、さまざまな特技を持つ多彩の人なのである。加入当初は迷走気味だったふたりだが、ここに来て花開きつつある。
富田鈴花は当初〈パリピキャラ〉で売り出そうとしていたらしい。いま考えればかなり無理がある。明るくて前のめりなキャラクターを見れば学生時代クラスの中心人物であったことは想像に難くない。けれど、濃ゆい女の子の集まりである日向坂46に於いて、彼女のパリピ度は残念ながら中の上どまりだった。個人的には影山優佳がぶっちぎりで勝っているのではないかと思っている。あんな陽の要素の完全体みたいな人がいたら、たとえ富田鈴花でも霞んでしまうだろう。そのあとも彼女は迷走を続ける。高速道路好きキャラ、じつは真面目キャラ、負けキャラ、器用貧乏キャラ…。現時点でも定まっていないと言えば定まっていないのかもしれない。わざわざバラエティキャラを目指さなくてもいいぐらい、本当はモデルもできるぐらい背が高くて小顔なのに、彼女は進んで壁にぶち当たり続けている。
ところで、ショートにしてからは可愛いさに磨きがかかったと思う。他のメンバーと一緒にいるときは意識していなかったけど「ポケモンの家あつまる?」の出演を見てびっくりしてしまった。こんなにスタイルよくて色白で垢抜けていたっけ?と。歌はうまくて作曲もできるぐらいには音楽のセンスもある。なによりものすごく真面目である。ふざけても根の素直さがにじみ出て空回りしてしまったり、不憫な結果に終わってしまったりする様は金村美玖と同じくファンの気持をくすぐるし、そういう姿がまた愛おしいのだけれど、何ごとにも一生懸命に取り組む態度は、あとから身につけようと思ってもなかなか難しい。富田鈴花最大の魅力でありグループいちの才能は間違いなくその真面目さにあると思っている。
コツコツと努力した結果だろうか。最初に触れたように「はなちゃんず」としてデビューを果たしたほか、「HINATAZAKA46 Live Online」では〈パリピキャラ〉らしくソロのラップも披露している。外番組への出演もぽつりぽつりと増えてきた。カッコ悪さを隠さずに頑張ってきた彼女がこれからもっと報われることを願っている。
もうひとりの「はなちゃんず」である松田好花もまた真面目な秀才タイプで、とにかく準備をする人というイメージがある。「ひらがな推し」でひとり課題のキン肉マンを読み込んで内容を頭に叩き込んできたのには感動した。はんなりした京都弁とおだやかな印象のタレ目が魅力的な彼女(困り顔が可愛い)だけど、見た目に反してかなりの負けず嫌いのようである。「日向坂で会いましょう」の「第2回学力テスト」では思うように回答できず悔しさを露わにしてMCの若林にたしなめられていた。もともとのペーパーテストは上位だったし矜持もあったのだろう。思えば「宮崎キャンプ」企画の伝説の「タルタルチキン」事件でも松田好花は春日の誤審に驚きつつ早押しボタンを連打していた。普段おっとりした雰囲気の彼女が時折見せる負けん気の強さが僕は大好きである。
毎週「オードリーのオールナイトニッポン」を熱心に聴く「リトルトゥース」であるというのも興味深い。この番組のファンとなると自ずと「しんやめ」も聴いていることになる(じっさいラジオでこれをもじったギャグを言ったことがあるらしい)が、それを公言するのは彼女的にOKなのだろうか…。同番組には春日が全裸になって謎のゲームを受けさせられる「チェひろしのコーナー」もあるが、松田好花が聴いているのかと思うと余計に面白い。あれを聴いた後どういう気持ちで「日向坂で会いましょう」の収録に臨んでいるのだろうか。アイドル云々関係なく非常に気になるところである。
末っ子の末っ子
比較的なんでも器用にこなす埼玉3人組やはなちゃんずに対し、我が道を行っているのが河田陽菜と濱岸ひよりであろう。そしてふたりとも先輩や同期から可愛がられている〈末っ子〉タイプのようである。
河田陽菜は独特のセンスの持ち主であると思う。いわば天然だ。本人はいたって真面目であるにも関わらず、微妙にズレたコメントを残す。先日の「日向坂で会いましょう」で「親は子どもと同じ目線に立つべし」という金言に対するコメントを求められた彼女が「物理的にですか?」と返したのは面白かった。狙っているようには見えないのに、なにげないひと言が面白い。
しかもあのふわふわした笑顔と柔らかい声でつぶやくのだから癒やされる。控えめではあるけどリアクションは豊かな方だったりもする。僕は彼女のケラケラした子どものような笑い声がたまらなく好きだ。『日向坂46の「ひ」』出演回は実質ASMRだった。ああいう無邪気さを見せられたら妹のように可愛がりたがるのもわかる。同じ末っ子キャラでも丹生明里とはなぜか全然毛色が違う。河田陽菜はしばらく目を話しているうちに迷子になりそうな放っておけなさがあるのだ。ピントのズレた天然コメントの微笑ましさも、小さな子どもが一生懸命しゃべっているのを見守っているとき同じ気分になる。東村芽依と並んでふだん何を考えているのか気になる、あたまの中を覗いてみたいメンバーだ。
一方の濱岸ひよりはもはや妹を通り越して〈ベイビー〉である。かなりのゲラで、一度ツボにはまると抜け出せなくなるらしい。河田陽菜と同様に笑っている姿がとても可愛い。彼女がお腹を抱えて笑っているのを見ると、こちらまで幸せをおすそ分けしてもらった気分になる。それでいて高身長でスタイルも良いのだからギャップが凄まじい。最近は「ひよたん」というより「ひよさん」になりつつある。昔は小娘という形容が似合う、ちょっと幼さの目立つ女の子だったけど、休業を経てすっかりお姉さんになってしまった。グループを離脱しているあいだは日向坂46の活動に触れないようにしていたようで、心身の療養をする中で様々な葛藤や逡巡があったのかもしれない。復帰後は一皮むけた感があり、ひな壇でも積極的に発言するようになった。山口陽世という新たな〈ベイビー〉枠の加入により彼女の立ち位置がどう変化するのか、気になるところである。
横顔なんてきいてない
他方、二期生最年長のお姉さんで(おそらく)日向坂46唯一の現役大学生が宮田愛萌である。一期生の高本彩花や東村芽依と同学年(1998年生まれ)だ。芸能界の上下関係は芸歴の長さで決まるらしいけど、宮田愛萌は高本彩花のことを「彩ちゃん」と呼んでいたりする。大人びていて落ち着いた雰囲気の彼女は加入当初、事あるごとに動揺したり涙を流したりする二期生をよくなだめていたらしい(「日向坂46ストーリー」参照)。おそらく年長ゆえにこのポジションを取らざるを得なかったのだとは思うが、団体である以上、齊藤京子や小坂菜緒のような王道アイドルだけでは成り立たない。22人でひとつの魅力をもっている日向坂46にとって、宮田愛萌というメンバーが3列目にいるのはむしろすごく幸運なことだと言える。僕は彼女や佐々木久美がうしろの列で踊っているのを見ると逆に安心する。「ああ、このグループはどの列も盤石なんだな」と思うからだ。
もちろん僕は宮田愛萌がいつものアイドル活動で見せてくれるキャラクターも愛している。国文学を専攻する「源氏物語」のファンであり、日向坂46随一の〈やってる〉ぶりっ子でもあるというカオスっぷりは、知れば知るほど面白い。詳しくは知らないけれど一度短編小説を書いたらしい。ブログのタイトルも毎回特徴的で楽しみにしている。東村芽依の絵文字タイトルと並んでいるとあまりの落差に笑ってしまう。そして普通の女子大生っぽい親しみやすさを感じさせつつも、ダンスのパフォーマンスではこれ以上ないってぐらい抜群のアイドル顔を見せてくるところが素晴らしい(時々18禁になる)。いつどのポジションにいたって彼女は輝いてしまうのだ。
日向坂の絶対的センター
最後になるが二期生を語る上で絶対に外せないのが小坂菜緒である。けやき坂46に加入した当初から圧倒的人気を誇り、日向坂46としてデビュー後は1stシングル「キュン」から4thシングル「ソンナコトナイヨ」まで4作連続でセンターを務めた。彼女の魅力といえば圧倒的にそのビジュアルだろう。もちろんみんな可愛いけれど、はじめからひとりだけ完成度がずば抜けていたと思う。クールで寡黙な印象を与える目つきと口元。前のめりなメンバーの多い日向坂46の中では控えめな性格であり、不動のセンターでありながら集合写真では端に立つことを好むという謙虚さも見せる。歌番組でのトークやインタビューではイメージ通り礼儀正しく優等生な彼女だけれど、SHOWROOMやメンバー間のやり取りでリラックスすると関西弁が出てきたり、女子高生らしいリアクションをしたり、アイドルモードの合間に覗かせる素の姿とのギャップがまた可愛い。
48シリーズや坂道シリーズのセンターといえばグループの顔である。シングルの運命を背負わされていると言っても過言ではない。AKB48の前田敦子、乃木坂46の生駒里奈、欅坂46の平手友梨奈。まだシングル4枚目とはいえ、小坂菜緒はこのそうそうたるメンバーに名を連ねようとしている。誰の背中も見えず、先輩後輩をリードしながらすべてを背負ってステージの上で躍る気分はどんなものだろう。彼女はまだ高校生。いくらメンバー間の仲が良かったとしても、日々感じるプレッシャーや孤独感は相当のものだろう。「悲しみの忘れ方 Documentary of 乃木坂46」では、秋田の田舎から上京した地味な少女・生駒里奈がセンターに祭り上げられ、やがて自己評価とのギャップに心身のバランスを崩すまでをアイドル映画らしからぬドライなタッチで描いていた。程度の差こそあれ彼女の置かれている状況に通ずるものがあるのではないだろうか。
しかし、日向坂46というグループに於いてセンターのポジションは必ずしも頂点を意味しない。あくまで小坂菜緒はセンターとして座りがいいからセンターにいるのである、というのが僕の解釈だ。たしかに彼女はセンターではあるけれど、エースではない。そのポジションには齊藤京子と加藤史帆がいる。キャプテンはもちろん佐々木久美だ。一人ひとりが異なる適正を持っている。一部の人にしか分からない例えで言えば、バレンタイン監督時代の千葉ロッテマリーンズ。対戦相手や時々のコンディションによって日替わりのオーダーを組む猫の目打線である。打線として繋がればいいのであって、誰が4番なのか、クリーンナップなのかは関係がない。いまの日向坂46センターに求められる要件にたまたまハマったのが小坂菜緒というだけであり、22人全員どのポジションになる可能性だってある。それがこのグループのいいところであると思う。
48シリーズ×坂道シリーズ
最後に「二期生」という切り口で9人のメンバーを考えてみよう。
結論から言えば二期生は48シリーズと坂道シリーズのいいとこ取りなのだと思う。一期生はどちらかというと48シリーズのカラーを強く感じる。僕のAKB48の知識は神セブンの頃で止まっているのでいろいろ理解が古いかもしれないけど、キャプテンの高橋みなみを筆頭に彼女たちは個々人のキャラクターが強烈で、ハングリー精神を隠さない体育会系の色が濃かった。日向坂46一期生も同じ傾向にあるのではないかと思う。佐々木久美であればキャプテンシー、齊藤京子であれば低音イケメンキャラというように一人ひとりのキャラが立っているし、不遇の時期を過ごしたこともあってか常に前傾姿勢の団結力を感じる。秋葉原の劇場を拠点にインディーズからキャリアをスタートさせた草創期AKB48のストーリーと重なる部分も多い。良い意味での暑苦しさや泥臭さが一期生という括りで日向坂46を見たときの最大の特徴であろう。
一方の二期生は、そんな一期生の熱量を受け継ぎつつ、坂道シリーズの洗練された雰囲気をまとっている。長濱ねるが欅坂46へと活動の軸足を移す中、けやき坂46のさらなる飛躍を託すために集められた9人のメンバー。おそらくこの時点で将来的な単独デビューは視野に入れており、単なるアンダーグループで終わらせるつもりではなかったと思う。そう考えると、二期生はバランス感覚に優れ、さまざまな顔を持つメンバーが多い。「はなちゃんず」の器用さは言わずもがな、金村美玖、丹生明里、渡邉美穂の3人も場面に応じて立ち位置を変えられる柔軟さがある。河田陽菜と濱岸ひよりはそういう意味ではすこし変わっているけど、一期生を含めたまわりのメンバーが支えてくれているイメージがある。さらにお姉さんの宮田愛萌が加わり、クール系の小坂菜緒がその中心に存在することで、日向坂46は坂道シリーズらしいスタイリッシュさを獲得しているのだ。
もちろん一期生と二期生で明確にカラーが別れているわけではない。なんども言うように日向坂46は22人でひとつであると思っている。一期生だって坂道シリーズのグループのメンバーなのだから〈坂道らしさ〉があるし、二期生にも48シリーズの雑草魂が宿っている。それぞれの強みが噛み合ってはじめて日向坂46が完成する。それでも二期生には二期生の、一期生とは違った清廉さやカッコよさがあるのではないかと思うのだ。そしてそれはひとりでも欠けたら決して成り立たないものなのである。
新たなピース
2020年2月16日、そんな日向坂46に新たに3人の仲間が加わった。高橋未来虹、森本茉莉、山口陽世の新三期生である。2018年末に上村ひなのがひと足先に加入していたが、1年の準備期間を経ていよいよ三期生が揃い踏みしたのである。今回のかなりのボリュームの記事になってしまったので、一旦筆を置くことにする(勢いで書いているように見えてなかなか頭を使うし体力も消耗するのだ)が、次回は三期生の4人にたいする想い、それから日向坂46とオードリーの関係について考えていることを書いてみようと思う。
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