見出し画像

ペライチ小説~会議室の住人~

重くるしい空気が流れている会議室。
沈黙の時間は続いていて、時計の針が動く音が会議室の住人を追い立てる様に規則正しくカチカチ音を刻んでいる。
会議が始まって30分、息が詰まるような時間が続いていた。

誰か口を開いてくれ、おそらくすべての住人が思っていることだ。
こういう場合は一番年長者や幹事が話を切り出すべきだが、住民たちの顔を見てみると、

考えているフリの顔、
考えているフリの顔、
考えているフリの顔、
考えているフリの顔、
考えているフリの顔、
考えているフリの顔、
考えているフリの顔、
考えているフリの顔、

住民たちは何かを考えなきゃってことを放棄して考えているフリの顔を選択していることが分かる顔をしている。
これでは一生何も生み出されないことは明白だ。

もはや我慢比べになってきた。
誰かが口を開かないと本当に日が暮れてしまう。
関係ない話で構わない。通勤電車の中に変な奴がいた話、近所に美味しいご飯屋さんができた話、バナナで転んだ話で構わない、誰か口を開いてくれ。

考えているフリの顔の時間は止まらない。
う~ん、ごそごそ、モゾモゾ、カラダを動かしたり、首をひねったり、みんな考えているフリを続けている。
ただ誰も答えが浮かばない訳ではない。誰もが頭の中に出ている答えを口に出せないだけなのだ。

誰でもいい一言でいいんだ。口を開いてくれ。

『オリンピックは中止にします』

ひとり~の小さな手~♬なにもできないけど~♬それでもみんなの手と手を合わせれば♬何かできる♪何かできる♪