「君たちはどう生きるか」のまとまりのない感想

 観てきたのでメモ的に書いておく。タイトル通りまとまりはない。簡単に感想が言えるような作品でもなかったし。

 原作はジョン・コナリーの「失われたものたちの本」らしい。これは既に鈴木プロデューサーが明かしていたそうなので秘密ではない。私は未読だけど、母を亡くした少年が不思議な王国に迷い込む話とのことなので大筋としてはそのままだ。ただ、舞台は戦時中の日本だし、原作に忠実なアニメ化ではもちろんない。

 すぐに気がつくのは、これが相当に自伝的な作品らしいというところ。宮﨑駿の父親は航空機の部品製造会社で役員を務めていたとのことなので、その息子の宮﨑駿は主人公にほぼ被る。ただ、宮﨑駿の母親は病気がちではあったらしいが戦時中に亡くなってはいないのでそこは異なる。それは原作由来の部分だろうか。

 それから、これはあまり指摘されていないようだけど、主人公の眞人イコール宮﨑駿とすると「年齢が合わない」。宮﨑駿は1941年生まれで、戦時中に小学生にはなっていない。
 では宮﨑駿と年齢的に合致する登場人物がいないかというと、「いる」のである。夏子の腹の中にいる赤ん坊、ラストシーンで一瞬だけ成長した姿を見せる幼児だ。赤ん坊が宮﨑駿に当たるとすると主人公の眞人は誰になるのかというところだけれど、宮﨑駿は次男でお兄さんがいるのでそういう関連なのかも知れない。そうなるとお兄さんの年齢が気になるところだけど、それはちょっと調べられなかった。

 それから、わざわざタイトルを変えているからにはそこには当然意図があるはず。まあ素直に受け取るなら、「自分はこう生きたぞ、君たちはどう生きるのだ」という問いかけというところだろうか。狭く見るなら「君たち」は後輩のアニメーション製作者ということになるだろうが、もちろん作品をみた全ての観客が「君たち」と見ることもできるだろう。石の積み木は壊されてしまい、世界は崩壊して受け継がれない。ただ、現実世界に戻った主人公のポケットにはわずかな石のかけらが残っている。塔の世界をジブリと見るなら、宮﨑駿は自分が去った後無理にジブリという組織を維持することを望まなかったとも受け取れる。そう見ると世界の管理者の継承を拒んだ主人公と宮﨑駿の弟子の庵野秀明あたりがカブって見えてくるから不思議でもある。

 わからなかったのは「墓」と「墓のあるじ」。なんでしょうねえあれは。そのあたり注意してもう一回見てみたい気もする。

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