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彼女「無いよりはいいが、他にもっとやるべきことがあるみたいなの、この世に死ぬほどあるよね」
僕「ノー残業デーとか?」
彼女「そう。謎に仕事のリズムを変えさせられるより、普通に有給100%使わせてほしい」
僕「君を守る宣言?」
彼女「稼いで」
僕「毎月交際記念日のプレゼントは?」
彼女「貯金しよ」
堅実で辛辣な君が好きだと言いたいが、その前にやるべきことがなかったか、もう少し考えてからこの指輪を渡したいと思った。
高価なジュエリーに興味は無く、その代わりすぐに子供がほしいから、結婚前から育児資金を貯めたいらしいというのはリサーチした。
指輪なんて、彼女にとっては「無いよりはいいが」の方に分類されてしまうのかもしれない。けれど僕にとっては、ふたりの思い出の品を調達することは何を差し置いてもやるべきことだ。
知る由もない彼女は言い放つ。
「肌荒れ直して」
これが結婚式までにかっこよくなっておけという意味だと気づいたのは、だいぶあとだった。
(了)