ツイッターで書いた妄想物語まとめ16

5/6
「なあ。『試行錯誤』って言葉、よく考えるとやばくないか?」
藪から棒に聞かれて、僕は思わず「へぇ?」と変な声を上げてしまった。
「何がよ」
「試行、はまあいいじゃん。色々試してんだろ? でも、そのあとくっついてんのが、錯誤なんだぞ。成功してないんだぞ。試して間違うだけで四字が成立してるとか、やばいじゃん」
彼の言う『やばい』の意味は全く分からなかったけど、並んだ四字が不穏であることには、少しだけ同意できた。
よく考えれば、トライアンドエラーも、エラーしてるだけで終わっている。
僕らはズタボロになる運命のホイールのなかで、せっせと走って生きているのかもしれない。
(了)

5/8
僕は3日ほど寝込んでいた。
『高等遊民に、俺はなる!!』
というフレーズが突然頭に浮かんで以降、離れなくなったのだ。
大して面白くもないし、自分で自分の恥の上塗りを続ける永久機関のようになっている。
滑りたくないという願いとはうらはらに、スキーウェア姿のイケメンたちがつるつると雪山を滑っていく。
――僕はいつから、こんな品の無い・ギャグにもならない寒いフレーズを生み出す悲しきモンスターになってしまったんだ!
そこで目が覚めた。3分も経っていなかった。全くもって、初夏だった。
(了)

5/13
「おい、大変だ! 世界からヤクルトが消えてるぞ!」
同居人に叩き起こされて、僕はベッドから転げ落ちた。
「……? ヤクルト?」
「ヤクルトで睡眠が改善したという話がSNSでバズって……」
なるほど、みんなが買いに走ったということか。
しかし、世界から消えたというのはいささか誇張が過ぎるのでは?
……という僕の心の声を悟ったのか、同居人はふるふると首を横に振った。
「ヤクルトが。世界中のヤクルトが、走って逃げたらしい」
「は!?」
「逃げたヤクルトが一斉に地下にもぐったせいで海面が上がって、まもなく日本が沈没する」
「そんなバカな!」
「バカなことが起きてるんだよ。ほら、逃げるぞ」
どこへ。疫病のせいで気軽に国外へ行くこともできないし、どうせみんな同じことを考えて、いまごろ空港には人が殺到してる。
僕が諦めモードで布団に潜り直すと、同居人は僕の体をバンバンと叩きながら言った。

(ごめん、3ツイートでたたみきれなかった)

6/1
(ファミレスでMacBookの上にスティックシュガーをぶちまけた話から)

迷探偵「こぼしたスティックシュガーが少し溶けている。ということは、犯人は鉄板系メニュー――つまりステーキかハンバーグを食べていた可能性が高い」
容疑者「MacBook横に置いてステーキ食う猛者はなかなかいないんじゃないでしょうか」
迷探偵「犯人はスプーンで鉄板の向こうのカップに砂糖を……」

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