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日本のフィジカルスタンダードを変える -いわきFCストレングストレーニング見学-

はじめに


見学に参加したスポーツ医学塾生

 2024年7/27〜8/3に福島県で行われた サッカーインターハイ決勝トーナメントにスポーツ医学塾は救護スタッフとしてメディカルサポートをさせていただきました。その期間中、「せっかく福島にいるんだから順天堂大学の先生方も多く関わるいわきFCのトレーニングを生で見てみたい!!」という本塾塾生からの要望が挙がりました。そこで、スポーツ医学塾の塾長かつ、いわきFCチームドクターの齋田良知先生と、いわきFCメディカルオフィサーの井澤秀典先生、フィジオセラピストの岩楯大輝様をはじめとするいわきFC関係者の方々のご協力によってストレングストレーニングを見学する機会を設けてくださいました。改めて、貴重な機会をいただいたことに感謝申し上げます。そして、本記事は残念ながらその場に居合わせることができなかった塾生をはじめとする学生向けに、私たちの体験をシェアすることを目的に執筆させていただいております。


サッカー界にフィジカル革命を起こすいわきFC


 いわきFCは「日本のフィジカルスタンダードを変える」というコンセプトのもと、「90分間止まらない・倒れない」「魂の息吹くフットボール」といったクラブが目指すプレーモデルを通して成長してきた。いわきFCの大倉智代表取締役はインタビューで、「クラブのコンセプトを決めた創設当時、今の日本サッカー界の課題を棚卸していく中で、スポーツ科学やデータ分析の発展につれて、選手の身体作りが進化しているフェーズだった。そういう流れがある以上、これからサッカーも変わっていくのではないか?と予想できた。世界と日本サッカーの違いを洗い出したとき、シンプルにフィジカルが必要だという結論になり、身体作りに特化したことをやらないと世界に追いつけないのではないか?と考え、それが『日本のフィジカルスタンダードを変える』という発想の原点にあった。」と答えている。

そしてこのコンセプトであるフィジカルを強化するために、いわきFCがとりわけ重視しているのが「ストレングストレーニング」と呼ばれる筋機能全般のトレーニングである。選手がそれぞれハードなフィジカルトレーニングを重ねるうえでは、身体のリカバリーも自ずと重要になる。トレーニング・栄養・休養のバランスを重視し、栄養講習会による自己管理能力の向上や年4回の血液検査によって個々に必要な栄養を可視化している。

これらの施策により、シーズン終盤でも走行距離が落ちず、スプリント回数が多い試合が増えたりとパフォーマンスの向上につながっている。こうした「フィジカル革命」を起こす為の取り組みが、クラブ創設から7年でJリーグに参入・J3リーグで圧倒的な強さを発揮し1年でJ2に昇格といった成績や、外部からの高い評価に繋がっていると考えられる。

実施していたトレーニング


 見学した日のトレーニングはアジリティトレーニングを含めつつ重量を扱っており、筋力と体幹の両方の強化を目的とするような構成であった。トレーニング前にはボールやチューブを使用して全身をストレッチするようなメニューを行い、その後加重トレーニングへと移行、加重トレーニング後にはドローイン、ドラゴンフライ、バイシクルクランチといった補強を行なっていた。以下は特に印象に残っているトレーニングを紹介していく。

ファンクショナルトレーニング


手で水平方向にケーブルを引っ張りながら、足を前後に入れ替えるような動作のメニュー。複数の関節を素早く動かすことで、筋力の強化はもちろんプレー時に求められる俊敏性や安定性にも有効なものだと考えられる。

Outputを用いたベンチプレス

トレーニング見学の際は使用していなかったが、齋田先生にこんな器具を使用するときもあると、Outputという器具をご紹介いただいた。

Output とは?
実施しているトレーニングを可視化する器具。わずか21gのセンサー1台でVBT、ジャンプ、バランス、可動域など180種目のデータを取得できる。

http://sandcplanning.com/solution/category/detail/?cd=104

今回は体験として、私たちもOutputを用いたベンチプレスを計測した。
プレスの平均速度を計測しながらトレーニングをしたことで、回数をこなすだけではなく、1回1回の挙上速度など普段とは別視点の気づきを得ることができた。

ストレングストレーニングは場所が限られる関係で選手のレベル別に2チームに分けて実施していた。トレーニング内容は変わらず、選手1人1人がトレーニングに集中できる環境がある。1RMなどトレーニングの結果をファイルに記録し、日々のトレーニングや成果を視覚化。置いている用具は必要最低限のものしかなく、無駄のない施設という印象を受けた。1RMのクリーンの練習の際には選手スタッフ共に声を掛け合いながら、楽しそうに練習している姿も印象に残った。

岩楯トレーナーへ質問

 トレーニング見学して気になった疑問点を見学終了後、岩楯フィジオセラピストに質問させていただきました。

Q1.ストレングストレーニングはどのような意図で実施していますか?

A. ストレングストレーニングは週2回やることが多いですが、それぞれ目的が違います。今日(見学日)はオフ明けのストレングスだったので、重量を重めに設定し高重量を扱うような構成に、反対に金曜日など週末の試合に近い際のストレングストレーニングでは筋肉に刺激を入れることを目的として挙上速度のようなスピードを意識させるトレーニングメニューになることが多いです。

Q2.本日はトレーニングを前半・後半の2組に分けていましたが、その分け方について詳しく教えてください。

A. トレーニングルームのスペース上、チーム全員で一斉に行うことは難しいので、現在は扱える重量で組み分けをしています。最近合流した選手はストレングストレーニングに慣れていない人も多いので、結果として重量で組み分けをすることで、選手のレベルに合わせた指導ができるようになっています。以前は選手の遺伝子タイプで組み分けをしていたこともあります。

Q3. 秋本スプリントコーチはチームでどのような役割が与えられているのでしょうか?

A. まず、大きな役割として選手が速く・長く・怪我をしないように走れるようにするということがあります。そのために必要なことが全部役割なのかもしれません。スプリントトレーニングに限らず、ストレングストレーニングの際にも、選手がより良い走りをするためにフォームなどご指導いただいています。

さいごに


 お忙しい中にも関わらずご対応いただきました、いわきFC様に改めて感謝申し上げます。参加した塾生は通常では考えられないような体験をさせていただき今後のモチベーションにも繋がったとの声が挙がっております。今回経験したことを自分たちの中に留めるだけでなく、このような形で皆様にもシェアさせていただくことで、皆様にとってもより良い学びになることを心より願っております。

参考資料


文責
順天堂大学 スポーツ健康科学部
石井太晴(4年)
飯山晃多(4年)
魚谷晃希(3年)
永澤弥子(3年)
長澤琉雅(3年)
根本結名(2年)
藤井晴貴(1年)



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