第2回スポーツ医学塾
はじめに
2021年6月5日に第2回スポーツ医学塾が開催されました。
講義の前半戦は、現在国士舘大学アスレティックトレーナーとしてご活動されている、牟田口宙義先生による『足関節捻挫の初期応』
後半戦は順天堂大学医学部附属順天堂医院 循環器内科の福島理文先生による『頭部外傷の初期対応と搬送法』の2部構成で行われました。
前半戦『足関節捻挫の初期対応』
牟田口先生のご講義では、基礎である足関節の解剖から、捻挫した直後の初期対応や評価方法についてお話をしていただきました!
まずは『PRICE』から
Protect(保護)
Rest(安静)
Ice(冷却)
Compression(圧迫)
Elevation(挙上)
初期対応の最も大事なところですね!
次に足関節の捻挫について、軽度のものから重症度の高いものまで、どうやって捻挫が起こるのか?症状にはどんなものがあるのか?について動画で解説をしていただきました!
そして、それを踏まえて足関節の解剖学の詳細、捻挫の初期対応をする際のチェックポイントや気を付ける事などについて教えていただきました!
講義の後半は実技に移り、まずは基本的な巻き方を牟田口先生に実演していただきました!さらに、現場でのテーピングは基本的な巻き方だけでは通用しない!という事で選手の症状に合わせた巻き方についてもいくつか実演して頂きました!
前半戦では第一線でご活躍されているトレーナーの方の技術を見させていただいたり、現場のリアルな話を聞かせていただきました♪
後半戦『頭部外傷の初期対応と搬送法』
福島先生の講義では、頭部外傷として脳震盪を中心にしたご講義をしていただきました!
医療に携わる皆さん、スポーツの現場だけでなく日常生活でも自分の目の前で誰かが急に倒れたり、頭を打ってしまった時、冷静に適切な行動を取ることができますか?
脳震盪の症状とは?経過はどう見るのか!?
なぜ脳震盪の管理が大事なのか!?
競技中に選手が怪我をした時はどうすればいいのか!?
講義の最初は脳震盪についての症状だけでなく、急性硬膜下血腫のような合併症や数日から数週間、何年にも渡って続く後遺症とその対応などについて教えていただきました!
さらに、Jリーグでの評価指針やスキャット5などの最新の評価ツールの紹介を交えて、それぞれ注意することやチェックポイントについてお話をしていただきました!
次に、頭を打った直後の選手の症状、メディカルスタッフが選手に対して実際に行った対応など、過去に起こった事例を動画を見ながら解説していただきました!
講義の後半は、実際に選手が怪我をした瞬間のシュミレーションをスポーツ医学塾の先生方に実演していただき、そこから倒れた選手をバックボードに乗せ、運搬していくまでの流れを福島先生に解説を入れていただきながら行っていきました!
後半戦では、適切な対応が求められるとてもデリケートな内容でした!
脳震盪の対応について、その道のスペシャリストから直接学ぶことができるのは、スポーツ医学塾ならではなのではないでしょうか?!
参加した学生の感想
選手にとってベストな治療を提供する
保健医療学部3年
水野宥伽 さん
三谷祐理子 さん
今回は実際の現場でトレーナーとして活躍している牟田口先生に足関節の応急処置・テーピングの講義をしていただきました。
私達はオンラインではなく、オンサイトで講義のお手伝いをさせていただく機会をいただき、テーピングの一つ一つの動作の丁寧さかつスピード感などを感じることが出来ました。
スポーツ現場では治療だけでなく、治療に加えてプレーに影響が出ないようにテーピングの素材や巻く回数を柔軟に使い分けていて、選手にとってベストな治療を提供する方法を学ぶことができました。
今回学んだことを実際に自分たちが現場に出た時に活かしていけるよう、今後も積極的に学習に取り組んでいきたいと思います。
実際に現場に出ている方の講義を受けることができ、大変貴重な機会をいただけたと感謝しています。
ありがとうございました。
適切な対応が求められる
スポーツ健康科学部 3年 矢島颯太 さん
牟田口先生から足関節捻挫のPRICE処置と足関節のテーピング処置について学びました。
PRICE処置に関しては、20分以上継続して冷却してしまうと凍傷のリスクを高めてしまうので時間管理が重要でことを学びました。また市販の氷と家で作る氷は温度が違うため、冷却時間を変えたり、患部と氷の間にタオルを入れたりして調節することが必要であると思いました。
私自身、過去に何度か足関節内反捻挫をした経験があります。当時、私は非常に頭が悪かったため、ただ冷やせば治る!と思っていました。そして数時間継続して冷やしたところ、見事凍傷を引き起こしました。次回の捻挫や選手の対応した時はこの講義で学んだことを生かしていきたいです。また、初期対応は選手の予後にも影響してくるので限られた時間でより適切な対応をすることが求められると感じました。
今回は足関節内反捻挫を想定したテーピング処置でした。実際に巻いていただいて感じたことは、スターアップ時に内反を制限するために外反方向に巻く力を強めていたことです。足関節を内反方向に動かそうとしてもほとんど動きませんでした。ただ巻けばいいというものではなく力加減が非常に重要なことを学ぶことができました。また、選手によってテーピングの好みや巻き方が異なるので、それぞれの選手に合わせ対応することが求められてくると感じました。
非常に分かりやすい講義ありがとうございました!
迅速な判断
医学部 1年 廣瀬凜 さん
循環器内科の福島理文先生より、頭頸部外傷の初期対応と搬送法について講義いただきました。ご自身のサッカーの帯同ドクターやチームドクターとしての経験を交えながら解説してくださいました。その中でも特に脳震盪について、学んだことを記しますので、ぜひ参考にしていただければと思います。
まず、脳震盪とは、簡単に言えば脳のケガであり、頭部や顔面、頸部への直接的な衝撃のみならず、体の他の部分への間接的な衝撃によっても起こり得ます。つまり、頭が揺さぶられるような衝撃が体に加わった場合も生じる可能性があります。症状としては、意識消失、記憶障害、平衡感覚障害、頭痛、吐き気、情緒不安定などが挙げられます。
スポーツ現場において、脳震盪は少なくありません。通常は短期間で回復しますが、時間をかけて症状が進行するケースや、回復に時間がかかるケースもあります。はじめは頭を打っただけだと思われていたものが、気付いた時には危険な状態に陥っていることもあるようです。
脳震盪は上記のようにさまざまな症状を示すため、外見ですぐに判断することは難しいかもしれません。しかし、選手の様子が普段と違うと感じたら、周囲が脳震盪を疑うこと、プレーを中断させることが大切だと分かりました。脳震盪を疑い、迅速な判断をすることがプレーヤーの健康的な生活を長期的に守ることに繋がります。
最後に脳震盪として即座にプレーを中止すべき症候を列記します。(福島先生作成のスライドより)
1. 意識消失、もしくは疑い
2. 痙攣、強直姿勢
3. 意識の変容(ぼーっとする、混乱している、易怒性、いつもと行動が変化している)
4. 見当識障害(時、人、場所を特定できない)
5. ふらつき、バランス障害、失調
6. 嘔吐
覚え方:い、け、い、け、ふらついて、吐いた
最後になりましたが、ご講義くださいました福島先生、このような学びの場を準備してくださいました齋田先生、事務局の皆さまに感謝申し上げます。今後も順天堂大学スポーツ医学塾で学びを深めてまいりたいです。
最悪の場合命を落とす
医学部 5年 新原美樹 さん
福島先生の講義をきいて
5年生は現在臨床実習で福島先生に循環器の疾患についてご指導いただいております。今回はその福島先生がスポーツドクターとしてご活躍されているお話を伺うことができ、実際の現場で特に迅速な判断が必要とされる脳振盪についてのご講義をしていただきました。
(脳振盪は、私たちが小学生の頃から運動をしていて友達同士でぶつかったりボールが当たったりと比較的身近であったと思います。スポーツをしていたらいつ生じるかわからない、そんな怪我でありながらみなさんは脳振盪の正しい処置を知っているでしょうか?)
先生は、脳振盪を起こした選手の実際の映像をいくつか見せてくださりました。体を鍛え上げた一流のアスリートがふらふらと歩いていたり感情的になったり、自分がどこにいるか分からなくなってしまったりします。このような時に意識を覚まさせようと体を揺さぶって起こそうとしては絶対にいけません。周りが冷静な判断を行い正しい処置を知っていなければ、最悪の場合命を落としてしまう可能性もあるのです。
スポーツにはさまざまな怪我がつきものです。今回は脳の怪我である脳振盪についてたくさんの知識を得ることができました。怪我に正しく対処する、怪我を予防する、そしてドクターだけでなくスポーツに関わるスタッフとその知識を共有するということがスポーツドクターの重大な使命であることを学びました。福島先生、ありがとうございました。
次回の講義は『夢先生レクチャー』です。
非常に楽しみです!!
最後に
第2回スポーツ医学塾では、テーピングという比較的身近なものから、最悪の場合命に関わる脳震盪までとても大事なお話を、お2人の講師の先生にしていただきました!
こうした現場でご活躍されている先生方から直接教えていただけるのはスポーツ医学塾だからこそですね♪
さて、7月6日(火)に行われる第3回スポーツ医学塾では、サッカー日本代表のチームドクターとしてご活躍されている池田浩先生による『夢先生レクチャー』です!
お楽しみに♪