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「家族シアター / 辻村深月」

以前から辻村深月さんの小説がお気に入りでよく読んでいます。

ヒヤリとする、思春期独特の尖った心理描写が得意な辻村深月さんですが、「家族シアター」なんてタイトルを見ただけで即買いだと分かりますね笑


「家族シアター」は様々な家族の、7つのストーリーを収めた短編集です。
日常で起こったある出来事を発端に、家族へ普段は言えない本音や不平・不満、そして愛情が満ち溢れてくる・・。


「家族」という無条件に、近い距離感で同じ時間を共有する集合体。

しかしどこまでいってもあなたと私は「他者」です。
血を分け肉を分け、手をかけ目をかけたとしても、あなたと私は「他者」なのです。


決定的な価値観の違いがあり、些細なことで大きなすれ違いが生まれる。
誰かを想って口にしたことが、違う誰かをひどく傷つける。

そんな憎らしく愛しい家族のために、私たちはときたま言いようがない衝動に突き動かされる。


辻村深月さんはすごく美しい曲線を描く小説家だと思っています。

ふとした日常のすれ違いを切り取り、大きく断絶していく様と、そこに残された微かな手がかりや違和感を辿る中で、やがて両者の距離が収束していく。

どの物語も予期せぬ美しい曲線を描いた先に、柔らかな交わりが生まれます。


きっと「そんなことあるある」と共感するエピソードもあれば、
「もしかして自分も傷つけていたのかも」と反省することも、
長年無自覚に抱えていたモヤモヤに救いがあるかもしれません。


辻村深月さんの作品の中でも、短編集ということもあり読みやすいはず ^ ^

家族・親戚と過ごす時間の長いお盆休みだからこそ、ゆっくり読み味わいたい作品です。

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