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概論特講: 顔

 人の顔が覚えられない。
 物心ついた時から今に至るまで、人の顔に対する認識の甘さを痛感するばかりである。一応生業は接客と分類される類のものであるはずなのだけど、結構、これがなんとかなる(なってないけど、顔以外のデータ的な要素による特定に助けられている)。なので純粋に人の顔を見てどうこう言うのが不得意であり、見てないというのか見たはずなのに認識していないと言うのか、とにかく意識が低い。それはこうして実在の役者をちまちま追っかけていくようになっても相変わらずであり、というか寧ろ痛感の度合いが強まるばかりである。そもそも綾野剛みたいな「好き」でしかない役者を認知するのに5年なり6年なりかかっている時点でいかに人の顔に対する反応力が低いか判ろうと言うものである。お恥ずかしながら。かといって美醜がわからんと言うわけでもなく、綾野さんは紛れもなく男前である。ありがとう世界。岐阜が生んだ至宝。

 ということで今日は、推し様こと綾野剛氏の「顔」に着目して色々書こうと思う。
 普通は絵だろって思った皆様、正解でございます。その通りです。ただ自分、文にかけてきた情熱と時間を10とすると絵にかけてきたそれは5万分の1くらいのものでしかないため、背伸びせず今回も暑苦しい文章で書こうと思います。傍にお気に入りの綾野さんのお写真でも並べてご覧ください。

 さてまずは綾野さんの顔なんですけども、全体的な印象としてまずはご本人が言うところの「個性派」という括りを掘り下げていくと、確かにただ一言で美形と分類するのがもったいない奥深さがあるんですよね。
 綾野さんの魅力の一つに「演じる=生きる人間 によって顔つきが全然違う」と言うのがあるんですが、「イケメン」から「モブ」、「おじさん」「お兄さん」「彼氏」「触ったらあかん不良」「ヤクザ」「警察」「持病があるマイノリティ男性」あたりまで、気持ちで乗り切っちゃってそれ以外に選択肢を考えさせないくらい気持ちで作り込むから、人に与える印象が全然違ってて結果全く違う顔に見えるっていうのがあるんですよ。たとえば「そこのみにて光輝く」の佐藤と「ピースオブケイク」の店長は同じ黒髪ボサボサ髭というパーツを携えてはいるものの、入れ替えたら成立しなくなるんじゃないでしょうか。見せる表情が違う。口角の上げ方、眉の寄せ方、視線の落とし方。肌のたるみや声音以外の見せ方からして全く異なる。なのでおそらく、綾野剛という役者の実態を掴むのに、一つの写真を見ていても仕方ない。常に何かと何かを比較して、変化や差異から絞り込んでいくしかないのではないかと思うわけです。
 今私の手元には2020年から21年ほどの写真が並んでいますが、伊吹藍と犬養隼人と山本賢治と名越進と蓮田倫太郎、各種CMと共通するハード的な顔はもちろん(同じ人間なので)大差ないはずなのに、ソフト面での表情差があまりに顕著でびびります。顔は筋肉なので、力を入れる場所や均衡、多少の肉のつき方の違いなどで全く雰囲気が変わるなと痛感させられる次第。個人的にはGQの写真、宣材にも使われてる一枚の伶俐な眼差しが最高に格好良くて何時間でも眺めていられますが、これと倫太郎の顔を見比べてみると「綾野剛」の凄さがとてもよくわかる気がします。
 まず、2枚とも口元を引き結んで少し斜めの角度からカメラを見た一枚なのですが、GQの方は目元のミステリアスさが際立てられていて、おそらくそれは目元の色素のせいかなと思います。キュッと切れ上がった目尻の涼やかな印象が目力の強さを鮮烈に印象づける。同時にどこか超然とした非現実的な雰囲気を漂わせていて、その目に見入ってしまう。宣材写真としてこの上なく良い写真だと思います。対する倫太郎の一枚は、宣材よりやや厳しい人間性を感じさせる険しい表情で、放映前にインスタに上げられたこの写真で倫太郎のキャラクターをミスリードされた人は多かったんじゃないかと。表情ひとつで随分違って見えます。役者の奥深さを象徴する2枚なのでは。

 綾野さんの顔立ちが好きか否かは好みなので人それぞれだと思いますが、好きな人にはそういうわけでめっちゃハマる顔立ちなのではないかと思います(自分含む)。目の印象が強いけど、一個一個のパーツが強いわけではなくて、柔和にも粗暴にも触れるニュートラルな調和。唇はやや厚くて、ここの印象が産婦人科医とシャブ中刑事を左右したのかと思うとワクワクします。涙袋と白眼の割合も伊吹と山本で少し違うような。目にどれくらい力が入るかなのかな。あっそういえば8話の澤部をタコ殴りにしていた伊吹はやや山本みがありました。眉間に力を入れるとキュッと絞られて凄みが増すみたいです。それから鼻の筋がシュッとしてて鋭利な印象を受けますね。鼻の形って大事だと思う。ここが綺麗な人は男前。
 あと私が特筆したいのは何より横顔なんですよ横顔。綾野剛の横顔美しすぎませんか? モバイルサイトのカレンダーがよく横顔を写してるんですがこれがべらぼうに美しい。鼻の筋と顎の造形がおおよそ考えうる理想の割合なんじゃないかと。横から見ると睫毛の存在感がいい感じにアクセントになっていて、奥二重とご本人が主張する(よくわかる)伏し目がちな目元の魅力がよくわかります。ツーっと女優さんの整った指先になぞってほしい、起伏。骨格的で、しかし同時に瑞々しくて(肌とかめっちゃ綺麗)、芸術的な美しさだと思う。なんか顔というより造形の話をしてしまいました。

 最後に綾野さんの中性について私見を語りたいので勝手に語ります。
 綾野さんって体格立派だし足長いし引き締まった筋肉質で男性的な色気をふんだんに秘めてると思うんですが、あれスッと引っ込められるんですよね不思議。小出しにすることもできるし、まったく引き算することもできる。どういう技術?
 男性的な魅力って「男性的な要素からこっちが勝手に感じ取る色気」と「男性的な要素を醸し出すことによって異性に訴えかける色気」と2つあると思うんですけど、たとえば影裏の今野さんとかクレオパトラの裕とか、後者を綺麗にオフってるのすごいなって思うんですよね。サクラ先生に至っては前者も後者も綺麗にオフして作品の主題に沿った形にノイズを無くしてるし、閉鎖病棟のチュウさんは前者の色気から性別のえぐみを抜いてるからこそゆきちゃんを前にしていやらしさがない。山本なんかは男の色気というより、「男くさい」。綾野さんのでてる作品で「このシーンにこの色気いらないじゃん。話の主題がブレるじゃん。暴力的じゃん」って思ったことないですね。ノイズになってない。必要なところに必要な色気がある感じ。その反面、日悪みたいにとことんな描写にも耐えうる深みもあって、新宿スワンの白鳥みたいに色気と違うスキルで女性の懐にスッと入る空気感も出してたり。
 顔の話ではないけど、顔が違って見えるのはこの「気持ち」の演技が徹底してるからだなと確信しています。その気持ちだったり声だったり行動だったりの違いで、私みたいな顔見分けるの苦手芸人に識別させてくれている気がします。識別させすぎて認知が遅れましたが。
 
 この記事を書くためにものすごーーーく写真を見ましたが的外れなこと言ってたらすみません。綾野さんが綺麗な骨格してるなってことしかわかりませんでした。格好いいっていうのは全く否定しません実際格好いいし。(信者並の感想)
 綾野さんの秘蔵映像画像が見られるのは綾野剛モバイルサイトだけっ。みんな加入してね。

 今回の記事の気持ち悪さは他の追随を許さないな。薄目で見てやってください。ごめんなさい。
 直近の話題ですが、倫太郎の表情コロコロ変わる感じ、ピュアな人格と根底の善性を感じ取れてとても好きです。あと山本の19→25→39の変遷、あれこそ魔法。あれこそ生きた姿。FAMILIAのMVが撮影時期空いてるって聞いてわかってはいたけどあまりの衝撃でぶっ倒れそうになった。好きだ。

 収拾つかねえので終わる! またよろしくどうぞ。では。

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