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「MIU404」のBlu-rayBOXを買った話①




野木亜紀子というひとを認知する前から野木亜紀子というひと(と作品)を愛してる。
野木さん、作品やってるときはバーってツイートしてくれるので、作品リアタイじゃない時はお静かですこし寂しい。なにかお作りになっておられるのでしょうか。どうかあったかくしてお身体を大事になさってください。お慕いしております。

どうも、綾野さんの新参オタクです。
新参オタクが生まれるまでの過程は以下に記載しています。
予想よりはるかに読まれていて、こんなんだったらもっと言葉遣いに気をつけるべきだったと反省しています。すみません。普段は綾野剛なんて偉そうな呼び方はしてません。綾野さんって呼んでます。綾野さん。いまいちイントネーションがわかってない。関西人はイントネーションによわい。

それはいいんです。
今回は前の記事でしゃべり足りないことがあったので、MIU404について書こうと思います。
ほんとは「アンナチュラル」から話したいんですが、「アンナチュラル」の話をする前に「シン・ゴジラ」の話をしたくなるのが目に見えてるので、とりあえず「シン・ウルトラマン」を見てから…ということでしばらく寝かせておくことにします。絶対美味しいご飯は最後に残しときたいスタンス。それはそれとして、大好きなものから最初に食べたいスタンス。今このスタンスの読み方に若干のリズムと所作を勝手に加えた人、そうあなたに向けてこの文章を書いています。

前の記事で2/1が休日出勤とかよくわかんないこと言ってたのでお察しかもしれないですが、弊社いわゆる平日9-18時の勤務体制ではなく、ゆえに金曜22時という時間のドラマを見る生活がどうしてもできませんでした。
サブスクに複数加入してるのもそのためで、TLが「リメンバーミー」で盛り上がってるときも、それこそ「シン・ゴジラ」の実況で激流に押し流されているときも、全てが終わって野村萬斎の名前がエンドロールに映るくらいにようやく帰宅するってなもんで、つまり「MIU404」に関してもリアルタイム視聴ができず、TLを追えず、以下略。という感じでした。
朝ダラダラできるのは良い仕事なんだけどな。おかげで「よ〜いドン」はリアタイできます。あと遅いのでオールナイトニッポンもリアタイできます。こういう長文書くのにたいへん助かっているので、菅田将暉と星野源にはお礼言いたい。生かされています、ありがとう。

1話おもしろ〜って思ってからの2話以降ぜんぜん見れてなくてごめん。
めちゃくちゃ見る気でいたのに。
ということで遅れること約半年、ようやくちゃんと視聴したのでした。
ちなみにHDの中に残ってたの数話しかなかったので、思い切ってParavi契約しました。

はーーーーん。
まあ結果は見ての通りです。
この企画を通したえらいひと、この番組に放映枠をくれたTBS、野木さん、塚原さん、新井さん、出演してくれた演者の皆さん、制作サイドの皆さん、全員に感謝。感謝しかねえ。圧倒的感謝。
よくこの時代に揃ってくれました。
これだけのものを世に出してくれてありがとう。
こんなに完成したものを座るだけ座って受け取ってええんか、もっと自分もなんかした方がいいんじゃないか。せめてお金払って良い? そう思わされるくらい充実した作品でした。
これ、ほんとこういう作品があるから、邦画ファンやめられないし、ドラマも見ちゃう。
実際生活には若干の支障が出ていますが、いいんです。でもそろそろ時期的に確定申告はしないとまずい。

とにかくMIUが面白いというポイントをいくつか挙げていきます。


①脚本の緩急がすごい
冒頭から野木さんに愛を告白していましたが、わたし本当に野木さんの散りばめる単語がめちゃくちゃ好きで、「空飛ぶ広報室」でバリバリバリ…と広報室メンバーがヘリコプターの音を模して一緒にはっちゃけるシーンとか、「平匡さんが可愛すぎる件についてええええ〜!」であったりとか、大人なんだけどかわいい、良い感じに抜いた雰囲気を言葉ひとつで表現するのがめっちゃうまい脚本つくるな〜と惹かれっぱなしです。かと思えば途上国の女子児童支援とか、外国人労働者問題とか、薬物と組織犯罪とかの社会派なネタもシームレスにぶっこんでくる。このバランス感と問題意識を同居させた描き方、「逃げ恥」でも遺憾なく発揮されてたけど「MIU404」「アンナチュラル」は所属組織とキャラクターの特性もあいまって、より容赦なく、より逃げ場のない書き込みが為されていてめちゃくちゃ良かったです。
アンナチュラル1話とかは今見ると鳥肌立つよね。2018年。でもよく考えたらアンナチュラルの世界とMIUの世界は繋がってるので、2018年にウイルスが流行った後、2020年にコロナが流行ってるとしたらトーキョーの医療体制がやや心配になりました。密! ディスタンス! 言うてるので少なくとも都知事は小池氏で間違いなさそうなのもちょっと笑いました。
単純に話が良いっていうのは大前提にして最も難しいことだと思うので、もうこの時点で優勝。
野木さんのライナーノーツがよかったので、話が好きな人はBlu-rayを買った方がドラマ全体の解像度上がります。あとシナリオブック。あとメモリアルブック。まだ在庫あってよかった〜。遅く入ったファンにも優しい。

②志摩一未がやばい
先述の通り綾野剛に狂った女ではあるんですが、MIUの推しを考えると志摩一未ですね……と鎮痛な面持ちで絞り出すしかない。


志摩一未やばない???
いや志摩一未はヤバいんですよまじで。
志摩一未。なんなのあの男。は?


たぶんMIU404好きな人たちの中には「志摩」「伊吹」「404のふたり」「九ちゃん!」「たいちょー」「ハムちゃん」「陣馬さん」「クズミ」「ナリくん」「REC」「いとまきまき」「マメジ」といろんな推しがいると思うんですけど、志摩一未は好きになったらあんま幸せになれね〜な〜と悟りながら好きになるしかない独特の引力があってまじめに怖いです。嫌だ。でも好き。

個人的な嗜好の話になるんですが、昔から「貴婦人に傅く騎士」の話が好きで、結ばれても結ばれなくてもいいんですけど、なんせ立場の差のある有能な男性が決して永遠に自分のものにはならない女性に跪き、内外から支えようと砕身する姿に莫大なモエを覚えます。古くはそれこそ円卓の騎士のランスロットとグィネヴィアに端を発する由緒正しき性癖だと思う。なので「昔好きだったけど今はあの人が困らないように助けたいと思う」とか言って「なんもねーーーよ」と返したりするあの態度、あれ、うん、私が死ぬのでやめてほしい。伊吹のハンドラーだけど自分自身も「犬」、犬であることになんなら誇りを持ってる、命を秤にかけても構わない(そんな簡単に死ぬか。助けに来んのがおせーよ)、でも死なせたくない。もう死なせない。忘れない。

やばいね。やばい。ありがとう。
志摩一未は沼。

星野源の笑顔が好きなんですが(なんかきゅって笑うし歯が出て眦が下がるでしょ星野さんの笑顔、パッと思い浮かばない人は今すぐググって「星野源 笑顔」とかで)、志摩一未のときはその笑い方をしないんですよね。四宮のときも平匡のときもおもエモンのときもやっててうおっかわいっ!!! と可愛いの最大瞬間風速を記録してたんですけど、志摩がその笑顔を見せるのはNG集でジュリにインタビューしてる場面のあそこだけ。あれちょっと心臓が痛かった。あっそうだったこの人星野源だったわ笑うとこうなるわ……心臓痛い……と苦しんでいました。
志摩一未が仕事をするとき、全然楽しそうには見えないけど、これ以外の生き方もこれっぽっちも考えてない、やめよっかなーとか口では言いながらいちばん自分がそれをできない(守りたいものを自分の手で捨てられない)ところが作中至る所で表現されていてよかったです。
1未満の一未。でも1にとても近い。2乗してもマイナスにしかならない、i(藍)よりは1に近い。でも1ではないからiを足す。その数が幾つになるかはわからない、志摩を表す数がいくつかによって、このバディの数値はどこまでも変動していく。限りなく1に近づける。
エモ。
刑事ドラマ鑑賞が趣味って中の人にバラされる志摩一未かわいい。
志摩一未は「ドッグス・オブ・ベルリン」とかをどう思うのかちょっと聞いてみたい。そして伊吹が相方でよかったって言ってほしい。比べる相手が悪すぎる笑


③ゆるすということについて
これもなんか「アンナチュラル」絡めた書き方になっちゃって「もう全人類アンナチュラルは履修してるでしょ」みたいな言い方になっちゃうのが乱暴で大変不本意なんですが、こんな自己満レビューを読んでる暇があったら「アンナチュラル」見てきてください。アマプラとParaviにあるので。

この意見は探すまでもなくめちゃくちゃ見たんだけど「成功した側がガマさんで、できなかった側が中堂系」というの、それはそうなんだけどミコトになれなかった伊吹のことを考えると私がしぬ(私かけらも関係ない)。
確かにそう。結果だけ見ると。でも過程と結果は不可分なので、過程あっての結果だし、結果から過程を見据えることになって初めてその結果の必然性が浮き彫りにもなる。ガマさんの置かれた立場(今はもう刑事ではない)と中堂先生の置かれた立場(今まさに解剖医である)の違いもさることながら、死に対置するちょっとした姿勢の違いも効果的に見えてくる。人の死から故人の状況を掘り下げる仕事と、罪を犯した人間に向き合う仕事と。置かれた立場によるほんの少しの差異が、同じ球体を転がした先の違いに現れる。そういう印象を受けたし、それを暗に説明するために3話でピタゴラ出したのかな、と思ったりする。
脚本の練られ方のうまさ。5話越しの伏線回収。そして久住には、その余地すら残さない容赦のなさ。
一生ついていく。フィクションとしての質が良すぎる。

あと、ゆるし、がキリスト教の概念とともに語られるのもよかった。亡くなった妻はお前をゆるすが、俺はゆるさない、と語るガマさん。聖母を飾るということは亡き妻がカトリックの信者であることを示唆しているし、死してなお祈られ清められた妻の魂は一点のしみもなく今は天国に在るのだろうが、ガマさんが「同じところに行けなくてごめん」と言うのは重かった。重かったし、ガマさんが「自分は信者じゃない」と言い切るのも意味があった。カトリックには煉獄という発想があって(サジェストが大変なことになっているのでググるときは「カトリック」とかつけると良い)、地獄にも天国にもいかなかった魂が現世の祈りによって清められ、天国に行く縁があるとされる。罪を清めればまた麗子さんに会えるかもしれない。でもガマさんはそれを望まない。原案では自決する設定だったというガマさん。さすがにそうなると伊吹が辛すぎるからと存命設定に変更されたらしいけど、収監されて刑期が確定して、いい教誨師と巡り合ってほしいな〜と願わずにいられなかった。
伊吹ならガマさんの死後も、ガマさんの魂が清められるように祈り続けるだろうし。たとえや細かい教義や祈りの所作を知らなくても、誰に言われるでもなく祈り続けると確信できる。
ガマさんが麗子さんと「同じところ」でまた会えたらいい。ゆるしの多義性を見たので、やはり「アンナチュラル」と「MIU404」は両方見た方が良い。それこそ解釈の解像度が上がる。この「ゆるし」は、社会を反映している。私はそう思うし、地上波のドラマで広く見られる意味があると思う。


2期をものすごくやってほしいんだけど、1期でこれほど練り上げてしまって2期がやれるのかなあ、と若干の危惧があるのは否めません。完成度の高い作品ほど続きが蛇足になってしまうから、実は終わりなんてなくて、語り残したことがあって、反省点もたくさんあったほうが存続のためには良いんだろうなって。最初から未完成を狙ってつくる作品なんてどこにもないんだろうけど。


タイトルに①としてたのでお気づきだと思いますが、この記事には②もあります。私はまだまだ語り残したことがあるので、記事を分割する模様です。未完成の歴史!
昨日さっそく投稿した記事に書きそびれたことがあって迂闊すぎやしないか??? と我ながらドン引きしたので、語り残すくらいなら時間をかけて書きたい。あと長い。長いよ。感想文で毎日何千字も書いてるんじゃないよ。読む方も大変。
読んでくれてる方、もしいらっしゃるなら、暇つぶしに使ってやってください。真面目に全部追っかけようとしちゃダメだよ。つかれるからね。

次回の記事では伊吹藍としての綾野剛、桔梗隊長とハムちゃん、外国人労働者の話について書こうと思います。
またよろしくどうぞ。では。

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