旅立ちの春

人生が巻き戻せず、いつ終わるかも分からないのなら、今日だけを生きる気で生きる、という生き方しかないだろう。
このチケットは1日券かもしれない。1日券ですらないかもしれない。
それならば、できるだけたくさんの駅で降りて、たくさんの場所を見てみたいと思うだろう。
見飽きた場所を出てみたいと思うだろう。
結局、自分の意志で降りなかったとしても、終着駅は皆おなじだ。
留まっているからこそ見える景色もあるかもしれない。
でも、降りたいなと思うなら降りるべきだ。
この列車は死に向かっている。
ただ座っているだけでも、生活という景色は刻々と変わる。
確かなことは、降りることもそこに座り続けることも、自分で決めているということ。
全く自由な選択肢を見ないようにして、安全に座り続けているつもりでも、未来は完全に予測など出来ない。
そして、突如として終る。
今を自分が納得して生きる以外の正解などない。
自分さえ納得しているなら、それが今選び得る最も真っ当な生き方だ。
私は真っ当な生き方をしたい。
それが何度も駅を降りることになったとしても、その新しい空気を吸って、たちまち私はそれまでの自分を忘れるだろう。
旅立ちの春だ。

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